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『ゴルゴ13』から『ファイナルファンタジー』に『プリキュア』、『蒼き鋼のアルペジオ』まで“3DCGアニメの歴史”を振り返る!


SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』が8月4日に公開になったことをうけ、3DCGの歴史についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

今回は40年にわたる、3DCGの歴史を簡単にお話しようと思います。大雑把にいうと日本のアニメにおける3DCGの導入は、大きく3つの時期に分けられ、1回目が80年代、2回目が90年代後半から2000年ぐらい、3回目が2009年頃からになります。

3DCGの世界が始まった80年代

一番最初に映画の中で3DCGが使われて業界や観客にインパクトがあったのが『トロン』(1982)です。ディズニーの実写映画で「コンピューターの世界に入り込んだ主人公が悪と戦う」という内容で、一部の乗り物を使ったアクションなどに3DCGが使われていました。ここから3DCGっぽい絵が入るようになります。

また、同じ年に『スタートレックII カーンの逆襲』では、死の惑星が蘇るシーンで、自然物を描くのに3DCGが使われました。

日本では、1983年に『ゴルゴ13』がアニメ映画化されたときに、高層ビルをヘリコプターが襲撃するシーンなど一部に3DCGが導入されています。当時としてはかなり頑張っているクオリティでしたが、現在のように複雑な表現ができるわけではないので、やはり手描きとは全然テイストが合わずがっかりした人が多かったようです。

翌年の『SF新世紀レンズマン』では宇宙船のシーンなどがCGで描かれたのですが、そこは意外に違和感がありませんでした。一方、アメリカでは『ヤング・シャーロック ピラミッドの謎』(1985)で被害者が見た幻想でステンドグラスに描いてある騎士の絵が攻撃をしてくるというシーンが作られました。このステンドグラスの騎士が、3DCGで初めて作られたキャラクターといわれています。

次の大きいウェーブの幕を開けた作品は何といっても『ジュラシック・パーク』(1993)でしょう。恐竜の一部のシーンが3DCGで描かれました。誰も見たことがないのに本物っぽい、それくらい説得力のある表現でしたね。

コンピューターの普及が3DCGの発展を後押しした90年代後半

そして、1995年には『トイ・ストーリー』が登場します。『トイ・ストーリー』は世界初の長編3DCGアニメーションで、なおかつ大ヒットしたことで、世界のアニメシーンを塗り替えました。

パソコンの進化、低廉化も著しく、Windows95が登場してインターネットが普及し、Macintoshを含めたパソコンがどんどん身近なツールになっていく時期だったので、国内でもいろいろな3DCGアニメが作られました。ただ人間はやっぱりうまく表現できなかったんです。

『VISITOR』(1998)は面白いSFでしたが、キャラがマリオネット状態。ただ、どのクオリティに達したら世に出していいかというのは、判断が難しい時期だったと思います。挑戦していかないと未来は開けない。

一方で、日本はハリウッドみたいに莫大な予算をかけることができないので、どうやって3DCGの表現で突破口を見つけるかは、いろんなクリエイターがいろんな工夫をしていた時期です。

そんな中、ゲーム「ファイナルファンタジー」のプロデューサーで、スクウェア社(当時)の坂口博信さんが、最新の機材で『ファイナルファンタジー』(2001)という映画を作りました。

大規模な予算を組み、ハワイに専用スタジオを設立し、日米などのクリエイターを集めました。出来栄えも日本ブランドの3DCGとしては、当時の最高水準といってよく、日本から手描きのアニメーターさんを招いてモーションをつけたりと、いろいろなことに挑戦していました。

フォトリアルな人間が荒廃した未来世界でアクションをするという映画で、クオリティは今見ても評価できますが、ストーリーは若干スピリチュアルなSFで、今ひとつでした。

しかも、みんなが知ってる“ファイナルファンタジーの世界観”じゃなかったんです。結果、興行的には実りませんでしたが、果敢に挑んだという印象です。

一方で、90年代後半からはアニメ制作のデジタル化が進み、最終的な仕上げはパソコン上で行うようになっていきます。3DCGによるキャラクターは難しいですが、このころから徐々にメカは3DCGを使うことが一般的になっていきます。

例えばTVアニメだと『ZOIDS』(1999)は、複雑な形状をした動物型ロボットを3DCGで描いていました。

またキャラクターまで3DCGで表現した作品になると、2011年に、後に『STAND BY ME ドラえもん』を作る山崎貴監督と八木竜一監督のコンビが『friends もののけ島のナキ』を作ります。これは3DCG映画で初めて興行収入10億円を超えました。

ただ、CGのニーズが増してきていろいろな作品が作られているんですが、大きいブレークスルーは起こりませんでした。キャラクターなんかは手描きで描いた方がうまくいくので、メカみたいに硬いものを硬く表現できるというメリットがはっきりしていなかったんです。

3DCGのメリットが発揮された2009年以降

ところがあるタイミングで、キャラクターを3DCGに置き換えた方がいいという瞬間が来ました。これがダンスです。手書きでダンスを作るとすごく大変なんですよね。もちろん3DCGも楽なわけではないですが、手描きの難しさに比べたら平均的にクオリティを出しやすいのです。

2009年に『フレッシュプリキュア!』のエンディングのダンスで3DCGが初めて導入されました。以降、『プリキュア』のエンディングは3DCGダンスが定番になります。

また翌年『ラブライブ』の最初のデビュー曲「僕らのLIVE 君とのLIFE」のPVも3DCGでダンスをしています。このPVを作ったのは、サンジゲンというアニメスタジオ。この会社は2013年にはTVシリーズで初めてセルルック(3DCGを手描きアニメ風に見せる方法)でキャラクターを動かす『蒼き鋼のアルペジオ-アルス・ノヴァ-』を制作します。

『蒼き鋼のアルペジオ』はテレビアニメとして、あのクオリティでキャラクターが3DCGというのは、過去に例がありませんでした。そこから現在までの10年間、ようやく3DCGキャラクターが、違和感よりも楽しく見られる方が勝るゾーンに入ってきたという感じですね。

(SBSラジオ 2023年7月31日放送)

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