ファミリーアニメの新定番!? 家族で観たい「泣ける」アニメ映画3選
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は「家族で観たい、泣けるアニメ映画」についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
キッズ向けで泣けるというと『ドラえもん のび太の恐竜』『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』など古い定番があがりがちですが、それだと新しい作品に光が当たらないので、今回はここ10年ぐらいの範囲であげていこうと思います。
どっちを選ぶ?父ちゃん vs ロボ父ちゃん
まず1本目は『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(2014)。監督は『クレヨンしんちゃん』などに関わり、本作で映画の監督を初めて担当した高橋渉さん。物語はマッサージに行った父のヒロシがロボットになって帰ってくるところから始まります。ロボットになったヒロシは、リモコン一つで何でもやってくれて、しかも命令をただ聞くだけじゃなくて、ちゃんと“ヒロシらしく”やってくれるんです。
だから、みんな大喜び。ところが、実はこれは「父ゆれ同盟」という、父権の回復を目指す組織の陰謀だったんです。この悪い組織を巡ってのドタバタに野原一家が巻き込まれ、その企みを潰すというおなじみの展開ですが、一方で、このロボ父ちゃんと本物のヒロシと、どっちが嬉しいかという話が出てくるわけです。
本当のヒロシがいいに決まっているわけですが、ロボ父ちゃんと過ごした日々が嘘だったのかということにも決着をつけないといけない。一歩間違うと、ただかわいそうなだけのキャラになったり、「主人公補正」が働いてるように見えてしまうんですが、そこをうまく工夫して感動的なラストにもっていっています。
種族を超えた愛情はどう成立するのか
2本目は『おまえ うまそうだな』(2010)。宮西達也さんの絵本シリーズ『ティラノサウルスシリーズ』の作品です。マイアサウラという草食恐竜のお母さんが、ある日、ティラノサウルスの卵を拾います。ハートという名前をつけて育てるのですが、ある日彼は自分が兄弟と違うのがわかって飛び出してしまいます。
やがて大人になったそのティラノサウルス・ハートは、ある日アンキロサウルスという草食恐竜の卵を拾って、その子を育てることになります。
つまり、草食恐竜に育てられたティラノサウルスが草食恐竜の子どもを育てるという話になっているんですね。違う種族の間でどういう形で愛情が成立するのか……子どもが見てもいい映画ですし、大人が見ると別の深さがありますね。
監督は『忍たま乱太郎』のキャラクターデザインや、最近では『REVENGER』を監督した藤森雅也さんで、映画初監督作になります。
すみっコたちが出会うひよこの秘密は?
3本目は『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』(2019)。アニメーション監督のまんきゅうさんが監督をしています。すみっコぐらしのキャラクターたちが登場するお話なんですが、アニメ化されたからといって、すみっコたちはしゃべりません。井ノ原快彦さんと本上まなみさんのダブルナレーションで、読み聞かせのような形で展開します。
すみっコぐらしの映画の1本目なんですが、すみっコたちは、いつも行く「喫茶すみっコ」の地下で不思議な絵本を見つけて、その絵本の中に吸い込まれます。アラビアンナイト風だったり、桃太郎風だったり、いろんなページがあるんですが、その中で迷子のひよこと出会います。このひよこを元のページへ帰してあげて、自分たちも現実へ帰ろうというストーリーです。
ページが変わるたびに世界観が変わる背景美術も本作の面白さですが、ここでの泣けるポイントはひよこの居場所という、この旅のオチの付け方です。
それはつまり、ずっと一緒に旅をしてきたひよことすみっコたちとの関係性ということにもなります。当時ネットでもめちゃくちゃバズり、ラストは本当に泣けると話題になっていました。おすすめの作品です。
(SBSラジオ 2023年8月7日放送)
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