テーマ : 経済しずおか

静岡特産クラウンメロン “古里”英国で本格販売開始 高級百貨店で1玉3万円、バイヤー「王室にも」

 静岡県特産の「クラウンメロン」。大正時代に英国から、起源となる品種の種が伝わったとされ、生産者が長い年月をかけて改良を重ね、優れた栽培技術でブランドを築き上げてきた。約100年を経て今春、ロンドンの高級百貨店「ハロッズ」でクラウンメロンの本格的な販売が始まった。口当たり、甘さが現地で好評という。県温室農業協同組合クラウンメロン支所(袋井市)の鈴木陽介経営戦略部長は「英国での販売は、いわば“里帰り”。特別な思い入れがある」と喜びをかみしめた。

ロンドンの高級百貨店「ハロッズ」の棚に並ぶクラウンメロン
ロンドンの高級百貨店「ハロッズ」の棚に並ぶクラウンメロン
クラウンメロンの生育方法を説明する鈴木陽介部長(左)と英国果物バイヤーのゲイリー・ファンさん(中央)=3月中旬、袋井市内
クラウンメロンの生育方法を説明する鈴木陽介部長(左)と英国果物バイヤーのゲイリー・ファンさん(中央)=3月中旬、袋井市内
ロンドンの高級百貨店「ハロッズ」の棚に並ぶクラウンメロン
クラウンメロンの生育方法を説明する鈴木陽介部長(左)と英国果物バイヤーのゲイリー・ファンさん(中央)=3月中旬、袋井市内

 3月中旬、クラウンメロン支所では英国果物バイヤーとの販売戦略の最終確認が進められていた。鈴木部長が向き合ったのは、日本産の果物を中心に扱い、ハロッズとの交渉を手がけた「アバンチ・アジア」(ロンドン)のゲイリー・ファンさん(39)。日本貿易振興機構(ジェトロ)の協力を受け、英国でクラウンメロンの魅力を発信するために産地の視察に訪れた。
 クラウンメロンはハロッズが扱う他の製品と比較しても、見劣りしない「高級品」。手に取ってもらうには、コンセプトや他の果実との違いを明確にする必要がある。ファンさんはハウス内を見学し、値段の理由を取材。鈴木部長が、糖度や肉質など厳しい品質基準をクリアするため徹底した管理で生育していることを自信を持って説明した。
 ファンさんは「高品質な理由と価値を知ることができた。英国の高級ホテルなどにも売り込んで販路を拡大し、最終的には王室で食べてもらうことを目標にしたい」と手応えを語った。
 4月下旬、ハロッズの店頭にクラウンメロンが並んだ。1玉150ポンド(日本円で約3万円)。「高級果実」は英国では日本ほどなじみがなく、挑戦的な価格設定だったが、売れ行きは好調。ジェトロによると、現地の試食コーナーでは、「口の中で、こんなに甘さが続くメロンは初めて」などと驚く声も聞かれた。
 一方、英国でのクラウンメロンの浸透は道半ば。ジェトロ浜松の永盛明洋所長は「高価でも自信を持って売り出せるブランド力がある。日本の果実の代表格として生育技術の高さを発信し、他の果実の販路拡大にもつながる成功事例となれば」と期待を寄せた。
 (袋井支局・北井寛人)

いい茶0

経済しずおかの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