津波避難施設の「圧迫感」 静岡文化芸術大が実証実験、課題探る 他人とすぐ隣/寝られない…訓練で滞在想定を

避難空間の圧迫感を体感する学生ら=3月下旬、浜松市中央区 津波から命を守る避難タワーや避難ビルなどの緊急避難場所は適切なスペースを確保しているのか-。災害研究が専門の静岡文化芸術大の内尾太一准教授とゼミ生が8日までに、避難空間の圧迫感による心理的・物理的な課題を探る実証実験を浜松市内で行った。内尾准教授は「窮屈な空間で長期間過ごす可能性もある。避難して完結ではなく、そこから長い戦いが始まる」と指摘する。
 「知らない人がこんなに近いのは無理」「狭くて寝られない」。3月下旬、浜松市中央区の津波避難タワー。屋上に一人用の避難スペースを再現した0・5~1平方メートルのレジャーシートで着座やあおむけになった学生たちは口々に感想を漏らした。
 シートにリュックサックを抱えて座ると、ほとんど身動きが取れなくなり、窮屈さと見知らぬ他人とすぐ隣で過ごす心的負担を体感。4年の渥美開登さん(21)は「体格や気候条件によって適切な広さを柔軟に考える必要がありそう」と話した。
 消防庁によると、津波緊急避難場所の収容スペースは1人当たり1平方メートル以上が望ましいとされる。内尾准教授は、津波発生時に避難が求められる市内沿岸部各町字の人口と津波緊急避難場所の合計面積から「津波避難収容指標」を作成し、ホームページで公表。市内の避難場所のほとんどは1人当たり面積が1平方メートル以下だった。
 大津波・津波警報の発令後は、速やかに津波緊急避難場所などの高台に避難し、解除まで待機する必要がある。東日本大震災では、警報の解除に1日以上を要する地域もあった。
 内尾准教授は「無事に避難した場合でも、避難所によっては窮屈な空間で長期間過ごすことになる。訓練も指定された場所に到着して完結するものではない」と、逃げた後の滞在を体験するなど訓練内容の見直しの必要性を指摘した。

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