
本来は廃棄されるはずだった原料から、アロマオイルを作っている女性がいます。アロマを通じて地元の魅力を発信し、人や地域をつないでいく。静岡県島田市発のアロマブランドの取り組みです。
島田市でアロマオイルの製造・販売を手掛けている希代智子さん。2021年にアロマブランド「銀の山」を立ち上げ、地元の原料にこだわったアロマオイルを10種類以上展開しています。
希代さんのアロマは、ヒノキの廃材やクロモジなど、廃棄原料を活用して作っていることが特徴です。
<銀の山 希代智子さん>
「甘夏のミカンの皮をむいています。農家さんの方で商用にならない販売できない、傷とか汚れが合ったりするミカンになります。普通だったら捨てられてしまうミカン」
原料は蒸留機に入れて沸騰させた蒸気で熱し、香り成分を抽出します。
<希代さん>
「上がアロマのエッセンシャルオイル=精油、下が芳香蒸留水がとれています」
100ミリリットルのオイルを抽出するには、約70キロもの甘夏が必要です。島田市の大宮さんの畑では、年間で約3000キロの甘夏が収穫できます。しかし、その1割ほどが傷や痛みなどで売り物にならず、廃棄に回っていました。
<エフエフランドアグリ静岡 大宮直子さん>
「生産者が気持ちを込めて一生懸命作ったものが、どうしてもやっぱり廃棄するものってどうしても出てしまうので、そこを有効に活用してもらうというのは、私たちもミカンもきっとうれしいんじゃないかな」
希代さんは、アロマの活動を通して地域とのつながりも強くなったと話します。
<希代さん>
「お仕事ですけど、その都度両親のことを話したり、子どものことも話したり。本当に貴重な出会いがここにありました」
希代さんの活動はさまざまな場所で広がりを見せています。浜松市のホテルでは6月からホテル内にアロマコーナーを設置することを決め、そこに希代さんが作るアロマを採用しました。
アロマコーナーでは3種類が用意され、気に入った香りを紙につけ部屋に持ち込み楽しむことができます。希代さんと浜松の植木店がタッグを組んで誕生した、剪定作業で出た松の枝を使ったアロマも並びます。
<ホテルコンコルド浜松 疋田舞雛さん>
「このアロマの香りというのは浜松を意識した暖かい香りをイメージして作っているので、(アロマをつけた)紙自体も持って帰っていただくことができますので、ふとした時にその香りが香ってきて、浜松のことを思っていただければいいなと思う」
<希代さん>
「昔の記憶って意外と香りとともに湧き出てくると思うので、この香りを嗅いだ時に、静岡を思い出してくれたり、島田を思い出してくれたりするというきっかけが、このアロマになってくれればいいなと思っています」
“地域の宝”を余すことなく生かしたい。この思いを大切にして希代さんは活動を続けます。
ホテルコンコルド浜松のアロマコーナーは、6月2日からサービスが始まります。松を原料にした2種類のアロマと、ホテルのオリジナルアロマ1種類が楽しめるということです。