テーマ : 新商品・新技術

廃棄物を炭化 土壌改良剤に 静岡県内で実証実験スタート

 名古屋大発のベンチャーが静岡県信連や静岡県内JAと連携し、農業で出た廃棄物を炭化して微生物を定着させた土壌改良剤「高機能バイオ炭」を農地に散布する実証実験に乗り出した。磐田市内を皮切りに県内での実験がスタート。作物の収量増加や化学肥料軽減に加え、炭化による二酸化炭素(CO2)排出抑制の効果が期待される。有効性を確認し、県内各地への展開を図る。

高機能バイオ炭を散布する実証実験が行われたキャベツ畑=8月上旬、磐田市
高機能バイオ炭を散布する実証実験が行われたキャベツ畑=8月上旬、磐田市


 第1弾の散布が行われたのは、上村農園(磐田市豊田)のキャベツ畑。50ヘクタールのうち10アールに、750キロのバイオ炭を散布し、トラクターで丁寧にならした。同園の上村遊輝さん(37)は「砂質の畑で土壌が乾きやすいため、肥料の抜けが早い。何度も追肥している」と現状を説明。「肥料の効果が長く保たれる炭を入れることでキャベツが健全に育つのでは」と期待する。
 バイオ炭を開発したのは、人工土壌などを手がけるTOWING(トーイング、名古屋市)。もみ殻や植物残さなどの廃棄物はそのまま農地に投入すると、微生物が分解の際にCO2を大気中に放出するが、炭にして投入することで土壌に炭素を固定できる。炭の中に培養した微生物の働きで、通常3~5年かかる土壌作りをわずか1カ月ほどに短縮することも可能という。実験用バイオ炭は、同社が無償提供した。
 磐田市に次いで、三島市のセロリ畑でも試験散布した。農作物や気象条件などの違いに応じた機能性を確かめる。同社事業開発部の阿部浩人西日本営業本部長は「新しい資材を使うことに対し、生産者の心理的ハードルが高い。安心して使っていただくための入り口にしたい」と強調。県内JAや産廃業者などにバイオ炭の製法を普及させ、利用拡大を目指す。県信連の担当者は「農業廃棄物を地元で有効活用する仕組みにつなげたい」としている。
 (磐田支局・崎山美穂)

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