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転機は、やはり1997年『新世紀エヴァンゲリオン』の再放送!“深夜アニメの歴史”を振り返る


SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は「深夜アニメの歴史」についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

深夜アニメが始まってから地方格差があった2000年代まで

遡ると、TVアニメの黎明期である1963年に『仙人部落』という作品が、23時台に放送されたことが深夜アニメの始まりです。80年代になると深夜向けのバラエティ番組が活発に制作されるようになり、そういう深夜のお楽しみのバリエーションとして、深夜アニメが放送されていました。ただそういう流れと、現在の深夜アニメとはビジネス的には繋がっていません。

現在のように、ブルーレイやDVDを売るための宣伝として深夜アニメが使われるようになったのは、90年代後半です。

1996年、テレビ東京で『エルフを狩るモノたち』が深夜に放送されましたが、これが現在に繋がる深夜アニメの、ごく初期の例です。ただ厳密にはその前にビデオだけでリリースされていた『銀河英雄伝説』シリーズがテレビ東京の深夜枠で放送された例がありますし、また、90年代初頭には70年代や80年代の懐かしいアニメをかける枠を設ける局もありました。こうして徐々に新枠が開発されていく過程の中で、90年代後半には深夜に新作を流すようになったのです。

大きく流れを決めたのは、『エルフを狩るモノたち』の翌年、97年です。『新世紀エヴァンゲリオン』が、劇場版を盛り上げるために深夜に再放送されたことです。深夜にも関わらず視聴率が2%を記録し、ここから現在に至る深夜アニメの爆発的盛り上がりが始まります。

その後、多少増減しながらも深夜アニメというのは当たり前になっていき、2015年には、分数ベースで、放送されている全アニメのうちの半分以上が深夜アニメとなりました。それは現在も変わりません。

こういうアニメビジネスの変化を背景になにが起こったかというと、東京のローカル局であるテレビ東京が、自分たち独自の武器としてアニメを使うようになりました。当時、テレビ東京はいまほど系列局がありませんでした。その結果、深夜アニメは東京中心で、地方で見られない、見にくいということが起きるようになったのです。

この状況に対して、90年代後半は地方の格差を埋めるためにBSチャンネルと組み合わせたり、サブスク以前の一部の配信サービスに提供することで、地方でもその作品を見られるという体制が組まれました。ですので90年代後半から、サブスクの映像配信サービスが普及する2015年ぐらいまでは、ある種、地方格差の時代ということができると思います。この期間は、東京基準で情報が出るので、地方のアニメファンはもどかしい思いをしていたと思います。

テレビ局がアニメにコミットする時代に

そんな時期、ちょっと目を引くトピックといえるのが、2010年に放送された第2期の『けいおん!!』。第1期で大当たりしたので、TBSは全28局で見られるような体制を組み、これが翌年公開の映画のヒットに繋がりました。

テレビというのは、番組を流すのにお金がかかります。わかりやすく言うと、深夜アニメは製作委員会が番組の枠を買い、そこに自分たちが製作したアニメを流すというやり方をとっています。だから、放送する局が増えると費用が増えるわけです。2012〜13年ぐらいの話だと、当時東名阪で3局を押さえると、世帯カバー率50%ぐらいだと聞きました。

そこに北九州と北海道を入れると60~70%ぐらい。そこから後は1局増やすごとに2%くらい。当時は、その2%にどれくらいお金をかけられるかというのが深夜アニメのビジネス的な判断のしどころだったりしたわけです。配信が普及した今は、地上波は3局ぐらいの作品も多いです。

ただ今はテレビ局がまたアニメに熱心になってきています。これもビジネス面での変化が大きいです。テレビ番組は、スポンサーが「CMを流すための費用」と「番組制作費」を出資することで成り立っています。このうちの「CMを流すための費用」がテレビ局の「放送収入」というものになります。これがテレビビジネスの中心でした。

しかし現在は、視聴率が伸び悩み、放送収入が頭打ちになっていく状況です。そこでテレビ局も、映像制作の出資し、権利にコミットすることで利益をあげようと考えるようになりました。そこで注目を集めるようになったのが、深夜アニメです。こういう「CMを流すための費用」以外の売上を「放送外収入」といいます。

深夜アニメはもともとが、DVD・Blu-rayや配信サービスへの販売で利益を挙げるビジネスなので、視聴率には縛られないのです。テレビ局もそこにコミットすることで利益をあげようというわけです。アニメは当たると大きいという印象も、それを後押ししました。このように放送収入が頭打ちのため、放送外収入に力を入れるようになったのが、最近の地上波テレビ局でのアニメに力を入れることに繋がっているのです。

そんな流れの中で、今季のSBSの深夜アニメ枠の隆盛もあるわけです。あれだけSBSでアニメが流れているのを見て、すごくいい時代になったなと思いました。

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SBSラジオTOROアニメーション総研(毎週月曜日19:00~20:30 生放送)全国のアニメ好きが集まるラジオの社交場。ニッポンのアニメ文化・経済をキュレーションするラジオ番組。番組公式X(旧Twitter) もぜひチェックを!/パーソナリティ青木隆太、澁谷海音、藤津亮太

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