
静岡県磐田市を流れる敷地川では、2022年と2023年の2年間で、台風の影響により堤防が2度にわたって決壊し、流域は深刻な浸水被害を受けました。決壊箇所の護岸工事はこれまでに完了しましたが、住民は大雨への警戒を怠っていません。
2023年6月2日、県内を襲った台風2号は、長時間にわたって大雨をもたらしました。磐田市内では、31棟が浸水。川に流された高齢男性1人が死亡しました。豊岡地区を流れる敷地川では、2022年9月の台風15号に続いて2年連続で堤防が決壊し、流域は大規模な被害を受けました。
<県袋井土木事務所 山崎優企画検査課長>
「(2022年の1回目の決壊では)当時毎秒260トンの水が流れました。もともとこの河川は、毎秒100トンちょっとしか流せなかったのでその倍以上の水が流れた。下流から河川整備を(2001年から)進めていまして、それまで時間も予算もかかる中でまだ改修が進んでいなかった」
決壊の原因は、河川の設計を大幅に上回る水が押し寄せたことです。県が整備を進める中、未改修の区間が弱点となりました。
2度目の決壊から2年。川は大きく変わりました。河川を管理する県は、決壊した堤防周辺の約400メートルについて護岸工事を5月末までに完了しました。2022年の台風15号クラスにも耐えられる毎秒260トンの水を流せるようになりました。
<山崎企画検査課長>
「昔と比較すれば、川幅的にも約2m広がってます。堤防の高さも。安心できるのかという風に思っております」
一方、周辺住民の防災意識は堤防決壊を受け大きく変わりました。
<柳沢重博さん>
「(1回目の決壊から)あれから約3年経ちますけど、雨の警報が出ると敏感になっている」
2度にわたり浸水を経験し、住宅の倉庫や農機具に大きな被害が出た農家の柳沢重博さんです。柳沢さんは、雨雲レーダーや河川カメラの情報を頻繁に確認し警戒を強化しています。護岸工事が進んでからも強い雨が予想される日には、農機具や備蓄品などをすぐに高台に避難させることができるよう備えを継続しています。
<柳沢さん>
「この時代、いつ来てもどこに何が起きても不思議じゃないものですから、常に意識して動いています」
県は敷地川と同様に県内の15流域21地区で水災害対策プランを策定し、堤防の整備や、ハザードマップの見直しなど、被害を減らす取り組みを進めています。しかし、いずれも完了までには約10年かかる見込みで、一人一人の意識が大切になると担当者は話します。
<山崎企画検査課長>
「もうハード対策だけでは、対応しきれないという状況であります。また最悪の事態を想定してもらうなかでですね、日々の生活の中でこの災害に備えて、あるいは対策をしていただきたいなという風に思っております。」
近年、増加傾向にある豪雨に対応するためには、普段から備え続けることが大切です。