第36回東京国際映画祭が開幕!アニメーション部門で海外からやってきた5作品を紹介
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は10月23日から始まった東京国際映画祭のアニメーション部門についてご紹介いただきました。※以下語り、藤津亮太さん
10月23日~11月1日に開催される第36回東京国際映画祭
僕は2020年から東京国際映画祭アニメーション部門のプログラミングアドバイザーという形で関わっているのですが、実は今年からアニメーション部門の内容ががらっと変わりました。2020年から2022年まではジャパニーズ・アニメーション部門として日本のアニメを取り上げており、「東京から日本のアニメの今をお届けする」というコンセプトでやっていたのですが、今回はアニメ部門にも海外作品を入れることになりました。上映される12枠のうち、新作を扱う「ビジョンの交差点」では、9本のうち5本が海外作品です。
日本の最新作は『かがみの孤城』(2022)、『BLUE GIANT』(2023)のほか、同タイミングで公開になる『北極百貨店のコンシェルジュさん』(10月20日公開)、11月公開の『駒田蒸留所へようこそ』(11月10日公開)が並んでいます。海外作品はなじみが少ないので、簡単に紹介しましょう。
海外からやってきた5作品をご紹介
『アートカレッジ1994』(2023)、1994年の中国の話です。開放政策が行われる中、アートという“役に立たないもの”をやっていく美大生たちの青春の迷いや恋などが描かれている青春ものです。これはすごく面白い独特な作品です。日本の青春アニメを見ている人なら違和感なく見れると思いますよ。次に『深海レストラン』(2023)。『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』(2015)という中国で大ヒットしたCGアニメを手がけた監督の最新作です。家の中で孤立している女の子が海に落ちて、海底のレストランで働くことになる、異世界へ行く『千と千尋の神隠し』みたいな話です。中国のCGアニメなのですが、強いビジュアルも多く、非常にレベルが高いです。
ここからはヨーロッパの作品です。『リンダはチキンがたべたい!』(2024年公開予定)、これは今年のアヌシー国際アニメーション映画祭(世界で一番大きいアニメーション専門の映画祭)グランプリの作品です。フランスですべての産業がストを起こす日に、チキンを食べる約束をしていたリンダとお母さん。2人はその直前にケンカをしていたので仲直りのためにこの約束はどうしても守りたい。チキンを手に入れるために母と娘がどうするかというストーリー。ちょっとシリアスなところから始まるのですが、だんだんとコミカルになります。筆を使って描いたようなドローイングの線に大胆な色使いの絵柄もすごく魅力的です。
それから立体アニメーション、人形アニメで『トニーとシェリーと魔法の光』(2023)があります。コマ撮りで人形を撮っているのですが、体が光る特殊体質の男の子と、お母さんとの間に問題を抱えている女の子が主人公。少し重そうな話なのですが、なんせ人形がかわいい。男の子が電球みたいに全身が光っているので絵面としてかわいいんですよね。この二人がアパートに出る黒いもやの謎を探るという話で、ファンタジックな要素と、 親の問題と立ち向かうという要素があり、深いテーマ性がある作品です。
最後に紹介するのは『ロボット・ドリームズ』(2024年公開予定)。これは音楽や効果音のみでセリフはありません。擬人化された犬が友達のロボットと離れ離れになってしまうお話。絵柄はかわいいのですが、グッときます。元彼女と街ですれ違って「あ、幸せそうだな」って切なく思ったことのある人はぜひ見てください。人間の心の弱いところがぎゅっと伝わってくるような作品ですごくおすすめです。
この9本のほか、レトロスペクティブ(過去作品の紹介)として「国際映画祭と監督」というタイトルで、国際アニメーション映画祭で賞を取って次回作が待たれている監督の作品が3本取り上げられています。岩井澤健治監督の『音楽』、片渕須直監督の『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』、それから湯浅政明監督の『夜明け告げるルーのうた』、の3本です。
そもそも映画祭というのにも規模がいろいろあるのですが、東京国際映画祭は国際映画製作者連盟公認の映画祭で、アジア1位の規模を誇る映画祭です。舞台挨拶と2つのシンポジウムは東京国際映画祭のYouTubeで後日、無料配信されるはずなので、監督の貴重なトークなどは自宅で見ることもできます。ぜひご覧いただければと思います。
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