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社説(2月16日)続く人口流出 「住んでよし」の実感を

 総務省が公表した2023年の人口移動報告によると、東京都は転入者が転出者を上回る「転入超過」が6万8285人を数え、22年の80%増になった。新型コロナウイルス感染症が拡大していた21年は超過数が5千人台にまで落ちていたが、東京一極集中が再び加速した。
 一方で、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)と大阪、福岡などを除く40道府県では転出が転入を上回る「転出超過」となった。静岡県も6154人の転出超過。超過数は22年の3割増で、都道府県で多い方から7番目となる。
 政府は長年、少子化対策に取り組んできたが、出生数の減少は止まらない。こうした自然減に加えて地方では進学や就職などで若者が流出する社会減が追い打ちをかける。今のところ、この流れを止める有効な手だてがないのが現状だといえよう。
 ただ、対策を講じなければ地域の担い手が減少し続け、活力も失われる恐れがある。家族移住の促進や地場企業の振興など、小規模なことでも地域の活力維持へ、できることを積み重ねるしかない。
 その意味で「住んでよし」が一番だ。まずは住む人の幸福感向上は欠かせない。そうした視点で地域づくりを磨き上げたい。温暖な静岡の沿岸部は雪国のように雪かきをする必要がない。冬季でも農業ができる。もとより海から山まで自然は豊か。このような優位性はぜひ生かしたい。
 工場誘致や産業振興で移住人口を増やすのは理想的といえるが、ブレークスルーといえる新製品や新サービスがなく、イノベーションもない中では、今や夢物語とみていいだろう。国策による半導体工場建設で活気づく北海道や熊本など一部に限られる。
 定住人口が増えなくても交流人口や関係人口を増やすという視点もある。絶えず人が行き来することで活力を維持していきたい。新型コロナで職場に行かなくても仕事ができるリモートワークが進んだことで、仕事と休暇を融合した「ワーケーション」の土壌も整ってきている。持続可能という観点を重視しながら地域づくりを展開したい。
 静岡県からの転出で最も多い年齢区分は男女とも20~24歳で、ここだけで男性の23・4%、女性の26・0%を占める。やはり進学や就職で故郷を出る若者が多いとみられる。子育て世代なども含めた15~39歳の転出者は、男女とも全体の7割ほどに膨らむ。
 逆に50歳以上は転入超過に転じる。今では60~70代でも元気な人が多い。この世代を積極的に社会経済活動に参画させれば地域の活力を高めることができるはずだ。静岡に住んでくれる人に生きがいを与える施策を望みたい。

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