後章も公開中!『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』。二部作アニメ映画の歴史を調べてみた
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は二部作で作られた映画についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
実は珍しい!? 完全新作の二部作アニメ映画
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』が前章と後章に分けられて3月と5月に公開されたことを受け、“二部作”という形で構成されたアニメ映画が過去にどれぐらいあったか調べてみました。結論から言うと、やはり総集編が多かったです。完全新作で二部作という構成の作品はなく(三部作はある)、アニメ映画の歴史でいうと、1982年に劇場公開された、劇場版の『伝説巨神イデオン』の「接触篇」と「発動篇」くらいでしょうか。
これはTVシリーズが不完全な状態で終わったことで企画された映画でした。TVアニメで放送されるはずだった残りの4本分を劇場版としてかけるために、TVシリーズの総集編と、初めて見る本当のラストを描くその続きの内容を、それぞれ90分の二部作で同時上映するという形が選ばれました。このテレビ総集編が「接触編」で、真のラストが描かれたのが「発動編」とういう構成でした。
その後1997年に『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』が公開されましたが、これはテレビシリーズの総集編と、TVのラスト2話に相当するエピソードを別アプローチでリメイクするという企画でした。
TV総集編の「DEATH」編と、完全新作の「REBIRTH」編で、今お話した『イデオン』の劇場版を踏まえていると思います。ところがこの「REBIRTH」編が公開までに完成せず、量産型エヴァが出てくるとこで終わってしまいます。これがいわゆる“春エヴァ”です。
その夏に仕切り直しで『Air/まごころを、君に』という、「REBIRTH」編として流れるはずだったものが、単独で上映されました。これがいわゆる“夏エヴァ”です。その後『THE END OF EVANGELION』というタイトルで『DEATH』の再編集版と『Air/まごころを、君に』の同時上映も行われました。
その後もやはり二部作アニメは総集編が多かったです。テレビシリーズを再編集した『∀ガンダム』は「地球光」「月光蝶」の二部作が日替わり上映されました。劇場版『天元突破グレンラガン』は2008年9月に前編「紅蓮編」が、後編「螺巌編」は翌年の4月に公開されました。
2012年には『魔法少女まどかマギカ』の劇場版公開になりました。これはテレビシリーズ全12話を、前後編(「始まりの物語」「永遠の物語」)にまとめたものです。また、劇場版『進撃の巨人』(2014年)では、いわゆる第1シーズンと言われてるものを2本に分けて「前編 紅蓮の弓矢」、「後編 自由の翼」という形で上映しています。
これらは基本的に総集編で、新作のストーリーを短い間隔で2部作として公開するのはレアなケースというのは前述の通りです。
ただあえて挙げるなら珍しい例として2022年秋に公開された『僕が愛したすべての君へ』と『君を愛したひとりの僕へ』というSF小説をアニメ化した映画があります。これはもともとそれぞれ独立した小説なのですが、その内容が互いにリンクするという趣向が仕掛けられているんです。
舞台はパラレルワールドがあることが確認されて、そのための研究が進んでいる近未来の世界。7歳の主人公の男の子が、離婚した親のどちらにつくかで人生が分岐します。その分岐によって、彼が高校生のときにどんなヒロインと会うかが変わり、そこに別ルートを生きていたもう1人の自分が干渉してくるという話でした。映画を2本見ると、パーツが噛み合って大きな1本の物語として繋がって見えるという映画でした。ポイントは2つの映画を見る順番で、後味が変わるというところですね。これは面白い試みでしたが、厳密には二部作という感じではないですよね。
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』は単純にエピソードが長いので、2時間では絶対できない物量なんですよね。だからそういう意味では、なかなか例のないことですが、ある意味自然なことではあるし、配信会社が3時間ぐらいあるドラマを“映画”として制作しているということなどと併せると、すごく現代的な映画の作り方かなと思います。
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