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静岡県はまだ13万戸以上が耐震性不十分!耐震化率を上げるために県の補助制度「TOUKAI-0」活用を

静岡県の住宅耐震化率は89.3%

東日本大震災から13年。改めて地震に強いまちづくりが求められています。建築士で静岡県建築士会広報情報委員の中野年浩さんにSBSアナウンサー青木隆太が話を聞きました。
青木:中野さんが所属している静岡県建築士会はどのような組織ですか?

中野:建築物を設計するためには原則として建築士という国家資格が必要になります。建築士会はこの資格を持った会員で構成された団体です。各都道府県の建築士会の上部に全国組織の日本建築士会連合会があります。

青木:元日には能登半島で地震が発生しましたね。

中野:能登半島ではここ数年、断続的に地震が発生しています。2023年5月にも最大震度6強の地震がありました。揺れが非常に大きく、至るところでがけ崩れなどがあり、道路は寸断されました。液状化現象で大きく傾いた住宅や波打った道路がとても印象深いです。

現地入りした応急危険度判定士によると、その地域では余震による二次被害の可能性がある「危険」と判定された住宅がほとんどだったようです。

能登地震の死者、9割は家屋倒壊が要因

青木:能登半島地震で家屋が倒壊した原因について教えてください。

中野:「キラーパルス」と呼ばれる周期の地震によって建物が一気に大きく揺れ、倒壊につながってしまったようです。壁が少ない能登の住宅の形状も関連しているかもしれません。複数回の地震には耐えられなかったのではないでしょうか。

住宅耐震化率の低さも倒壊の要因だと思います。石川県輪島市は約45%、珠洲市は約51%でした。能登半島地震では家屋倒壊によって亡くなった人が死者の約9割を占めていて(1月末時点)、今後の地震でも同様のことが懸念されます。

本県で耐震化が必要な住宅は13万戸以上

青木:静岡県の住宅耐震化率はどれくらいですか?

中野:2018年(平成30年)住宅・土地統計調査を基に算出した静岡県の住宅耐震化率は89.3%です。全国平均は約87%なので、静岡県では耐震化が着実に進んでいると言えます。

青木:平均以上ということですね。

中野:静岡県は国の耐震改修促進法に基づいて耐震改修促進計画を出し、2025年までに住宅耐震化率95%を目標としています。耐震化率が低い地域もあると考えられ、耐震性不十分とされる住宅はまだ13万戸以上残っています。

「屋根が重い」「壁が少ない」住宅は注意

青木:危険な住宅について築年数などの目安はありますか?

中野:一概に言えませんが、とても重い屋根の住宅や2階建ての1階部分に耐力要素である壁が少ない住宅は危険性が高いと言えます。

建築の法令は大きな地震があった後に基準が厳しくなります。1981年や2000年にも構造に関わる基準が改正されました。法改正前に建築されたものは耐力要素が少ない可能性が考えられます。

青木:自宅などの建物に不安を感じた時にできることはありますか?

中野:住宅がどの程度の耐震要素を保持しているか知ることはとても大切です。知り合いの建築士や建築業者に調査してもらうとよいと思います。

1981年5月以前に建築された木造住宅については、静岡県と各市町が「TOUKAI-0」という事業で、無料の「わが家の専門家診断」を行っています。各市町の耐震相談窓口等で申し込むことができ、耐震補強診断士が調査して、現在の住宅の状況を説明します。

2024年度で終了。耐震補強の無料診断

青木:耐震補強にかかる費用はどのくらいですか?

中野:県の資料によると平均180万円ぐらいです。TOUKAI-0では補強計画と補強工事に補助金を交付する木造住宅耐震事業も行っています。条件はありますが、静岡市では上限100万円の補助金が受けられます。

TOUKAI-0の無料診断「わが家の専門家診断事業」は2024年度まで、「木造住宅耐震補強事業」については2025年度までとなっています。

青木:少し急いだほうがよさそうですね。

中野:南海トラフ地震や東南海地震は100〜150年周期で起こる可能性があり、いつ起きてもおかしくないと言われています。自宅の耐震化は命を守ることに直結します。家具を固定することも重要です。

ブロック塀などが倒壊して道路をふさいでしまうと、救急車が入れないなどの支障をきたすおそれもあります。地域全体で防災意識を高めていくことがとても重要だと思います。

青木:中野さん、ありがとうございました。

※2024年3月6日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。
今回お話をうかがったのは……中野年浩さん
公益社団法人静岡県建築士会 広報情報委員

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