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社説(2月14日)24年度県予算案 「選ばれる県」へ総力を

 静岡県が発表した2024年度当初予算案は「能登半島地震を教訓とした地震対応」「イノベーション」「子ども・子育て」「スポーツの総合産業化」を柱に掲げた。本県は少子高齢化と人口流出に歯止めがかからず、地域の活力を将来にわたって維持するのが難しい状況だ。人口減少社会への対応に向け、暮らしの不安を解消すると同時に、戦略的に人を呼び込む「選ばれる県」になるための施策で成果を上げなければならない。予算案は一定の手当てをしたが、その効果を測りつつ、さらなる工夫と拡充が必要だ。
 予算案の柱のうち、子ども・子育てには総額922億円を充てた。中小企業で働く男性への育児休業支援金を国に先駆けて実施し、保険適用外の不妊治療費の補助、不登校の子どもが通うフリースクールの運営費支援なども新規で盛り込んだことは評価できる。子育て世代や若者が安心して学び、働き、暮らせるよう環境を整えることは、本県の発展に欠かせない。
 本県は07年をピークに人口減少の局面に入り、23年1月時点で357万人と約40年前の水準まで減った。当時と比べ生産年齢人口の割合は小さく、社会経済活動への影響は深刻だ。人手不足は回復を急ぐ県内経済の足かせとなり、今後あらゆる分野で人材確保が重要な課題となる。
 いま県民の生活は切実だ。23年の県政世論調査で暮らし向きが「苦しくなっている」と答えた人は調査開始の1980年以降初めて5割を超えた。物価高に直面する生活者、事業者の実感に見合った支援や、賃金を含め魅力ある働く場の確保、その雇用を創出する産業の育成が求められている。本県は関係者の努力もあって移住希望先としてトップクラスにあり、立地優位性などのポテンシャルを維持できているうちに、人口定着に向けた布石を打たねばならない。
 本県はこれまでも最優先で防災・減災対策に取り組んできた。着実に遂行するとともに、元日の能登半島地震で何を教訓とし、県内でどの対策を急ぎ講じなければならないか明らかにすべきである。
 2024年度当初予算案の一般会計は4年連続で1兆3千億円台を計上した。企業業績の回復で税収が伸び、自主財源は令和に入り初めて歳入全体の6割を超えた。県の借金である県債の発行は抑制し、県債残高も減少した。
 一見、堅調にみえる財政運営だが、予算編成にあたり財源不足額は2年連続で500億円を超えた。基金を取り崩して賄う。税収増とはいえ社会保障費は年々増大し、財政状況は予断を許さない。不断の行財政改革に取り組む必要は言うまでもない。

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