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【多様化する新聞の活用方法】新聞記事を活用した模擬記者会見!シンブリオバトルも。学校現場で工夫凝らすNIEの実践

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「多様化する新聞の活用方法」。先生役は静岡新聞の橋爪充教育文化部長が務めます。 (SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」2024年2月28日放送)

(橋爪)今日はNIEのお話です。先日、静岡県NIE推進協議会の2023年度実践報告会が静岡市内で開かれ、小中学校、特別支援学校の実践指定6校が2年間の取り組みを紹介しました。各校の報告では、新聞を「読む」「書く」の教材として用いるだけでなく、子供たちの表現する力を伸ばすためのツールとして活用した事例が相次ぎました。

ところで、山田さんはNIEって何の略か分かりますか?

(山田)えー。教育に新聞を、みたいな感じですよね?だからNはニュースじゃないですか?

(橋爪)Nは「ニュースペーパー」です。紙であることが重要。NIEは「Newspaper in Education(ニュースペーパー・イン・エデュケーション)の略称です。要するに、学校など教育機関で新聞を教材として活用する活動です。

(山田)それがNIE。

(橋爪)この活動は実はかなり古くからありまして、1930年代にアメリカで始まっています。

(山田)そんなに前から!

NIEは世界80カ国で導入されている!

(橋爪)いまは世界80カ国で導入されています。日本は静岡が発祥というか、ゆかりの地なんです。1985年に、静岡県で開かれた新聞大会で提唱されました。その翌年から、教育界と新聞界が協力し、全国で本格展開しています。目的としては「社会性豊かな青少年の育成や活字文化と民主主義社会の発展」などを掲げています。

(山田)言っていることは分かりますね。

(橋爪)実践指定校は毎年指定されていまして、2023年度は47都道府県に530校あります。先生や教育関係者が名を連ねる全国のNIE推進協議会から推薦を受けて日本新聞協会が認定します。期間は原則2年間。静岡県では小中高、特別支援の14校が取り組んでいます。

(山田)僕が通っていた学校は指定校ではなかったと思います。ただ、新聞を取り入れた授業は多くありましたけどね。

(橋爪)指定校では何をするかというと、新聞をいろいろな授業で使って学びを深めるんです。どう活用するかについては、学校や先生ごとに異なります。地域や児童生徒数、そして先生の考え方によって、自由に新聞の扱い方を決めてもらっています。

実践報告会では、小中学校、特別支援学校の実践指定6校が2年間の取り組みを紹介してくれました。各校が非常に面白いことをしていまして、新聞を作っている側からすると「ありがたいな」という気持ちでいっぱいになりました。

(山田)新聞を授業で使うとなると、気になった記事を切り抜いて持ってきて、なぜ気になったのかを発表する、ということはやったことがあります。

(橋爪)そういうことを行っている学校もあります。あとは少し違った切り口として、自分たちで壁新聞を発行するという形に発展することもあります。

ただ、新聞を使うことで最も期待されるのは、何が書かれているのかを読み解くということではないかと思います。その訓練に新聞は最適だというのがNIEの第一歩目なんですが、先日の実践報告会に登場した6校の取り組みはそういうものを飛び越えていました。

(山田)そうなんですか。

(橋爪)こんな使い方があるんだということを教わりました。

(山田)いくつか教えてください。

富士見中(富士市)の独創的な取り組みが面白い!

(橋爪)まず、富士市の富士見中です。学校内に全国紙や静岡新聞を読み比べられる新聞コーナーをつくって新聞に親しんでもらったり、静岡新聞が提供しているNIEワークシートを使って記事の内容を要約するトレーニングをしてくれたりしていました。

最も独創的だと思ったのは「新聞記事を活用した模擬記者会見」。すごいんですよ、これ。

(山田)どういうことですか?どうやってやるんですか?

(橋爪)1つの記事を読んで、生徒が「会社側」「記者側」に分かれて疑似記者会見を行うんです。会社側に割り当てられた生徒は記事の内容を説明します。記者側の生徒はそれを聞いて、会社側の生徒に質問します。

(山田)面白い!

