
システムは避難者などの放射能汚染を調べる「避難退域時検査場所」や、避難所の事前案内場所となる「避難経由所」など避難の中継地点での受付を省力化し、避難所を割り振るための情報として活用する。避難者が自身の情報をウェブから登録する。半径31キロ圏にある9市町の広域避難を想定した2月の訓練では、住民が移動中のバス車内で名前や居住地区を入力。行政はシステムを通じて避難者の移動履歴や検査状況を一元的に把握した。
藤枝市は、3月に市独自の原子力防災訓練でもシステムを利用した。参加者46人のうち個人情報を登録できたのは13人のみ。登録フォームに誘導するメールが迷惑メールとして処理されるなどして参加者に届かない、自身のメールアドレスが分からないなどの事例が相次いだ。同市の担当者は「システムは非常に有用だが、誰でも登録できるよう操作方法を簡略化し、スムーズに手続きできるよう模索してほしい」と求めた。
静岡新聞社が浜岡原発の半径31キロ圏にある11市町の首長を対象に実施したアンケートでも、システムの実効性を疑問視する市町が相次いだ。島田市は「平時からのシステムの周知が必要」と回答。袋井市は「個人情報の漏えいに注意が必要」と指摘した。
県によると災害発生後、システムへの登録方法を緊急速報メールに記載し、個人情報入力を求める想定。県原子力安全対策課の神村典浩課長は「訓練を重ねて実効性を検証し、必要に応じて機能や運用を改善したい」と話した。