テーマ : ものづくり最前線

スズを使った酒器 栗田産業(静岡市駿河区) 鋳造技術、応用と工夫【静岡ものづくり最前線】

 鋳造技術を生かしてスズを使ったぐい飲みやビアグラスといった酒器を開発した。スズは水や酒などの味をまろやかにする効果があるとされる金属。多彩な本県の地酒をよりおいしく飲めるように工夫を凝らした。

スズを素材にした酒器や鋳鉄製の栓抜き
スズを素材にした酒器や鋳鉄製の栓抜き

 スズの融点は約200度と、従来扱ってきた鉄の融点約1500度に比べて大幅に低い。溶かしたスズを型に流し込む工程では途中で冷えて固まり、充塡(じゅうてん)不良になるケースが多かった。課題の克服に向けて、流し込む注ぎ口の数や形状を変えるなど試行錯誤した。「鋳造技術を応用してはいるが、ゼロから工夫したというのが実感」と栗田圭副社長(42)。研磨技術の向上にも取り組んでいる。
 産業用ロボットや工作機械用部品などの受注生産が主力事業。消費者が身近に感じられる自社製品を作ろうと2017年、創業者の名を冠した自社ブランド「重太郎」を立ち上げた。県の鳥サンコウチョウを模した鋳鉄製の栓抜きなど、酒器以外にも製品群を拡充している。
 地元の雑貨店やオンラインショップで販売し、交流サイト(SNS)でも発信してブランドの認知拡大に努める。改装中の本社社屋には自社製品のショールームを設け、完成後は酒の試飲会など交流の場としても活用していく。

 企業情報 静岡市駿河区豊原町3の6、1890年創業。従業員85人。

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