なぜ?こんなに違う…南海トラフ巨大地震“新被害想定” 静岡の死者数 国は「10万3000人」県は「2万2000人」理由は“前提条件”

3月31日、国が公表した「南海トラフ巨大地震」の新しい被害想定では、静岡県内の死者が10万人以上という厳しい結果が出ました。これまでの取り組んできた対策を生かし、死者を減らすにはどうしたら良いのでしょうか。

<国のワーキンググループ主査 福和伸夫名古屋大名誉教授>
「残念ながら被害を減らすための努力が十分でなかった。津波被災地域からの移転だとか、建物の耐震化が当初の目標と比べて進んでいない」

国の検討会の取りまとめ役を務めた名古屋大学の福和伸夫名誉教授です。「少子高齢化で若い人が減る中、甚大な被害を出したら日本は取り返しのつかないことになる」と指摘します。

新たな被害想定です。地震の揺れや津波を引き起こす断層のモデルは、13年前の前回の想定と基本的に変わっていません。静岡県内の市町には、最大で震度7から6弱の揺れが襲います。

津波の第一波は最短2分で到達。高さは下田市で最大31m(前回33m)、静岡市清水区で11m(前回11m)、浜松市で17m(前回16m)、沼津市で10m(10m)に及びます。

死者数は、最悪の場合、国全体で約29万8000人、県内では約10万3000人となり、13年前の想定から、わずかに減ったものの依然、厳しい数字です。

<国のワーキンググループ主査 福和伸夫名古屋大名誉教授>
「耐震化を進めれば被害は圧倒的に減ります。それから津波避難意識を高めれば、津波被害、津波による死者数は圧倒的に減ります。全力で被害を減らす方向に我々全員が意識を変えないといけないんだということだと思います」

市・町ごとの最大の津波の高さと、1mを超える津波が到達するまでの時間です。静岡県西部では13年前の想定より高くなった所や到達時間が早まった所があります。

中部では、静岡市駿河区と焼津市で前回より低くなりましたが、それでも10mを超え、清水区と焼津市では静岡県内で最も早く2分で津波が到達する想定です。

東部と伊豆の西海岸でも巨大な津波となり、わずか3分から4分で第一波が襲います。逃げる猶予は、わずかです。

下田市では31m。南海トラフが震源ならば猶予がありますが、相模トラフの地震ならば、もっと早く到達することに気をつけなければなりません。

新しい想定が出た一方、静岡県内の沿岸部では、この10年間で津波避難タワーや防潮堤などの整備が進みました。住宅の耐震化率も向上しています。このため、県は2022年度末の時点で死者が8割減り、2万2千人になったと試算していました。今回、国が出した死者数10万3000人との差について、鈴木康友知事は前提条件の違いだと話します。

<静岡県 鈴木康友知事>
「しっかりとした防災対策を講じていけば大幅に被害を減らすことができるということも合わせて提言されておりますので、これまで進めてきた防災対策をしっかりと今後も継続していきたいと考えております」

防災対策で今、大きな課題となっているのが高齢化です。伊豆半島など高齢者の多い地域では、都市部と比べて木造住宅の耐震化率が低いのが現状です。さらに、津波から逃げるのにも時間がかかるため、対策が不十分ならば犠牲者は減らせません。

<国のワーキンググループ主査 福和伸夫名古屋大名誉教授>
「静岡県はTOUKAI(倒壊・倒壊)-0プロジェクト以降、20数年間に渡って日本の地震対策をリードしてきてくれた県です。ですが、少しこのところ地震の問題よりは風水害の問題に注力されているところもあったと思います。改めて本気になって、耐震化と津波対策に専心していただきたいと思います」

国は、今回の報告書で「防災意識を高めること」や「耐震化」などの対策、災害関連死を減らすためにも「被災者の生活環境の確保」を求めています。また、「南海トラフ地震臨時情報」を生かすことで被害を減らせるとしています。備え続ける意識が必要です。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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