南海トラフ地震など大規模な災害を乗り越えるには、地域で助け合う「共助」が欠かせません。高齢化が進むなか、「自主防災組織」の活動を見直そうと住民たちが動き出しています。
3月9日、JR東海道線吉原駅周辺の静岡県富士市鈴川本町で津波避難訓練が行われました。この地区には、南海トラフ巨大地震で最大2メートルを超える津波が襲うと想定されています。
町内には、「津波避難タワー」がありますが、この日、逃げたのは別の場所でした。
<富士市鈴川本町 鈴木雅也自主防災会長>
「津波が起きた時は、ここら辺がみんな沈んでしまうと、そういうような危険性のある地域となっている」
タワーに逃げて命が助かったとしても、長時間、取り残されてしまう恐れがあると言います。
富士市の鈴川本町には、田子の浦港や港につながる川から津波が襲ってくるとみられます。町内全域が浸水想定区域ですが、津波の到達までには15分から25分ほどの猶予があると想定されています。
そこで、今回の訓練では、駅南側の小高いエリアで津波の浸水想定区域からは外れた場所にある公会堂まで避難する計画を立てました。
富士市のアドバイスを受けながら住民たちでつくる自主防災組織が主体的に考えました。
<富士市鈴川本町 堀内是則町内会長>
「1人でも多くの命を救いたいという気持ち。1人だけではどうしていいのかわからない。地区の人たちが助け合わないと乗り切れない」
訓練では「大きな揺れに襲われ、動けない時間を4分間」と想定し、「津波の浸水想定区域の外側にたどり着くまでの時間」を加えて、避難が間に合ったのか確認しました。
<住民>
「やっていかないとその時が動けないだろうから重要」
「訓練にもなかなか出てこられない方もいらっしゃると思うので、そういう方が一番大事じゃないかなと思う」
高齢化が進み、訓練に参加できない人がいるのが自主防災組織の悩みです。
<堀内町内会長>
「町内みんなで助け合うんだという意識が生まれてくると思うので、そういったものをどんどん積み上げていって、万が一の時には、1人でも助かる命は助けるという方向でいければいい」
<参加者>
「安否確認ばかりしていると、火が大きくなっちゃうから」
どうすれば、災害時に自主防災組織が機能するのか、話し合った地区があります。16の町内がある富士市吉永地区では3月、自主防災会長や班長などおよそ70人が集まり、防災会議を開きました。
「学校へ行けば養護教諭さんがいらっしゃいますよね」
「電気、水道、ガスが止まっている訳だから」
「カセットコンロを持ち寄る」
これだけ大勢で防災について話し合うのは初めてです。
<富士市吉永地区 木野正美町内会連合会会長>
「遠くの親戚より近くの他人と言いますけれども、隣、近所3軒協力すれば何とか生き残れると思う」
吉永地区でも高齢化が課題となっています。普段からのコミュニケーションを密に災害時にも助け合おうとしています。
<木野会長>
「70才以上の単身、もしくは老人のみが住んでいるお宅が非常に多い。やっぱり隣近所でみなさんで見ていただくというのが一番理想」
<富士市防災危機管理課 市川禎久課長>
「大規模な災害が発生した場合は行政も被災しますので、全てに行政の力が届くのは時間がかかりますので、日頃から自主防災会の共助の力を高めてもらえたら」