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ご存知ですか「#逃げ活」。学校や職場のいじめ、悩みに寄り添い、心穏やかに「生きる」ための「逃げ」を啓発

夏休みなど「長期の休み明け」は悩みや生きづらさを抱える人が多い

薮田さん(中央左)、乗松さん(中央右)

皆さんは「#逃げ活」という言葉を知っていますか。学校や職場での人間関係の悩みから「逃げることは悪いことじゃない」「格好悪いことじゃない」という考えが広まりつつあります。

そして今、生きるための手段として逃げることの大切さを伝える「#逃げ活〜こころの逃げ場、ここにあるよ〜」と題した啓発活動が進められています。

この活動について、静岡市こころの健康センター精神保健福祉士 薮田尚二郎さんと公認心理師 乗松彩乃さんに「鉄崎幹人のWASABI」パーソナリティーの鉄崎幹人、SBSアナウンサーの堀葵衣が話を聞きました。

堀:9月は長い夏休みが終わり、自分を追い詰めてしまう人が多い傾向はありますか。

薮田:4月に新生活が始まり、緊張や不安の中、新しい環境に慣れようと頑張って、やっとの思いで夏休みを迎えてほっとした児童や学生が多いと思います。休みが終わり「さぁ、また頑張ろう」と思える子がいる一方で、「憂鬱だな」「学校に行くのが辛い」と感じる人が多いのも事実です。

2人に1人は「死にたい」気持ちを抱いた経験あり

鉄崎:いじめがあったりすると行きたくないと思うよね。悲しい話ですが、先日も悲惨な事件がありましたね。

薮田:最近の調査では、子どもの2人に1人が「死にたい」という気持ちを抱いたことがあるという驚きの結果もあるんです。これは決して子どもに限ったことではなく、大人でも長い休み明けに仕事に行くのが辛くなったり憂鬱になったりした経験がある人もいるかと思います。

堀:2人に1人か...。

薮田:「死にたい」とまでは考えなくても「どこか遠くに行きたい」「消えてしまいたい」「明日が来なければいい」と考えたことがある人は少なくないと思います。

鉄崎:僕も15歳の頃はそんなようなことを思っていました。

逃げることは「恥ずかしく」て「良くない」こと?

画像提供:静岡市こころの健康センター

堀:「#逃げ活〜こころの逃げ場、ここにあるよ〜」は、どんな活動ですか。

乗松:いのち支える自殺対策推進センターが企画した啓発活動になります。ストレスや困難に追い込まれる前に「逃げることを後押しする」ために始まり、静岡市こころの健康センターでも取り組んでいます。

今を生きるために「逃げてもいいんだよ」というメッセージを届けるプロジェクトとして、具体的には「逃げる」に関する4つのテーマに沿ったエピソードや気持ちを付せんに書き出して、専用の台紙に貼るという取り組みを行っています。

#逃げてよかった体験談

例えば「#逃げてよかった体験談」というテーマでは「SNSがしんどいので見るのをやめた」「しんどかったから習い事を休んだ」などを書いてもらいます。

#〇〇から逃げたい

鉄崎:2つ目のテーマ「#〇〇から逃げたい」はどんな内容が挙げられますか。

乗松:「学校から逃げたい」や「過去の自分から逃げたい」、「怒られることから逃げたい」と書く人もいるかもしれませんね。

#逃げたいきもちを吐き出そう

鉄崎:3つ目の「#逃げたいきもちを吐き出そう」は?

