災害時には避難所になるコンテナホテル!
建築用コンテナモジュールを利用したコンテナホテルをご存知ですか? 外から見ると、いわゆるコンテナですが、なかにはベッド、エアコン、ユニットバスなどが備えられ、普段はビジネスホテルとして使われています。これが、災害時には「レスキューホテル」として大活躍するのだそう。レスキューホテルを運営する、株式会社デベロップ広報担当の麻生川佳奈さんに、SBSアナウンサー牧野克彦が詳しいお話をうかがいました。
レスキューホテル出動の様子
牧野:コンテナホテルを活用したレスキューホテルが、どのようなホテルなのか教えて下さい。麻生川:普段は建築用コンテナモジュール一台を一客室としたホテルですが、客室の下にタイヤがついているので、災害時にはトレーラーヘッドと接続してけん引することで、客室ごと被災地に移動できるようになっています。現地では避難所や診察室としてご利用いただける仕組みです。
牧野:ものすごく画期的ですね! 手元に広い敷地にコンテナが並んでいる写真があります。このコンテナの中がホテルの部屋になっているんですね!

HOTEL R9 The Yard いなべ(三重県)
麻生川:普段は「HOTEL R9 The Yard」という名前で、ビジネスホテルとして運営しています。客室内はシモンズ製のベッドやユニットバス、電子レンジ、冷凍冷蔵庫などが備わり、一般的なビジネスホテルと同様の仕様になっています。
客室(ダブルルーム)
牧野:見た目もけっこう広いですね。一室あたりの広さはどれくらいですか?麻生川:約13平方メートル、約7畳です。

客室(ユニットバス)
牧野:国内ではどういったところにありますか?麻生川:現在は関東中心ですが、北は栃木、南は沖縄まで開業準備中のホテルを含めて全国に50店舗1681室を展開しています。
牧野:コンテナの中ということですが、とてもオシャレな雰囲気ですね。
麻生川:独立した客室構造なので、ビル型のホテルと違って隣の音が気にならず、客室から駐車場も近いため、快適に過ごせるとご好評をいただいています。
牧野:もしも国内で災害が起きたら、そのホテルがある拠点から必要な場所に運んで行くということですよね?
麻生川:設置場所や設置台数にもよりますが、自治体から出動要請を受けて24時間以内の出動を目指しています。インフラ設備の整った学校の校庭や体育館のそばに設置することを想定しており、お風呂やトイレ、エアコンなどビジネスホテルと同様の設備を使う場合には、電気や水道で配管等の工事が必要になるので、運用開始までは最短3日~1週間程度を想定しています。
「レスキューホテル」誕生のきっかけ
牧野:画期的なアイデアといえる「レスキューホテル」ですが、誕生のきっかけはあったんでしょうか?麻生川:東日本大震災がきっかけです。弊社代表の岡村が南三陸町と石巻市に復興支援で訪れた際、仕切りもなく、プライバシーの保たれない体育館などの避難所で、多くの方が生活に負担を強いられている状況を目の当たりにしました。容易に移動可能なコンテナであれば、すぐに被災地へ個室空間を提供できると考え、レスキューホテルの仕組みを着想しました。
牧野:すごいアイデアを思い浮かばれたんですね。静岡県内でもレスキューホテルが来てくれたら安心だなと思っていたら、4月5日に静岡県内では、初めてとなる掛川市と災害時の協定を締結したというニュースがありました。事前に自治体と災害協定を結んでおくものなんですか?
麻生川:災害時に複数の自治体から同時に出動要請を受けた際には、協定を締結している自治体から優先的にレスキューホテルを提供させていただく内容の協定となっています。事前に災害協定を結んでおくことで、平時から出動場所や消防手続きなどの情報を共有いただきます。自治体と顔の見える関係を築き、突発的な災害時にも迅速にレスキューホテルを提供することを目的としています。
牧野:新型コロナウィルスの感染症対策で、長崎県に出動された経験があるそうですが、その時は、どのぐらいの規模でどのような利用の仕方になったんですか?

レスキューホテル出動事例:設置の様子(長崎県長崎市)
麻生川:長崎県に停泊中のクルーズ船内で新型コロナウイルスのクラスターが発生した際に、栃木県と千葉県から計50室のレスキューホテルを長崎港へ出動させました。クルーズ船のそばに約1カ月設置し、医療従事者の休憩所や一部診察室として利用いただきました。牧野:その経験から、手ごたえや課題などあれば教えてください。
麻生川:当時は初めての出動であった上に、災害協定も締結しておらず、完全に顔の見えないやり取りでしたので、出動の手配や設置工事などにだいぶ時間がかかりました。また、当時はまだレスキューホテル出動拠点となるコンテナホテルが関東圏にしかなかったため、移送も大きな負担となりました。その経験から、災害時はもっと近くからすぐに出動できるよう、全国にコンテナホテルの展開と、出動時の手続きを簡略化するために、より多くの自治体と災害協定締結を進めることが課題だと思っています。
牧野:静岡県の自治体は結んでおいた方がいいんじゃないかと思いました。遠方の場合も、コンテナは陸路で運ぶのでしょうか。
麻生川:基本的には陸路での移送を想定しています。
牧野:今後はどのように発展させていきたいですか?
麻生川:現在は、関東から沖縄までコンテナホテルを展開していますが、まだホテルのない地域も多くあります。そういった地域へ積極的にコンテナホテルを出店することで、レスキューの輪を広げていきたいと思っています。
牧野:静岡県の防災力を上げる取り組みのひとつになると思いますので、自治体の人はぜひ検討してみて下さい!