選ぶ時のポイントは? 自転車保険「基本のキ」
自転車保険=個人賠償責任補償特約+傷害保険
平野:自転車保険は、主に2つの補償から構成されています。ひとつは事故の相手に対するものですね。こちらが加害者になったときに、被害者に弁償する補償。第三者にケガをさせたり、その人の物を壊した場合の補償で、「個人賠償責任補償特約」といいます。もうひとつは、自転車に乗っているご本人の怪我の補償です。一般的には傷害保険になり、その多くは交通事故傷害保険です。
被害者のため、加害者のためにも
平野:自転車は便利な乗り物で、幅広い世代が気軽に利用できます。一方で、歩行者とぶつかったり、自転車同士でぶつかったりすることがあります。過去には高額な損害賠償事故も発生しています。
車やバイクには自賠責保険という強制加入の保険制度があって、入らないと法律違反になります。さらに、一般的には任意の自動車保険にも加入します。自転車の場合は強制加入の保険制度がないため、無保険の人が出てしまいます。事故を起こした人が無保険の場合、高額な賠償が払えなくなり、被害者が救済されません。
9000万円超も!? 自転車の高額賠償事故
牧野:高額賠償の事故には、どのような事例がありますか?平野:自転車の事故では、9000万円を超える損害賠償が命じられた事例があります。
損害賠償:約9521万円
夜間、帰宅途中の自転車に乗った小学生男子(11歳)が、歩道と車道の区別のない道路で、歩行中の60代女性と正面衝突。女性は重症を負って意識が戻らない状態となった。(神戸地裁、2013年7月4日判決)損害賠償:約9266万円
自転車に乗った男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員と衝突した。男性会社員に重大な障害が残った。(東京地裁、2008年6月5日判決)自転車保険選び「3つのポイント」
平野:ポイントは3つあります。
1.保険が必要なのは誰か
自転車に乗るのは家族の中で誰でしょうか。自分だけなのか、配偶者、子供、高齢の親が乗っているケースもあります。
2.加入済の保険に補償が重複しているものはないか
「個人賠償責任補償特約」は、傷害保険や火災保険、自動車保険に付帯するのが一般的です。例えば、賃貸物件に入居する時に加入した火災保険に「個人賠償責任補償特約」がついていることが多いんです。個人の生活全般に関する賠償なので、賃貸マンションで階下に漏水事故を起こした場合の賠償も対象になります。
ほかにも、勤務先の団体保険や共済契約、クレジットカードにも個人賠償責任保険がついていることがあります。最近は、示談交渉サービス付帯のものも多いですね。そちらも確認しておくといいでしょう。
3.必要な補償は何か
個人賠償責任補償だけあればよいのか、自分の怪我の補償(傷害保険)も必要なのか。高齢者は怪我をすると治療期間が長くなりがちです。これらを確認した上で、新たに自転車保険に加入するか検討するといいと思います。
補償内容や料金のポイント
牧野:自転車保険は、加入するといくらくらいするのでしょうか?平野:まず、個人賠償責任補償特約は、できれば補償金額が1億円以上のものに加入していただきたいです。ある保険会社で火災保険に個人賠償責任特約を付帯する場合、年一括払いだと、補償金額1000万円では年間保険料1610円、補償金額1億円にしても年間保険料2120円です。年間で500円ほどしか違わないんですよ。
牧野:補償金額1億円にしても、掛け金はそんなに変わらないですね!
平野:怪我の補償をする保険料については、別の保険会社の「死亡保障500万円、入院5000円(手術補償あり)、個人賠償責任補償1億円」のプランは、本人型(本人だけ入る)月々380円、家族型(家族みんなで入る)月々690円です。このぐらいを目安にしていただければと思います。
電車の脱線、エスカレーターで転んでも保険の対象⁉
牧野:その他、自転車保険で知っておいたほうがいいことはありますか?平野:自転車保険の怪我の補償対象となる交通事故は必ずしも自転車事故だけではないんですね。車やバイクはもちろん、電車、航空機、船舶といった交通乗用具も含むことがあります。乗っている電車が脱線したとか、大型のショッピングモールにある長いエスカレーターで転んで怪我したとしても、交通事故傷害保険であれば支払い対象になります。
牧野:どの保険がどこまで補償対象なのか、自分で書き出して確認しておいたほうがいいですね。
平野:最後に、保険でカバーできるのは民事上の損害賠償です。自転車事故を起こすと、状況によっては刑事罰を受けることもあり得ますし、勤務先の就業規則によっては懲戒の可能性も考えられます。予防の観点も大切にして、スマホを見ながら自転車に乗るようなことがないよう気をつけていただきたいです。
牧野:平野さん、ありがとうございました。
今回お話をうかがったのは……平野敦之さん
平野FP事務所代表。大学卒業後、証券会社や損害保険会社で実務を経験した後に1998年に独立。証券・保険業界での実務経験を活かしてお金の相談や執筆、講演(企業研修、セミナー、大学講師)等で活動中。主な著書に「今から始める確定拠出投資(自由国民社)」がある。お金の情報メディア「Mylife Money Online」を運営。
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