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社説(5月1日)春のお茶まつり 観光との協働を活路に

 第8回世界お茶まつりが15日までの日程できょう、開幕する。静岡県と外郭団体の世界緑茶協会などが、生産も流通も日本一の本県から茶の魅力を世界へ発信しようと3年に1度、開催している。
 世界の茶マーケット拡大を見据えて「シズオカ」を売り込もうと2001年秋に初開催した所期の目標にどこまで近づけたか、そろそろ検証が必要だ。
 第5回(13年)からは新茶期の春と、行楽シーズンの秋に主会場を定めて開いてきた。しかし、今回は新型コロナウイルス対策から実施方法を見直した。図らずも検証の機会になった。
 中心会場でのイベントに代え、県内各地の茶体験施設や茶問屋直営の日本茶カフェなどがそれぞれ新茶フェアを展開する「分散開催」となった。期間は、前回までの3~4日間を15日間にし、「春の祭典」を「春のお茶まつりウィーク」と改称した。
 茶畑が最も美しいこの時季に茶どころを探訪し、回遊してもらう観光や行楽の要素を強調した点に注目したい。
 大々的にイベントを開催しなくても、各施設、各店のもてなしが来訪者に伝わり、常連になってもらえれば活路が開ける。消費者ファーストこそ「茶の都」の神髄として臨んでほしい。
 茶業と観光を組み合わせる試みは、茶摘み体験や茶畑ウオークなどが行われてきたが、ビジネスとして確立させ、持続化するには工夫が必要だ。
 今回は私鉄5社(伊豆箱根鉄道、岳南電車、静岡鉄道、大井川鉄道、天竜浜名湖鉄道)との協働を試みる。各社は新茶サービスをしたり、車内で茶の入れ方教室を実施したりする。反応が良ければ、まつり後も継続して沿線の茶業を応援してほしい。
 コロナ禍で在宅時間が増え、急須で入れる葉の茶や高級ティーバッグの需要が喚起されたという。健康志向の高まりや食品加工用の抹茶需要増で輸出が順調に伸びるなど、海外市場が有望であることは共通認識になった。
 これらを追い風にしたうえで、茶どころでは日常の一杯や見慣れた風景が、磨けば光る地域資源であることに気付くことが大切だ。
 交流サイト(SNS)などで、眺めのいい茶畑にしつらえたテラスで非日常的な喫茶が楽しめる「茶の間」の企画が話題だ。スタートアップ企業「アオビート」(静岡市)が県内7カ所で展開。目の前の茶畑で栽培された茶を味わうことができるテラスもある。
 非日常の喫茶体験はお茶ファン拡大に有効だが、それは茶室でなくてもいい。コロナ後へ、楽しさ、気軽さの仕掛けとデジタル活用を加速したい。

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