「いざという時にお客様の命を守れるかどうか」南海トラフ地震臨時情報から1年 内閣府が新ガイドライン公表 イベント開催などの判断ゆだねられた自治体・観光地の管理者からは不安の声も=静岡

2024年8月に「南海トラフ地震臨時情報」が初めて発表されてから2025年8月8日で1年となります。臨時情報の存在が広く知られるようになった一方で、海水浴場やイベント、鉄道会社の対応が分かれるなど当時は混乱も見られました。

2024年8月8日、宮崎県沖の日向灘でマグニチュード7.1の地震が起きたことをきっかけに気象庁が初めて発表した「南海トラフ地震臨時情報」。国は約1週間、地震の備えを再確認するなど特別な注意を呼びかけました。

南海トラフ地震評価検討会の平田直会長は7日の記者会見で当時は臨時情報を知っている人の方がはるかに少なかったと振り返りました。

<南海トラフ地震評価検討会 平田直会長>
「少なくとも情報が出たことによって、この南海トラフ地震についての特別な情報、臨時情報が出ることを広く皆さんに知っていただいたこと、これは一つの進歩だと思います」

しかし、当時は海水浴場の閉鎖や花火大会の延期や中止が相次ぎ、混乱が見られました。こうした混乱を受け内閣府が8月7日に公表した新たなガイドラインでは、「状況に応じて適切な防災対応を実施したうえでできる限り事業を継続することが望ましい」とする指針が示されました。

約5000発の花火が静岡県焼津市の空と海を美しく彩る「焼津海上花火大会」。2024年は当初、8月14日に開催予定でしたが臨時情報を受けて11月に延期されました。運営する担当者はあらかじめ用意していたマニュアルに沿って対応したと話します。

<焼津市観光協会 見原照久事務局長>
「南海トラフ地震臨時情報が出た時という部分が規定をされているので、それに基づいて実行委員会の中で中止を決定をしたということになります」

全国で初めて津波災害の特別警戒区域通称「オレンジゾーン」に指定された静岡県伊豆市です。海水浴場に津波避難施設を整備したことで臨時情報が発表された後も遊泳禁止とはしませんでした。

<指定管理者 土肥温泉旅館協同組合 野毛貴登理事長>
「お客様にしっかりとした情報を与えながら経済活動をしていかないと、やはり臨時情報が出てる間、もう完全に経済活動を止めますよって話になってしまうと、我々としてもですね、なかなか難しいところだと思います」

一方、内閣府は新たなガイドラインで安全と社会活動の両立を目指す方針を示し、臨時情報が発表された後でもイベントなどは通常通り行うことが望ましいとしました。しかし、ガイドラインがイベント開催などの判断を自治体や観光地の管理者にゆだねる形となったことに担当者は不安を感じています。

<見原事務局長>
「きちんとしたマニュアルを作らないと、いざという時にお客様の命を守れるかどうか。ガイドラインとしては、具体的に踏み込んでもらって作ってもらった方がありがたい」

行政の担当者も判断の難しさを語ります。

<伊豆市危機管理課 山田和彦課長>
「そういった基準が国の方でカチッと決まっていれば、我々の方も、こういう基準だから閉鎖する、イベント中止しましょうという判断基準っていうのが明確になればやりやすいかなと思います」

内閣府は「イベントの開催を取りやめたりすることを止めるものではない」とし、あくまで個別の判断にゆだねる方針です。巨大地震への不安が伴う「南海トラフ地震臨時情報」。国が目指す安全と社会活動の両立は達成できるのでしょうか。

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