ドライマウスとは?
空気が乾燥している時期、口の中やのどが「渇いている」と感じることがあれば、「ドライマウス」かもしれません! 今回は、ドライマウスの原因と対策について、ドライマウス研究会・代表で鶴見大学歯学部教授の斎藤一郎先生に、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
牧野:ドライマウス研究会の活動について教えて下さい。
斎藤:会自体、ドライマウスの診療を担当している先生を中心に構成しています。ドライマウスの診断や治療法を普及させようと、20年前の2002年に作った組織で、全国の多くの医療従事者の賛同を頂いています。
牧野:ドライマウスとは、一般的にどのような症状のことをいうのでしょうか?
斎藤:口の乾きを自覚する人は少ないのですが、「口がネバネバする」「乾いたものが食べにくい」「上手く話ができない」「朝起きたら不快感を感じる」という人たちを調べてみると、唾液の分泌量が低下しているドライマウスのケースが多いです。
牧野:それは滑舌などにも影響はありますか?
斎藤:潤滑油としての唾液が減少するわけですから、「呂律がまわらない」「上手く話ができない」など滑舌に影響してきます。
牧野:やはり乾燥する冬場に増えてくるのでしょうか?
斎藤:当然冬は外気も乾燥しますし、口内の唾液が蒸発して口が乾くケースもあります。鼻で呼吸するのが適切ですが、鼻が乾燥して詰まってしまい口呼吸をしてしまう。特に睡眠中に口が開いてしまうと、蒸発して口が乾いて、朝非常に不快な状態になるということが、特に年齢を重ねると多くなるようです。
自分でできるドライマウス対策
牧野:対策としては口をテープで閉じる、などでしょうか?斎藤:それもひとつの手段ですが、鼻が詰まらないように耳鼻科で治療することや鼻の掃除をするのも大切です。あとは、寝方! 上を向いて寝るという人も多いと思いますが、実は口周りの筋肉も年とともに劣化しているので、どうしても口が開きやすくなります。横を向いて寝たり、人によっては抱き枕を使ってみるのもひとつの手段です。
牧野:ドライマウスの対策としては、横向きで寝るのがいいのですね。
斎藤:それも対処のひとつかなと思います。ただ、長年上を向いて寝てきた人が急に横向きで寝るというのも難しいと思うので、口を開けて寝てしまう原因を自分で探れるといいですね。
牧野:ドライマウスになりやすい人に傾向はありますか?
斎藤:唾液の分泌が低下する心理的要因としてはストレスがあります。緊張すると誰でも唾液の量が少なくなるんです。今はストレス社会ですから、毎日の仕事や家庭、またはコロナ禍のストレスが原因で、唾液の量が減るという人も多いです。あとは中高年の場合、薬の副作用というケースも。特に睡眠薬や血圧の薬、アレルギー薬を常用している人は、唾液の量が少なくなることもあります。
シェーグレン症候群の可能性
牧野:リスナーから、「身内があまりにも口が乾くので病院で診察を受けたら『シェーグレン症候群』と診断された」というメッセージがきたのですが?斎藤:実は私は「シェーグレン症候群」が専門なんです。厚労省が難病に指定する膠原病のひとつです。診断方法はあるにせよ、効果的な治療法がいまだなく研究している段階です。患者は中高年の女性に多くて目と口が乾きます。そのほか肺や腎臓などいろいろなところに症状がでるので、定期的に眼科や歯科だけではなく、膠原病・リウマチを専門とするの内科の先生と三位一体となって患者さんを拝見しているのが現状です。
牧野:不安になった場合、何科を受診すればいいのでしょうか?
斎藤:検査はどこでもできますが、対処方法として、目や口が乾くというのであれば眼科・歯科へ。全身的な管理という意味では、内科、特に膠原病・リウマチ内科が適切かと思います。
ドライマウスのセルフチェックと予防
牧野:ドライマウスの傾向があるのか自分自身でチェックする方法はありますか?斎藤:自覚症状が前提となりますが、先ほど申し上げたような口の中がネバつくなどの乾燥症状が3ヶ月以上続くのであれば、シェーグレン症候群も疑います。ドライマウスの症状をもつ人の1割くらいがシェーグレン症候群だというデータがあります。シェーグレン症候群かそうでないかを血液検査等で鑑別診断するために内科を受診するのがいいと思います。
牧野:その前の段階で予防するために、普段の生活で何を心がければいいですか?
斎藤:ストレスをためないとか、日本は服薬大国といわれますが、薬に頼らない生活をすることですね。あとは、噛みごたえのある食事をすることも大切です。唾液を作る唾液腺は、筋肉に裏打ちされています。口の筋力を使う、よく噛むということを励行されると分泌が促されるようになります。
牧野:ガムを噛むのはどうですか?
斎藤:いいと思いますよ!
牧野:心配になったときに、専門的な知識をもった病院を探すことはできますか?
斎藤:「ドライマウス研究会」のホームページに、ドライマウスについて勉強した全国の先生方の診療所の名前と連絡先が載っていますので、参考にしてみてください。
牧野:最後にメッセージをお願いします。
斎藤:唾液は、吐いて捨てるようなイメージがありますが、単なる水ではなくて体の健康を守るために必要な分泌液です。唾液が少ないという症状を感じたら、たかが唾液と侮らないようにしてください。
牧野:ちょっとでも気になることがあったら、まずは自分でチェックして病院へ足を運んでみてください。
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免責事項
今回お話をうかがったのは……斎藤一郎先生
ドライマウス研究会・代表。1954年、東京都生まれ。2002年より鶴見大学歯学部教授。鶴見大学歯学部附属病院・前病院長。2003年、同大学附属病院にドライマウス外来を開設。口腔から全身の健康を守ることの大切さを広く呼びかけており、NHK『あさイチ』ほかテレビ出演多数。著書に『「現代病」ドライマウスを治す』(講談社)など。