駿河湾で発生した南海トラフ地震か 鎌倉時代から800年続く“津波除け”祈祷 日蓮聖人が滞在した沼津の寺で【わたしの防災】

今から800年前、鎌倉時代の記録に残る大地震。地震の揺れや津波の痕跡、歴史の記録などから、その一つが駿河湾で発生した地震であることが分かってきました。静岡で大きな被害があったとみられます。

静岡県から九州の沖にかけて広がる南海トラフ地震の想定震源域。14世紀以降、大規模な地震が約100年から150年の周期で、繰り返し発生しています。また、13世紀の鎌倉時代にも南海トラフの地震活動を物語る大地震の記録が残されています。

5月、千葉県で開かれた地球惑星科学分野の学術大会。筑波大学の藤野滋弘准教授は、鎌倉時代に起きた2つの地震に注目しました。

<筑波大学 藤野滋弘准教授>
「静岡市の上土遺跡で、地割れとか、地表のたわみがみたいな痕跡が見つかっている」

静岡市葵区の国道1号静清バイパスの近くにある「上土遺跡」では、地震の激しい揺れによる液状化などの痕跡が過去の研究で明らかになっています。また、駿河湾に面した静岡県沼津市井田地区では津波の可能性がある海水が侵入した痕跡が見つかっています。

<藤野准教授>
「上土遺跡の地震動の痕跡を評価すると、どうやら13世紀後半なんじゃないかという感じになる。沼津市井田の海水侵入イベントの年代も正嘉地震、永仁地震をカバーしている範囲である」

鎌倉時代に起きた2つの地震。1293年の「永仁地震」は相模湾が震源とみられます。一方、1257年の「正嘉地震」は、駿河湾で発生した可能性があると藤野准教授は指摘します。

<藤野准教授>
「1257年の翌年、半年後ぐらいに日蓮宗を開いた日蓮が沼津を訪れて、地元の人の求めに応じて、津波よけの祈祷をしたという伝承が残っているそう」

沼津港や千本浜公園に近い場所にある日蓮宗の寺「妙海寺」(静岡県沼津市)では、1258年に日蓮聖人が滞在し、8日間にわたり津波除けの祈祷を行いました。

<妙海寺 笹津海道住職>
「地震とか、その時に飢きんが起こったりとか、疫病が流行ったりとか、そういったことの原因は、日蓮聖人は、信仰の誤りにあると。滞在されている間に8日間の津波除けの祈祷を執り行われたということで、そのご祈祷を今に伝えているのが、この寺」

津波除けの祈祷は毎年、大晦日の夜から1月8日の朝まで、8日間連続で夜間に行われています。鎌倉時代から約800年間、途切れたことはないといいます。

<笹津住職>
「純粋には、この地の津波を抑えるという非科学的かも知れないが、その念を強く持って読経するのと同時に、地元の方には、これが行われているということをもって、いつ何時、そのような被害が起きても準備はしっかりしておけと、そのような啓発の意味もあるのではないかと思うので、代々の住職も恐らく同じ気持ちで続けてきたものと思う」

藤野准教授は、歴史の記録は検証が必要で、地質などの研究には誤差があるとしながらも、1257年の正嘉地震は駿河トラフで起きた海溝型の地震だと解釈できるとまとめました。

<藤野准教授>
「過去の記録からその地域でどの程度の地震動や、どの程度の津波が起き得るのかという情報も得られることがあるので、そういったものは防災の基礎情報として重要であると思う」

南海トラフ地震には、繰り返し発生してきた歴史があります。私たちの目の前にある駿河湾はその震源域であり、激しい揺れや津波に対し、備え続けなければなりません。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

関連タグ

あなたにおすすめの記事

人気記事ランキング

ライターから記事を探す

エリアの記事を探す

stat_1