熱海土石流の発生から4年 遺族の悲しみ今も深く…伊豆山の復興は「新しい一歩をみんなの力で」被災地で進む“居場所づくり”

静岡県熱海市伊豆山で28人が犠牲になった土石流災害から、2025年7月3日で4年です。違法な盛り土が崩れたことによる“人災”と言われる中、現在も責任の所在はわかっておらず、復興は道半ばです。

<LIVEしずおか 滝澤悠希キャスター>
「2023年9月に解除されるまで、立ち入りが禁止されていた伊豆山地区の『旧警戒区域』からお伝えします。土石流による被害が大きかったエリアですが、発災から4年の今も、復旧工事が続けられていますし、当時の被害を物語るような建物が現在も残されています。7月3日の被災地は、鎮魂の祈りに包まれ、遺族は、“やり場のない怒り”を口にしました」

追悼式には、遺族や知事、市長らが参列し犠牲者を悼みました。

<鈴木康友静岡県知事>
「盛土規制法ができましたし、県の条例も制定されましたので、しっかりそれに基づいて、二度とこういう同じ災害が起こらないように取り組みを強化していきたい」

遺族は、今も悲しみを抱えています。

<娘を亡くした小磯洋子さん>
「きのう起きたのとまだ同じ気持ちでいる。癒やされることは私が生きている限りはないと思う」

発災時刻とされる午前10時28分。

「10時28分」

住民らが、土石流の被災現場に向かって黙とうを捧げました。

<被災者 太田かおりさん>
「今までを取り戻したい。もっと住民が今までの生活を取り戻すために何をしたらいいのか、そこを一番、熱海市には考えてもらいたい」

28人もの尊い命を奪った静岡県熱海市伊豆山の土石流災害。逢初川上流に造成された、規制の3倍以上になる約50メートルの「違法な盛り土」が、大雨の影響で崩れ落ちました。

土石流で母を亡くした「被害者の会」会長の瀬下雄史さんです。

<被害者の会 瀬下雄史代表>
「確かに4年経った中で、いろんな感情的なところというのはだいぶ落ち着いてきたところもあるが、まだまだやっぱり思い出して苦しい時間も多い」

瀬下さんなど遺族らは、この災害を“人災”だとして刑事告訴。警察は盛り土があった土地の前と現在の所有者などに対し捜査を続けていますが、刑事責任は今も明らかになっていません。民事裁判では、土地の所有者のほか、静岡県熱海市や県を相手どり損害賠償を求めています。

<瀬下代表>
「発災以降、被告たちからの何かしら謝罪だったり、非を認める言動はない。現時点に至っても一切ないので、腹立たしい思いをしている中で司法の場で裁かれることを原告みんなが望んでいる」

<杉本キャスター>
では、被災地の復興はどこまで進んでいるのでしょうか。

<滝澤キャスター>
道路の状況から確認します。逢初川中流部を横断する市道「岸谷2号線」は、2024年10月に仮開通。この地区の主要な道路の1つで、旧警戒区域で、初の道路復旧となりました。道路整備は、2025年度中に全体の7割が完了する見込みです。

一方で、河川の拡幅工事に伴って国道135号まで通じるこちらの市道は、2025年3月から当面、通行止めになっています。まだまだ地域住民は、不便を強いられている状態です。

続いて、河川工事の状況です。河川工事は、現状、全体の4分の1が完了しています。被災地の復旧事業について、河川の拡幅工事は「県」が、道路の整備は「市」が手がけることになっていてどちらも「2026年度末」までの完了を目指しています。

では、今後復興は、どう進めていくべきなのか。被災住民の思いと、伊豆山の人たちの“居場所づくり”を進めるコミュニティーカフェを取材しました。

静岡県と熱海市が2025年度、新たに始めた被災住民らとの地区別の意見交換会。各担当者と被災者たちが、復興の進め方について意見を交わしましたが、現状の捉え方はさまざまです。

<住民>
「土石流があって、あれだけ不安定な土砂があって、工事が入って、(今の進捗状況は)仕方がない」

<住民>
「伊豆山は復興・復旧していない。それをやっていただけないと私たちまだまだ前に進めません」

避難した132世帯のうち、旧警戒区域で生活を再建したのは、現在、26世帯のみ(2025年6月20日時点)。再建した一人の小松さんは、“街の将来が見えない”と嘆きます。

<小松昭一さん>
「寂しいということを通り抜けちゃって、このまま(この地区が)終わってしまうのでは。皆さん帰ってくるとは言っているけど、おそらく帰ってこないんじゃないかと」

「暮らしの再生」に不安が残る中、住民の“居場所づくり”を進めるカフェがあります。

<滝澤キャスター>
「熱海市伊豆山のあいぞめ珈琲店です。復興を願って生まれたカフェですが、新たな装いでプレオープンしました」

「あいぞめ珈琲店」は、土石流直後に発足したボランティア団体がクラウドファンディングで資金を募って作ったコミュニティーカフェです。約2か月間の改装作業を経て、リニューアルしました。店内には木製のグランドピアノが設置され、伊豆山に住む全盲のピアニスト志岐竜哉さんが常駐して演奏を披露します。

<地元住民>
「力強い曲だと思った。また新しい一歩が踏み出せたような気がした」

また、伊豆山に住む全ての住民に提示すると店のメニューが割引される「応援カード」を配布。スイーツなども用意し、地元の人たちの“憩いの場”を目指します。

<あいぞめ珈琲店 志岐優理子店長>
「ここにいてリラックスできる、心地良い空間をリニューアル後皆さんに提供できたら」

<滝澤キャスター>
伊豆山を元気にしようと頑張り続ける人がいます。一方で、“違法な盛り土”崩落の責任の所在がわからず、憤りを抱え続ける遺族もいます。一人でも多くの人が、この災害を忘れず不適切な盛り土への監視の意識を強めることが被災地・遺族の前進につながると信じます。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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