【マイナンバーカード】国民の8割が取得申請済みでも、相次ぐトラブル。本格活用の鍵は?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは、住民票の誤交付や健康保険証の誤登録など、ごたごたが続いている「マイナンバーカード」。先生役は静岡新聞論説委員長の中島忠男が務めます。
※SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」で放送したものを編集しています。

(山田)ちょうど今、財布の中にマイナンバーカードがありましたよ。ポイントも駆け込んでもらいましたが、マイナカードのトラブルは相次いでいますね。 

(中島)期待と不安。これだけ普及に成功したカードですので、効率的な行政を進めていくための基盤になっていくんだろうと多くの人が期待していることは間違いないと思います。ただ、さまざまなトラブルが報告されていて、国民の中に「これって大丈夫なのかな」という声があることも事実です。5月29日付静岡新聞の社説では、そうした疑問に答えつつ、それでもカードによるデジタル化、行政のデジタル化を進めていくべきだという論を書かせていただきました。

敢えて「デジタル後進国」と表現

(山田)DX(デジタルトランスフォーメーション)と言っている中で、日本のデジタル化は遅いんですね。

(中島)その通りですね。「IT戦略」「IT最先端の国」ということを言い出したのは早かったんですよね。2000年代初頭、森喜朗元首相の時代でした。当時は「住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)」と言われていましたが、「氏名、住所、生年月日、性別」の基本4情報を扱うだけだった。今に比べれば遥かに少ない情報でしたが、この情報化について皆さん不安を持っていました。

(山田)国に個人情報を管理されちゃうんじゃないかということですか。

(中島)はい。国が管理することによって、国民総背番号制がやってくるんじゃないかと。

そのあと遅々としてデジタル化が進まなかった。日本で言うところのデジタル化は、いわゆるコストダウンや、省力化、合理化の手段として語られることが大半だったんです。

一方で、日本の行政は世界各国と比べても、比較的正確で、自治体の行政もしっかりやっている。だから「(デジタル化を進めなくても)これでいい、大丈夫」って思っちゃったわけですよ。デジタル化イコール省力化みたいな話だったので、「頑張ってやれば手入力できる」「カードはいらない」って思ってしまった。これがデジタル化が進まなかった一つの原因だと私は思います。

デジタル化の本当の狙いは、色々なデータを分析し、組み合わせることによって、新しい考え方や政策、利便性が出てきてこそ。しかし、初動の段階で「デジタル化はいらない」「心配だ」といった意見がありすぎて遅れていった。本当の狙いも脇に置かれてしまった。

(山田)社説にも「デジタル後進国」と書いていましたが。

(中島)本当は「デジタル発展途上国」って言葉が正しいんですが、あえて「後進国」。これは論説会議で議論しました。

(山田)ここは強く言わんというわけですね。

過ちを乗り越え、進んでいく。より良いデジタル社会のために


(山田)マイナカード、普及はしましたがトラブルが相次いでいます。ヒューマンエラーのところだと思うのですが。

(中島)デジタルだからエラーがあるのか、どうなのかということは考えないといけないと思います。スマートフォンでもさまざまなアプリについて、かなりの頻度でバージョンアップが行われますよね。「デジタルってそういうものだ」と理解することも必要かと思います。

もちろん骨格の部分で、大きなミスがあってはいけません。ただ、必要な改善は加えていきながら、より安全、より便利、より良いものにしていくというのがデジタルの常道です。1億人近い人々が使うカードのうちの、10数人、あるいは数百人とかの問題。パーセンテージでいったらわずかでも決して無視はしてはいけないですが、そこで立ち止まってしまうのはどうかなということは社説でも書かせていただきました。

(山田)社説では、問題に気づいた段階での政府や各市町の対応が良くなかったという話を書いていますね。

(中島)河野デジタル大臣がその筆頭だと思います。デジタル化に向けたメリットや成果を強調するときはにこやかに出てきますが、今回はトラブルに当たって、彼が出てくるのは非常に遅い。あるいは、出てきたけれど謝罪がなかったという批判があります。

トップにいる人間は、きちんと現状を把握して過ちには頭を下げる。それをきちんとやらずに、正面を向いたまま「申し訳ありませんでした」って胸張っちゃうんですよね。この不徳の致すところは、日本社会の中で、デジタルを語るアナログというか、アナログ社会の中のデジタルというか…。

(山田)政治家さんたちがアナログじゃないかと。

(中島)そういうリーダーに、「この人なら任せられる」と日本国民が思えるリーダーになってほしいという気持ちを込めた社説だとご理解いただきたいです。

(山田)今後どういうふうにしていくべきか。

(中島)小さなトラブルが大きなものにならないように、それを補いながら、みんなで知恵を出して、良いデジタル社会、利便性のある社会を作っていこうと。意思を統一して、これを育てていくような社会であってほしいと思います。

(山田)社会が便利になるには、われわれのデジタルの使い方なども重要になってくると思います。ぜひ皆さん社説を読んでいただいて、みんなで考えましょう。今日の勉強はこれでおしまい!

SBSラジオで月〜木曜日、13:00〜16:00で生放送中。「静岡生まれ・静岡育ち・静岡在住」生粋の静岡人・山田門努があなたに“新しい午後の夜明け=ゴゴボラケ”をお届けします。“今知っておくべき静岡トピックス”を学ぶコーナー「3時のドリル」は毎回午後3時から。番組公式X(旧Twitter)もチェック!

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