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急増する「投資マルチ」の実態とは? 被害に遭わないためにできること

SNSから広がるマルチ商法

「投資マルチ」は、最近SNSを介して若者の間で広がっているマルチ商法のことです。昨年8月には、大阪府に住む22歳の女性が「投資マルチ」の被害にあって、そこから悩んでうつ病になって自ら命を絶ってしまったという悲しいできごとがありました。

若者の命まで奪う投資マルチとは、一体どんなものなのでしょうか。詳しいことを詐欺・悪質商法ジャーナリストの多田文明さんに、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※11月24日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。
投資マルチ牧野:多田さんは、詐欺・悪質商法に精通し、その知識を基にした執筆活動やテレビ・ラジオ出演、新聞や雑誌の連載、講演会など幅広く活動されています。「キャッチセールスに本当についていったら、どうなるのか?」という疑問に、実際について行ってその手口を暴露した著書『ついていったら、こうなった』がベストセラーになっています。投資マルチの仕組みから教えてください。

多田:まず誘われ方として多いのが、友人・知人の紹介やSNS上で知り合った人から、「投資の儲け話がある」と声をかけられ、そのあと「個別で話したい」誘われます。対面で話す場には、いわゆるマルチ商法にありがちな説明役とブリッジという勧誘役の二者がいて、契約を迫られるというもの。

牧野:2対1で人数的にも不利になって、押し切られちゃったりするのでしょうか?

多田:そうですね、説明役はスペシャリストですし、ブリッジは「とにかくいいんだよ」と横からアピールして勧誘してきます。話の内容もFXとかバイナリーオプション、暗号資産など専門的なものなので、金融知識がない人だと、聞くしかないような状況になってしまい、最終的にお金を出させられるようなケースがあります。

牧野:専門用語ばかりだと、脳も思考停止状態になりやすいですよね。

多田:そのあたりに詳しくないということが、すでに勧誘役を通じて伝わっているので、説明役が一方的に話を進めてしまいます。マルチ商法では紹介者にキックバックが入るので、がんばってしまうこともあると思います。

知らないうちに情報を拡散してる!?

牧野:これが今、SNSを介して広がっているんですか?

多田:はい、ネット上には儲け話がたくさんあります。ついアクセスしてしまい、繋がった人から誘われることもあります。SNSやネット上での拡散というのがいちばん怖いんです。ほぼ嘘の儲け話もたくさんあるのに、それを信じて次の人に伝えてしまう……。これは投資マルチにも多いです。

牧野:悪意はないけれど、知らないうちに投資マルチを広げてしまっている可能性もあるわけですね。

多田:SNSで広がって、誘われて、確信犯的にやっている人たちにお金を出してしまいます。

牧野:どのようなSNSが、どんな形で利用されているのでしょうか。

多田:知人の紹介以外では、特にインスタグラムやTwitterの情報を見て繋がってしまい、そのあとLINEなどメッセージアプリでやりとりして、騙されていくパターンが多いように思います。

牧野:実は最近、きれいなお姉さんがインスタグラムやTwitterをやたらとフォローしてくるんです。あえて、ひっかかってみようとやりとりしてみたら、「LINEを教えて」ときて。なるほど、このパターンは詐欺の手口だと思いました。やりとりの途中で「LINEを教えて」というパターンは、ほぼサギじゃないですか?

多田:100%とは言い切れませんが、詐欺の被害にあう可能性は限りなく高いと思ったほうがいいですね。

投資マルチが増えている理由

牧野:投資マルチの被害が増えているそうですが、どんな理由があるのでしょうか?

多田:コロナ禍でお金に困っている人たちが多くなり、ネット上で何か簡単に稼げる方法がないかと探しているところに、悪質な投資マルチや騙す人たちが次々とやってくる。誘われても、何かおかしいと断ろうとする人もいるんです。ただ、断り方を全部見抜かれていますから、切り返されてしまいます。

例えば投資マルチでは30万~50万円くらいを事前に支払ってから、儲けのシステムに入るといわれるんです。そうすると、みなさん「お金がないから」と断ります。でも勧誘役が「自分も借金してから、大きく儲けた」「お金がないからこそやるんだよ!」と言ってきて、借金させられてスタートするケースが非常に多いです。

投資マルチに引っかからないためには

牧野:投資マルチに引っかからないようにするには、どうしたらいいですか?

多田:まず、知人の紹介であっても、その人が嘘を信じ込んでいることもあるので話を鵜呑みにしないこと。セミナーや個別の勧誘に連れていかれても、その場では契約しないこと。契約するときは必ず契約書面と、相手の住所、電話番号などを確認すること。不安になった時には「188」(消費者ホットライン)に電話することも大切です。

牧野:「188」(消費者ホットライン)というのがあるのですね。

多田:相談員が相談に乗ってくれます。第三者の話を聞くことが大切です。

牧野:大体そういうセミナーでは「この場で契約したら、ものすごくお得」と言ってきますよね。

多田:考える隙を与えないで契約させてしまおうという魂胆ですね。こうしたマルチ商法の場合は、クーリングオフの期間が20日間あります。もし契約してしまっても解約できますので、悩んだらすぐに消費者ホットラインに相談してください。

牧野:軽いやりとりから沼にハマっていってしまうこともあるので、SNSで知らない人とつながるのは、まず疑ってかかることも必要なのかもしれません。
 
今回お話をうかがったのは……多田文明さん
悪質業者などへの潜入数は100ヶ所以上に及ぶ。数々の現場経験と被害者への聞き取り取材から、詐欺・悪質商法に詳しいジャーナリストとして一線で活動している。2017年には消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員も務めた。近著「サギ師が使う交渉に絶対負けない悪魔のロジック術(イースト・プレス)」

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