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2023年3月、“第1回新潟国際アニメーション映画祭”開催 村上春樹原作の作品がグランプリに


SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は、3月17日から22日まで開催された「第1回新潟国際アニメーション映画祭」にちなんで、アニメーションの映画祭についてお話を伺いました。

放送時は映画祭開催前でしたが、web再録にあたり開催後の内容に改めてあります。※以下語り、藤津亮太さん

長編アニメに特化した「新潟国際アニメーション映画祭」

今回、初開催となった「新潟国際アニメーション映画祭」は、普通の映画祭では短編アニメが中心になることが多い中、長編アニメに特化した映画祭です。

実はここ10年くらい、世界中でたくさんの長編アニメが作られるようになり注目度が上がっています。昔は長編アニメを作る国って限られていたんですよ。

60分以上のアニメ映画をどんどん作ってきた日本は、世界的に見ると少し異色。近年状況がかなり変わってきていることをふまえると、長編アニメに特化した映画祭というのは目の付けどころが面白いなと思いました。

映画祭のメインは、グランプリを決めるコンペティション。アメリカ、スペイン、フランス、チェコ、アルジェリア、日本といった世界各国の長編アニメが上映されました。

グランプリは最終的にフランス・カナダなどの合作で、村上春樹さんの短編を原作とする『めくらやなぎと眠る女』に決まりました。

コンペティション以外にも様々な企画が行われました。オールナイト企画で『君の名は』以前の新海誠作品を上映したり、大友克洋さんが関わったアニメ作品を全部上映するレトロスペクティブ、イベント的な上映では永野護さんの『花の詩 ゴティックメード』(2012年)というソフト化していない作品も上映されたりしました。

また世界の様々な長編アニメにも目配りをしていて、「アヌシー国際アニメーション映画祭」で賞を取ったブラジルの『父を探して』、中国の『明るい方へ』、フランスの『手をなくした少女』なども上映されました。

四大アニメーション映画祭

世界には四大アニメーション映画祭と呼ばれる映画祭があります。まずはフランスで行われている「アヌシー国際アニメーション映画祭」。1956年にカンヌ映画祭がアニメーション特集を開いたのがきっかけでできた映画祭で、1960年からはアヌシーで行なわれています。この映画祭の規模は抜きんでていますね。

それからクロアチアの「グレブアニメーション世界映画祭」とカナダの「オタワ国際アニメーション映画祭」。日本の個人作家さんの受賞がニュースになったこともありました。

もう一つは日本の「広島国際アニメーションフェスティバル」。1985年から2年に1度行なわれていましたが、2020年に終了となってしまいました。2022年からは「ひろしまアニメーションシーズン」というまた新しい仕切りで行なうように変わりました。なので現在は、三大アニメーション映画祭ということになります。

「新潟国際アニメーション映画祭」は、このトップのグループよりは小ぶりでも、長編に特化という個性を武器に、独自のポジションを築きたいのだと思います。

映画祭の目的とは

映画祭って、作品を広く知ってもらうための大きな手段です。コンペティションという形にしろ一般的な上映にしろ、そこにはファンやマスコミの目利きの人たちが集まるし、アニメーションをビジネスにしている人たちも見る。

そうするとコンペティションでグランプリでなくても、これは良い作品だからうちで配給できないかとか、この監督と仕事ができないかとか、作品やスタッフに広がりがつく。

映画祭はクリエイティブとビジネスが地続きになっている一種の見本市で、「新潟国際アニメーション映画祭」もそんな方向で、新しく大きく育っていくといいんじゃないかなと思います。(2023年3月6日放送)

 

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