語り:春風亭昇太

静岡にお茶を伝えた聖一国師が生まれた静岡市葵区大川地区。大川地区にある「坂ノ上薬師堂(さかのかみやくしどう)」に歴史的価値のある仏像が残されています。
山里ながら藁科川沿いに平野が広がる大川地区。坂ノ上集落の真ん中あたりの小高い場所に薬師堂があります。この薬師堂には、平安時代に製作された仏像の数々が安置されています。
静岡市内に残る仏像の中でも、特に古い時代のもので、作風が似ていることから、同じ時期に同じ環境で作られたと見られています。
カヤで作られたものとヒノキで作られたものがあるのは、平安時代のこの時期に、材料の主流がカヤからヒノキに転換した事を示していると考えられます。仏像に混じって神像もあり、神仏習合や、山岳信仰など、多様な信仰がこの地にあったことがうかがえます。
12 世紀の作と見られる薬師如来像は、一本の木から作られる一木造り。古風ながら、当時の京都や奈良の仏像に通じる作風が静岡の山間の地にあっても、中央と密接に関係していたことを物語っています。
この薬師如来は、目の神様として厚く信仰されてきました。坂ノ上薬師堂に残る、16 体の像。平安時代中期から後期の静岡での仏像制作の歴史を語る貴重な遺産となっています。
静岡市歴史めぐり まち噺し 今日のお噺しはこれにて。