
伊豆半島の中山間地にあるセブン-イレブン大仁田原野店(伊豆の国市)は2月に移動販売車を導入した。軽トラックの荷台にパンやドリンク、総菜など約300品目の商品を載せて平日の日中に山あいの集落を巡回し、2カ所の介護施設も週4日ずつ訪れる。土屋丞オーナー(41)が知人の施設職員に移動販売車の計画を話した際に「面白いので来てほしい」と言われ訪問先に加えた。地域貢献の側面が強いが、施設では比較的多くの高齢者が利用してくれるため効率的に販売できる利点がある。
高齢者側も利便性を実感している。「家の近くにスーパーがないので、施設に移動販売車が来てくれると助かる」と話すのは同市内のデイサービス施設でコンビニ移動販売車を利用する古屋とし子さん(93)=同市=。職員の付き添いで、施設の玄関先に止まった移動販売車でしょうゆや豆腐などを購入した。
買い物体験は高齢者の刺激になり介護予防にも効果的だという。別のデイサービス施設に通う伊豆市の山下チエさん(86)は施設を訪れた移動販売車で団子やヨーグルトを購入。財布からお金を出して自分で支払った。「いろいろな商品があり、自分の好きな物を自分で選べるのが楽しい」と笑顔を見せた。
巡回先の伊豆中央ケアセンター(同市)は利用者の親族に事前了承を得た上でお金の管理や1人ずつの職員付き添いなど移動販売を利用する際のルールを決めている。責任者の小川君枝さん(48)は「自宅に戻った際に家族に配るお菓子を買って家族とのコミュニケーションが生まれたり、独居のため当日の夕飯や翌日の朝食用に弁当や食材を買ったりする高齢者もいる。利用者にとって移動販売が生活の一部になっている」と意義を語った。