(橋爪)そのやり取りを通じて記事の内容についての理解も深めていくということをしています。記事に書いてあることは「ファクト」ですから、それをいかに説明するか、きちんと理解しているかがやり取りの中で見えてくるということなんです。

(山田)説明するためにはより理解しなきゃいけないですからね。

(橋爪)この授業の素晴らしいところは、「会社」「記者」に加えて、「ニュースキャスター」という第三の立場を用意しているところです。「ニュースキャスター」の生徒は、先ほどの会社、記者のやりとりから、分かったことをみんなに説明します。

(山田)へぇー。

(橋爪)1つの新聞記事を通じてそれをどう読み解くかということを、言葉のキャッチボールを通じて成し遂げていくという試みです。その途中に、わざわざ「公」の場面を作り出しているところが素晴らしいですよね。

ビブリオバトルならぬ「シンブリオバトル」

もう一つ、紹介しますね。伊豆市立土肥小中一貫校です。こちらも、多岐にわたった取り組みをしてくださっているんですが、どれも遊び心があるんです。一番心に残ったのは、「シンブリオバトル」とネーミングされた企画でした。「ビブリオバトル」って分かりますか? 

(山田)当然知ってますよ。僕、チャンピオンに1回勝ったことありますから(笑)。

(橋爪)ビブリオバトルは要するにおすすめの本のプレゼン大会なんですが、自分が好きな本について、聞いている人たちにどれだけ「読んでみたい」と思わせられるかを競う競技です。県教育委員会も推奨していて、県大会もあります。シンブリオバトルはこれの新聞版なんです。

(山田)新聞を読んでみたいと思わせるってことですか?

(橋爪)そうです。新聞を読んで自分が気になった記事をピックアップし、その記事を読んでどう思ったかというメッセージを伝えるとともに、聞いた人に「読んでみたい」と思わせるスピーチをするというルールなんです。国語の時間にクラスで予選会を行ったそうです。

(山田)楽しそう!

(橋爪)ここは小中一貫校なので5年生から9年生、つまり小学5年生から中学3年生の年代の児童生徒が学んでいます。予選会を勝ち抜いた各学年2人ずつの計10人が、5〜9年生の全員の前でもう1度スピーチをしたようです。

(山田)橋爪さんの立場だったら、もしかしたら自分の記事が選ばれているかもと気になりませんか。

(橋爪)そうなんですよ。余談になりますが、年に1回、新聞記事の感想文コンクールがあるんですが、稀に私が書いた記事を素材にしてくださる方がいて。その時はものすごく嬉しいですね。

(山田)シンビブリオバトルも面白いですね。

(橋爪)それともう一つ、既存の考えにとらわれない実践を紹介してくれたのが静岡市立清水飯田中学校。こちらも、読者投稿欄への投稿とか、昼の放送でその日の新聞記事を紹介するとか、いろいろやってくださったんですが、目からうろこが一つありまして。それが新聞紙を使った清掃活動なんです。

(山田)というのは?

(橋爪)新聞は紙じゃないですか。新聞紙は掃除に使えるとよく言われています。

(山田)窓ガラスとか?

(橋爪)そうそう。新聞紙を濡らして床や窓、トイレの清掃に使ったということを発表してました。

(山田)ちょっと待ってください。NIEってそれでもいいんですか?

(橋爪)概念が拡張しているんですね。要するにエデュケーションだから、教室での学びだけではなく、教室内の生活みたいなものも含めてニュースペーパーを導入すると。

(山田)どう使ってもいいですね。

「表現する力」を伸ばす活用法が主流?


(橋爪)いろいろ聞いて思ったのは、今の教育現場では新聞を「読む」「書く」の教材として用いるだけではないということですね。児童生徒の「表現する力」を伸ばすことが今は求められていますよね。

学習指導要領にも「主体的・対話的で深い学び」や「アクティブラーニング」という言葉があるんですが、そのツールとして新聞を活用する事例が格段に多くなったという印象があります。昨年の実践発表の報告書も読んだんですが、ことしは特にそういう事例が多かったですね。

(山田)各学校が本当に工夫されてますね。

(橋爪)そうですね。新聞は「信頼に足る情報」を届けるという一義的な意味があるんですが、より一層教育の現場でそれぞれの先生のアイデアの下、いろいろな形で活用されていることを知ると、新聞に関わっている人間としては嬉しくなります。

また、さらにいろいろなことができるのではないかと勇気をもらったような感じもありました。紙の新聞の未来像がまだまだ開ける気がします。

(山田)NIEでさまざまな使い方をされていますから、記者としても何かまた頑張らなければという思いがするのではないですか。

(橋爪)そうですね。取材して記事にする過程を、ともすると流れ作業にしてしまいがちなところもないとは言えないです。でも発表を聞いて、そんなことがあってはいけないなという思いを改めて強くしました。

(山田)ぜひ皆さんも新聞を活用していろんなことを発見してみてはいかがでしょうか。今日の勉強はこれでおしまい!

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