
コンビニで住民票や印鑑証明が取れる。今後は転出届も
堀:メリットは、全国のコンビニで住民票や印鑑証明、戸籍謄本が取れたり、ネット上で税金の確定申告ができたりすることです。2023年2月からは市区町村への転出届もネット上でできるということです。
デメリットは、個人情報漏洩の不安です。政府は「カードのICチップに個人情報が蓄積されているわけではなく、アクセスすることによって情報が得られるので、情報が芋づる式に漏れることはない」と説明しています。
最大2万円分のポイントがもらえる!
牧野:マイナンバーカードを取得すると今、マイナポイントをもらえるんですよね?堀:政府はマイナンバーカードの取得を促進するために、マイナポイントをもらえるキャンペーンを実施しています。マイナンバーカードの交付申請をすると、自分が選んだキャッシュレス決済サービスで買い物やチャージした金額の25%、最大5000円分のポイントがもらえます。
牧野:25%は大きいですね!
堀:加えて、マイナンバーカードを健康保険証として利用申し込みすると7500円分、公金の受取口座の登録で同じく7500円分のポイント、合計2万円分のポイントがもらえます。
2021年末まで実施されていた「マイナポイント第1弾」で、すでに交付申請でポイントをもらった人も、5000円の上限に達していない場合は、上限金額までポイントがもらえるということです。
牧野:申し込んでいる方が多くて、役所に行列ができていると聞きます。
堀:マイナンバーカード交付申請の5000円分のポイント獲得期限は9月末までだったんですが、2022年末まで延長されました。健康保険証の利用申し込みと、公金受取口座登録によるそれぞれ7500円分のポイントは、2023年2月末ですのでお忘れないように。
牧野:ポイントをばらまいてマイナンバーカードを持ってもらおうという、国の意気込みを感じます。一方で、思ってるほど普及が進んでいないという現状もあるんですね。
堀:10月18日時点のマイナンバーカード交付枚数は約6300万枚です。交付開始から6年経って、やっと日本の人口の5割になりました。申し込み件数はこの2か月半で1000万件も急速に増え、7000万件を超えています。マイナポイントキャンペーンの影響が大きいということです。
牧野:急増中なんですね。
堀:ただ、本当に便利なものであれば、とっくに口コミで広まっているでしょう。そこまでの便利さが感じられず、逆に個人情報流出や悪用が怖いといった不安要素が拭いきれなかったために、普及が進んでいなかったのだと思います。
健康保険証と一体化、スムーズな医療
堀:医療機関での受付が顔認証などで自動化されたり、待ち時間が解消されます。それから、私たちの同意を前提としてですが、過去に処方された薬や特定健診などの情報を医師・薬剤師が閲覧できることで、スムーズに医療を受けられるというメリットがあります。
ただ、先ほどもお伝えした通りマイナンバーカード自体の普及が遅れていることから、政府は2024年秋に現在の健康保険証を廃止して、マイナンバーカードに健康保険証をくっつける方針です。逆にいえば、原則的にはマイナンバーカードを作らなければ、健康保険証を持てなくなってしまうということになります。
牧野:マイナンバーカードを作らないという選択肢はなくなっていくわけですね。
堀:ただ、スマホやネットを使いこなせない高齢者はついていけないという問題があります。少なくとも、登録手続きなどは役所でやってもらえるようにサポートが必要です。
今後は運転免許証との一体化も!?
堀:また政府は、運転免許証の一体化も考えています。そうなると、マイナンバーカードを紛失すると日常生活がストップしてしまうというデメリットが生まれます。現在、健康保険証の再発行に一か月程度かかっていますが、政府はマイナンバーカードの一体化が完了するまでに、10日程度で再発行できるように短縮すると発表しています。マイナンバーカード普及のために
牧野:今後、マイナンバーカード普及のために必要なことは何だと思いますか。堀:政府は「マイナンバーカードを持っていないと不便」という社会を作ろうとしています。逆に、持っていることの便利さを実感できる制度をまず作れば、マイナンバーカードは自然に広がると思います。政府は利便性を高めるのとあわせて、安全対策の周知徹底に取り組む必要があります。カードを普及させたい理由や利便性について丁寧に説明すべきだと思います。
牧野:堀さん、ありがとうございました!
今回お話をうかがったのは……堀浩司さん
経済学は私たちの暮らしが良くなるためにある学問、私たちみんながわかる経済のお話を講演、ラジオ、テレビ、大学教員、執筆で。アルバイトをしていたラジオ局で学生時代に音楽番組のパーソナリティを務めて以来、その出演歴は40年! 大学常任理事として大学経営にも、税理士として企業経営指導にも携わる。