国内外のアニメの“いま”がわかる!アニメーション映画祭について
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回はアニメーション映画祭についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
歴史ある4大アニメーション映画祭
国際アニメーション映画協会(ASIFA)という団体があり、ここの公認・パートナーシップの関係にあるアニメーション映画祭のうち、特に大きなもの4つが「4大アニメーション映画祭」と呼ばれています。1つ目が、毎年6月に開催される「アヌシー国際アニメーション映画祭」。1960年代から続く歴史ある映画祭で、世界で一番大きいアニメーション映画祭でもあります。世界のアニメ関係者はここを見て仕事をしているという感じです。クリエイターだけでなく、ビジネス関係者も多く集まります。
2つ目がクロアチアの「ザグレブ国際アニメーション映画祭」。クロアチアということでちょっと意外に感じる方もいるかもしれませんが、東ヨーロッパはアート系の作品を手掛ける作家を多く輩出する土地柄なので、映画祭があることもとても自然ななりゆきだと思います。
3つ目がカナダの「オタワ国際アニメーション映画祭」。カナダにはNFB(カナダ国立映画庁)という役所があり、ここには様々なアニメーション作家も所属しています。そういう文化が背景にあり、割と尖った実験映像みたいなものも取り上げる傾向のある、ちょっと攻めた個性派のアニメーション映画祭です。
4つ目が1985年から2020年まであった「広島国際アニメーションフェスティバル」です。隔年開催で18回にわたって開催されていたのですが、2020年に終了となりました。2022年からは「ひろしまアニメーションシーズン」という形に変わり、実質映画祭のような展開を再開したのですが、こちらはASIFAの公認ではなく、現在は4大アニメーション映画祭のうちの1つがなくなっている状態です。
日本国内の映画祭も充実
国内のアニメーション映画祭に目を転じると、3月20日まで行われていた「新潟国際アニメーション映画祭」は、去年から新しく始まった映画祭でまだ2回目。ASIFA公認ではありませんが、長編アニメーションに特化しているのが特徴です。40分以上の作品が対象のコンペティション部門では、今回は日本の2作品(『アリスとテレスのまぼろし工場』『クラユカバ』)を含む12作品がノミネートされました。『アリスとテレスのまぼろし工場』は昨年公開された岡田麿里監督作品で、『クラユカバ』は4月12日から公開になる60分の映画です。『クラユカバ』は大正ロマンを感じさせる戦前の東京が舞台。その地下に広がる奇妙な世界の様子を描く、すごく雰囲気のある映画です。
アイルランドのスタジオ・カートゥーン・サルーンのノラ・トゥーミー監督が審査員長を務め、グランプリを獲得したのはカナダのジョエル・ヴォードロイユ監督の『アダムが変わるとき』でした。これはイケてない15歳のアダムの複雑な日常と、その変化を描いた作品です。
コンペティション以外にも「世界の潮流」と題して世界のアニメのトレンドを紹介する趣旨での上映があったり、目覚ましい活躍をした国内のスタッフやスタジオに贈られる大川博賞と蕗谷虹児賞という賞もあります。第2回なんですが、アニメーション映画祭で必要なものはほぼ全部揃っている感じです。
他にも11月に開かれる「新千歳空港国際アニメーション映画祭」というものがあります。新千歳空港にはホテルとシネコンがくっついているので、「空港内で完結する映画祭」というユニークなもの。こちらの映画祭は2014年から10年間ぐらいやっているのですが、短編と長編のコンペがあるだけでなく、いわゆるアート系(個人作家の短編)や商業系(テレビや映画館などで流れるもの)も、取り上げています。映画祭ではありますが、TVアニメなどジャンルにとらわれず広くアニメーションを扱っているので、すごく自由な雰囲気のある映画祭だと思います。
東京では先日「東京アニメーションアワードフェスティバル(TAAF)」が行われました。こちらは、まず国内作品を中心に「アニメ オブ ザ イヤー」を決めています。ファン投票でベスト100を決めて、その100作品のリストをもとにクリエイターや、アニメショップの関係者など、いわゆる業界の人が投票し作品賞と個人賞を選びます。それとは別に海外長編も公募してコンペも行っています。短編も長編もレベルが高い作品がぎゅっと濃縮されて紹介されるイベントです。
このほかにも国内では、もっと小さいアニメーション映画祭もありますが、世界各地からゲストを呼んだりしている映画祭だと、いまご紹介した4つが代表的なものかなと思います。
映画祭は、世界にはいろんなアニメがあって、いろんなおもしろさがあることがわかるので、とても楽しいです。国内外の有名ゲストがトークなどを行うのも、興味深いです。機会があればぜひ、アニメーション映画祭に足を運んでみてください。
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