
宇津ノ谷峠と明治トンネルを訪ねる
語り:春風亭昇太

宇津ノ谷から藤枝へとつながる古道「蔦の細道」。「行き行きて駿河の国に至りぬ。宇津の山に至りて、わが入らむとする道はいと暗う細きに、つた、かへでは茂り、もの心細く…」平安時代に書かれた「伊勢物語」にも登場する宇津ノ谷峠越えのこの山道は、旅人にとって大変な難所でした。
16世紀に入ると、豊臣秀吉が新しい峠越えの道を整備し、それが江戸時代には「東海道」となりました。それでも、宇津ノ谷峠を越える峠道には危険な場所が多く、難所であることに変わりはありませんでした。
そこで明治になって、宇津ノ谷峠を貫くトンネルが掘られることになりました。およそ2年をかけて、明治9年にトンネルは完成し、道を照らす50ものカンテラがかけられました。
明治29年に発生した火災ののちに内壁を耐火性のある赤レンガで覆う形で修復され、その姿を今に残しています。その後、宇津ノ谷には、大正、昭和、平成の各時代にトンネルが掘られ、このトンネルは、明治トンネルと呼ばれるようになりました。
明治トンネル、正式名称「明治宇津ノ谷隧道」の全長は203メートル。平成9年、現役のトンネルとしては日本で初めて、国の登録有形文化財に指定されました。蔦の細道の足元に、明治、大正、昭和、平成、四つの時代のトンネルが並ぶ宇津ノ谷には、道の歴史が集約されています。
静岡市歴史めぐり まち噺し 今日のお噺しはこれにて。
静岡市の観光親善大使でもある春風亭昇太師匠の語りで、歴史や文化、特産品など、静岡市の魅力を紹介するミニ番組です。(毎週日曜日ひる12時54分放送)