乗松:自分の心の声に注目して、例えば「学校に行きたくない」「もう怒られたくない」「知っている人がいないところに行きたい」など自分の気持ちを書いてもらいます。

#逃げたいときのやり過ごし方

鉄崎:4つ目の「#逃げたいときのやり過ごし方」はどうでしょう。

乗松:自身が安心する方法や、逃げたい自分を支えてくれる項目を書きます。例えば「好きな音楽を聴く」「バラエティー番組を見る」「好きな本を読む」「人と話す」などが書かれるかなと思います。

鉄崎:なるほどね〜。僕は「逃げないことが美学」という世代なので、格好つけているわけではないですが書きだしたいことが1つもありません。

堀:えぇ〜!! そうなんですか?びっくり。

鉄崎:高校で留年した時は1学年下と一緒はいやだと思っていたけど、今思えば高校を4年通って良かった、逃げずに卒業できて良かったと思います。今の仕事も逃げてしまったら代役がいない。時代の違いもあると思うけど堀ちゃんはどう?

堀:私は朝から逃げたいです。目覚まし時計からも逃げたい(笑)。

逃げたいことを見える化して心の不安を少なくする

画像提供:静岡市こころの健康センター

鉄崎:ちなみに逃げたいと思っていることや自分の気持ちを見える化することは、どんな効果がありますか。

乗松:書いたものを見ることで自分がどんな気持ちを抱えているのか心の声が目に見える状態になります。ほかの人が書いたものを見ることで悩んでいるのは自分だけじゃないんだと安心できたり、こんな方法もあるのかとストレスへの対処を知ることができます。

逃げることへのネガティブなイメージを変えてもらい、しなやかに生きるヒントを見つけてもらう効果を期待しています。

堀:自分の心を健康に保つためにほかにどんなことを心がけたらいいですか。

薮田:まずは自分の素直な気持ちに気づくことです。そして気持ちが楽になる自分なりの方法を試すことです。

好きなものを食べる、好きな動画を見る、音楽を聴く、本を読む、寝るなどもいいですね。生活の中の少しの工夫で心が楽になることを試してほしいです。

それでも心が苦しい時は、ぜひ周囲の大人に相談してください。1人の大人に話してもだめな時は、3人に相談すれば1人は話を聞いてもらえる人に出会えると言われています。諦めずに相談してください。

心の不調を示すSOSのサインは?


鉄崎:子どもがどんな悩みを抱えているのか分からないという保護者へのアドバイスはありますか。

薮田:無理に聞き出す必要はありません。気にかけて大事に思っていること、問題を抱えた時はいつでも話を聞く準備があることを日頃から伝えることが大事です。

心の不調を示すサインとして「遊びやゲームなど関心のあったことに興味を示さなくなる」「成績が急に落ちてしまう」「集中力が落ちる」「身だしなみを気にしなくなる」「友達を避ける」ということがあれば心のSOSのサインです。

堀:#逃げ活ツールキットはどこで手にすることができますか。

薮田:いのちを支える自殺対策推進センターのホームページで申請するとダウンロードができます。基本的には公共機関や団体向けに配布しています。ホームページでは#逃げ活について詳しく書いているのでぜひ読んでください。

心の相談は「てるてる・ハート」や「うちあけダイヤル」へ

堀:静岡市こころの健康センターでは相談窓口も開いているんですよね?

乗松:専門職員が対応しています。電話番号は054-262-3011。予約制で月、木、金曜日の午前中に受け付けています。

また静岡市ではメンタルヘルスに関する電話相談専用ダイヤル「てるてる・ハート」を運営しています。電話番号は054-262-3033。こちらは祝日・年末年始を除く平日午後1時〜4時で受け付けています。

そして、静岡県が県内在住の39歳以下の若者を対象に「うちあけダイヤル」を開設し、ラインや電話で相談ができます。詳細は「うちあけダイヤル」で検索してください。

鉄崎:最後にラジオを聴いている皆さんにメッセージをお願いします。

薮田:ぜひこの放送をきっかけに家族や友達、身近な人と、つらい時の上手な逃げ方や対処法について話してもらえたらいいなと思います。「自分だけじゃないんだ、大人もそうなんだ」と新しい発見がきっとあるはずです。そして逃げることは悪いことじゃないと思ってもらえたらうれしいです。

※2024年9月2日にSBSラジオWASABIで放送したものを編集しています。

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