この春、静岡県伊豆市に全校生徒450人が通う新しい中学校が開校しました。校舎はもちろん、あらゆる面で防災設備が充実していて、必ず来るとされる南海トラフ巨大地震にも備えています。
自然豊かな伊豆市の中心部に誕生した市立伊豆中学校。市内の4つの中学校のうち、3つが統合されて、4月10日、全校生徒452人で開校したばかりです。
<東部総局 金原一隆記者>
「敷地が金網や植栽などで囲われておらず、開放的な校舎となっている。この設計は災害の経験から、生徒の安全を意識したものになっている」
その背景にあるのは、「通学区域」の広さです。
<伊豆市教育委員会学校教育課 杉山暁彦主幹>
「伊豆中学校は遠距離からの通学があるので(災害発生時に)保護者に引き渡しやすい車が動線を考えて作られている」

伊豆中学校の生徒は、土肥地区を除く、伊豆市内全域から通っていて、生徒の多くがバス通学です。校内2か所に設けたバスロータリーは、災害時に保護者が車で迎えに来やすくすることを意識しました。校舎には、車が3方向から入ることができるルートを設け、混雑しにくい車の流れを考えているそうです。

総事業費は約70億円。伊豆市産のヒノキをふんだんに使用した2階建ての校舎には、もしもの避難生活に備えた設備を取り入れました。
<杉山主幹>
「災害時も想定して作られた体育館になる。こちらは停電した時でもエアコンが使える体育館空調。バッテリーを積んでいて、ガスで動く動くエアコンになる」
停電しても動かせるというガス式のエアコン。災害時の避難所となる体育館には12基設置しました。本体にそれぞれバッテリーが内蔵され、電力が止まった場合でも空調の機能をしばらく維持できるといいます。
能登半島地震では、1月の寒さの中、停電が発生。冷え込みが厳しい避難生活を余儀なくされました。
体育館・武道場・小アリーナは、生徒・職員のほか、学校周辺の住民約600人の避難所となります。停電に強い中学校のすぐ隣には、伊豆市の防災拠点が新たに造られています。
<伊豆市危機管理課 山田和彦課長>
「この建物は伊豆市の『危機管理センター』になる。建物の裏側に、非常用発電機を設置する。この建物はもちろん、中学校にも電気を供給する」
2026年4月に完成予定の「伊豆市危機管理センター(仮称)」。大規模災害時に、市長や危機管理課の職員などが指揮を執る「災害対策本部室」が作られます。
3階建ての建物には、各地から届く支援物資を集めて仕分ける「救援物資倉庫」や中学校にも電源を供給する「非常用発電施設」などの機能も併せ持ちます。伊豆市は、危機管理センターと中学校がある日向地区を防災拠点にする考えです。
<菊地豊伊豆市長>
「中学校を1つの防災のツールとして見た場合、いい場所にいいものができたと思っている。危機管理センターとひなた公園、来年できるが、伊豆市民をなんとしても、市民を守るという行政としての第一責務を果たすための環境が整いつつあるかなと思う」
伊豆市は、想定される南海トラフ巨大地震で土肥地区に津波の被害が発生した場合、被災した住民を『ひなた公園』に受け入れる考えです。
仮設住宅200戸の建設するなど中学校・危機管理センター・ひなた公園で市民を守ろうとしています。
<金原記者>
「学校に通う生徒や保護者、また地元住民も、災害が起きる前に、地域に誕生した新しい防災拠点の機能や備えを正しく理解しておくことが大切」
伊豆市では、地域の少子化が進む中、学校を再編する動きをとらえて、南海トラフ地震への備える防災拠点整備と想定される津波の被災者を受け入れる防災公園づくりを一気に進めました。
未曽有の大災害・南海トラフ巨大地震の30年以内の発生確率は80%程度といいます。自治体がどんな防災対策を進めているかを把握しながら、住民が自分や家族を守るために知っておくべき知識、用意しておく備蓄品など1人1人の備えも大事です。