
静岡県沼津市の沿岸部にある水族館では、地震の発生に備え、日頃から避難訓練を重ねています。訪れた人だけでなく、多くの生き物の命を守るため、職員はさまざまな準備をしています。
沼津市の「伊豆・三津シーパラダイス」は駿河湾に面した人気の水族館で、約300種類の生き物が暮らしています。海に近い立地は、自然の恵みを生かした展示や景色のよさなど、水族館にとって多くのメリットがある一方、向き合わなければならない課題があります。
<伊豆・三津シーパラダイス春日保さん>
「震度7の地震発生で10分ほどで、8メートル級の津波が来ると想定されている」
巨大地震により、津波の被害が想定される沿岸部。伊豆・三津シーパラダイスでは、年に2回、営業中に地震が起きた想定で避難誘導訓練を行っています。
<社会部 荻野旦記者>
「どうやって来園者は避難を?」
<春日さん>
「正面入り口から階段に向かっていきます」
歩道橋を渡り、駐車場を通り抜け、来館者を高台に誘導します。
<荻野記者>
「見るだけで急な坂ですね」
<春日さん>
「ただ、有事の際にはそんなことも言っていられないと思うので、どんどん駆け上がっていただく」
正面玄関を出て4分ほどで、海抜20メートルの地点まで来ることができました。
<荻野記者>
「(立体駐車場の)屋上よりも高いですね」
<春日さん>
「伊豆・三津シーパラダイス全体を見渡せるくらいの高さになる。こういったルートで避難経路があることを見ていただければ、安心感につながるかなと」
2025年1月に起きた能登半島地震。被災した石川県の「のとじま水族館」では、水の循環装置やボイラーが損傷するなどして、約4000匹の生き物が死にました。
多くの命を預かる水族館では、災害から生き物を守る取り組みも重要な使命です。
<春日さん>
「こちらが自家発電機です。停電が発生した際、自動的にこちらの発電機に切り替わりまして、緊急事態をしのげるように設置している」
生き物の命を守るため、発災直後の電力確保が重要です。伊豆・三津シーパラダイスでは、水槽の水にくみ上げた海水を使っています。
海水をろ過し、80トン以上を貯水できるタンクから水槽に供給していますが、電力が途切れると、海水をくみ上げることができなくなります。
そこで、停電時は約5時間持続可能な燃料式の自家発電機に切り替え、水槽に水を供給します。5時間経過した後の燃料の確保が課題ですが、燃料さえあれば、水槽の水を供給し続けることができるということです。
<春日さん>
「時間が経つにつれ水槽の海水は水質も悪化するので(各水槽に)振り分けて、いろいろな生き物が少しでも生きられるよう努めている」
生き物の食事にも備えがあります。
<春日さん>
「隣の漁協から仕入れているが、週に2回計画的に仕入れをして、使用量と供給量のバランスを見ながら、災害時に対応できるようにしている」
館内の餌の倉庫が被災した場合に備え、近くの漁協にストックを置いてもらい、緊急時に確保できる体制を整えています。
<春日さん>
「お客さま、人命が最優先にはなるが、その次には大切な生き物たちの命を少しでも助けられるように考えていきたい」
生き物の生態を知り、命の大切さを学ぶ水族館。災害から人を、そして生き物を守るため、職員は意識を高くして備え続けています。