9月1日は「防災の日」。南海トラフ地震にどう備える?「東海さん一家の防災日記」の著者が語る地震対策【作家さん!いらっしゃい】

2025年8月5日に発売された「東海さん一家の防災日記 南海トラフ地震に備える」


みなさん、こんにちは。静岡新聞社編集局出版部のマッサンこと、増田です。

今回の「作家さん!いらっしゃい」(第4回)は、静岡新聞の連載をまとめたブックレット、静新ブック+の第2弾「東海さん一家の防災日記 南海トラフ地震に備える」(2025年8月5日発売)の著者、瀬畠義孝さん(静岡新聞社中東遠ブロック長兼掛川支局長)をゲストにお迎えしました。

南海トラフ地震は、最悪の場合、死者29万8000人に上るとされる未曽有の大災害です。私たちは自分や家族、友人など大切な命を守るために、どのように備えればよいか聞きました。

瀬畠義孝さん(静岡新聞社中東遠ブロック長兼掛川支局長)

巨大地震に備え、あなたと大切な人の命を守るためには!家庭や学校、地域での南海トラフ地震対策

―まずは、新刊の土台となった静岡新聞の年間連載(テーマ:南海トラフ地震臨時情報)を始めた理由を聞かせてください。

瀬畠:「南海トラフ地震臨時情報」は、2019年5月に運用が始まった制度です。それまで日本の地震対策の柱として、長年にわたって位置付けられてきた「地震の直前予知」が現在の科学では「できない」と国が判断した、防災対策上、大きな転換点でした。

しかし、同じ年の12月に、最初の新型コロナウイルス感染者が中国で確認され、翌20年1月には日本国内でも感染者が発生するなど、人類最大の脅威はコロナに取って代わりました。国や自治体が「南海トラフ地震臨時情報」という重要な制度を市民に周知、浸透させる前に、コロナ禍の猛威が臨時情報を吹き飛ばしてしまった形です。

防災対策として重要である一方で複雑でもある「南海トラフ地震臨時情報」の制度。新聞連載(2023年7月~)を始めたのは、この制度を市民が理解しないまま大規模地震(南海トラフ地震)が発生したら、防げる被害も防げず甚大な人的・物的損失が生じてしまう、と懸念を募らせたからでした。どうすれば一人でも多くの人の命を守り、被害を減らせるのか、その対策をさまざまな視点から紹介したのが、「東海さん一家の防災日記」の連載です。

本書では東海さん一家をはじめとする登場人物たちを中心に、南海トラフ地震の防災対策をイラストを交えて楽しく、分かりやすく紹介している

―「東海さん一家の防災日記」の最大の特徴は、「臨時情報(巨大地震警戒)」が出た時に社会がどうなるのかを小説風に描いたことだと思います。「臨時情報(巨大地震警戒)」は現在まで一度も発表されていませんが、シナリオはどうやって作り上げたのですか。

瀬畠:連載開始前にも臨時情報の発表時を想定して静岡県が作った漫画や、テレビ局が制作したドラマなどがありましたが、いずれもシンプルで比較的短いものでした。私たちはできるだけリアルなシナリオを追求するため、大学の地震学者や防災研究者、BCPの専門家、県・市職員、学校関係者などに広く取材を重ねました。

一方で、連載では自主防災会会長の駿河さん、会社員の遠州さん、小学校教諭の富士子さん、小学生の竜洋君、かのちゃん、愛犬すんぴーなど身近にいるような人たちを登場させ、さまざまな属性の人々の視点で、それぞれが直面する困難を克明に描くよう工夫しました。その人が置かれた立場によって、命や資産を守る行動は変わってくるからです。

ただ、あくまで架空のストーリーですので、読者の方々から「実際の災害時にこんな対応はしないはずだ」といった厳しいご指摘も頂戴しました。私たち記者側にも認識不足の面があったかもしれませんが、ご意見を寄せて頂いた多くの読者の方々がシナリオに自らの姿を重ねて想像してくださったことからも、市民の防災力向上に一定の貢献を果たせたのではないかと思っています。

家具の固定といった家庭での減災対策だけでなく、避難所でのペットの受け入れなど、ストーリー仕立てで細部にわたって解説している

―現実の世界でも2024年8月8日に日向灘でマグニチュード(M)7.1の地震が発生し、初の臨時情報(巨大地震注意)が発表されました。

瀬畠:個人的な感想としては、臨時情報の運用開始から丸5年以上も一度も発表されなかったことが、むしろ不思議に感じていましたし、コロナ禍に南海トラフで大規模地震が起きなかったことは幸運というほかないと思います。コロナ感染者が重篤化し、「3密」の回避が叫ばれていた時期に避難所生活などを強いられていれば、社会は大混乱に陥っていたでしょう。

実際には、JRが一部の列車を運休や減速運転にしたり、一部の海水浴場が遊泳禁止になったりと、さまざまな対応が見られました。今後も発表される確率の高い「巨大地震注意」が出された時に学校や企業などがどう対応するのが適切かを、今のうちからしっかり考えてもらいたいという思いも連載に込めています。防災で大切なのは、被災状況をイメージする「リアルな想像力」と、自分に何が必要かを考えた「的確な備え」だと思い、連載でもその点にこだわりました。

―初めて臨時情報(巨大地震注意)が発表されてから1年となり、9月には「防災の日」があります。南海トラフ地震対策、また臨時情報について、読者の方々に伝えたいことはありますか。

瀬畠:南海トラフ地震では、太平洋岸を中心にこれまでに例がないほど多くの県が被災します。一方で、何週間にもわたって国・県・市町の救援部隊が各地域まで行き届かない状況が続くことが考えられます。「誰も助けてくれない」と思っておいた方がいいでしょう。自分の命と健康を守るには今、できるうちに自分で備えておくしかありません。

水、食料、簡易トイレなどの備蓄や、自宅の耐震補強、家具固定、そして忘れてはいけないのが各家族の避難先の確認です。特に津波浸水想定区域などに住んでいる方は、臨時情報(巨大地震警戒)が発表されて1週間の事前避難をする場合の行き先、親類・知人宅などへの避難も真剣に話し合っておくべきでしょう。

瀬畠義孝記者
1997年読売新聞に入社し、科学部などで防災取材を担当。2012年静岡新聞に入社し、編集局社会部、湖西支局、浜松総局などを経て、現在は中東遠ブロック長兼掛川支局長。秋田県出身。

静新ブック+02「東海さん一家の防災日記 南海トラフ地震に備える」
(A5判、96ページ、価格1,320円税込)

<内容>
東海さん一家(架空の3世代)と、いつか訪れる南海トラフ地震についてストーリー仕立てで学ぶ「防災イメトレ本」。最悪のシナリオでは死者29万8000人という未曽有の大災害を生き抜くため耐震補強や家具の固定法、避難所生活に加え、「臨時情報」「巨大地震注意」「巨大地震警戒」「半割れ」といった、やや難解な防災ワードもわかりやすく知ることができる。専門家のインタビューや、非常用持ち出し袋のチェックリストも収録。

県内の書店、新聞販売店、静岡新聞SBSショッピング=弊社ECサイト=などで販売中。電子書籍版あり。

静岡新聞社出版部  電話:054-284-1666

<静岡新聞SBSショッピング(ECサイト)>
https://shop.at-s.com/collections/books

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