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『リコリス・リコイル』新作アニメ化決定!実は1970年代から?“女性バディ”ものアニメの歴史を振り返る


SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は『リコリス・リコイル』の新作アニメーション発表にちなんで、「女性バディ」ものについてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

1970年代から対照的な女性バディが活躍!

そもそもいつ頃から「女性バディ」ものがあるのか探っていくと、1978年に『魔女っ子チックル』というアニメがあります。永井豪とダイナミックプロが原作のアニメオリジナル企画なんですけど、魔法の国から出てきた主人公チックルと、チーコという普通の女の子がバディを組むというもの。主題歌のタイトルにも「チックルチーコのチャチャチャ」と2人の名前が織り込まれています。これが「2人はコンビである」ということを銘打った極初期の例でしょう。

アニメに大きな影響を与えたものというと、1979年の小説が85年にテレビアニメ化された『ダーティペア』。これはSFなんですが、赤髪ショートヘアのケイと黒髪ロングヘアのユリという、個性が対照的な2人が、トラブルコンサルタントと称してトラブルを解決していく話です。でも2人が関わると、かえって被害が大きくなるというのがポイント。

彼女たちには本当は「ラブリーエンゼル」というコードネームがあるんですが、周りにはダーティペアと呼ばれています。

小説が発表された1979年の時点で、当時の女子大生などの喋り口調を取り入れるなど(当時はそういう言葉はありませんが)ライトノベルの元祖のような、エンターテインメント小説に新しい息吹を入れた作品でした。1985年にTVアニメが作られ、OVA(ビデオのみでリリースされる作品)を経て、87年に劇場版が作られているのですが、この映画版がたいへん面白いのでぜひおすすめしたいです。

もう1つ忘れちゃいけないのが、藤島康介さんによる漫画原作の『逮捕しちゃうぞ』。夏実と美幸という2人の女性警察官もので、体力派の夏実はバイク乗り、美幸はトゥデイのミニパトを運転してるという設定。

交通課を中心にしたトラブルとラブコメ要素が魅力で、若干ギャグ寄りのところも多く、警察官ものとしてはかなり楽しい作品に仕上がっています。この2人も人気があってアニメもOVA、テレビが3シリーズ、それに劇場版が作られています。現実の風景を舞台に、バイクアクションなんかが描かれているのもひとつの魅力ですね。

2000年代からは変化球の作品も

2001年には美少女ガンアクション3部作というものが作られました。

1作目は『ノワール』。これはすごくハードな作品で、暗殺代行をやっているミレイユと記憶を失った日本人の少女・夕叢霧香の2人がノワールという暗殺ユニットを組みます。ミレイユは家族を惨殺された過去を持っているし、霧香はなぜ記憶喪失なのかという謎がある。お互いの過去が明らかになったときにどうなるのかという作品です。

2010年に、GAINAX社の今石洋之監督が『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』という作品を作ります。美少女の落第天使が地上のゴーストを成敗するというアクションものなんですけど、これは大変下ネタが多くて……ちょっと居間では見れないレベルです(笑)。

そして昨年放送された『リコリス・リコイル』。このアニメの一番の特徴は主人公が所属する「DA」という秘密組織が治安維持側の組織だということ。90年代以降、おそらく『攻殻機動隊』の影響が強いんだと思うのですが、秘密裏に活動する非合法組織というアイデアがアニメに増えてきていました。そういう流れの中にある1作でもあります。

1980年前後にあったアニメブーム以降だと、女の子はキャッチーだし、アクションは楽しいしということで定期的にこういう「女性バディ」が出てきますね。ただ何か明確な切り口がないと個性が弱くなるので、そのあたりはどうキャラクターの魅力をどう見せるか、いろいろ工夫が必要になります。

今回はざっくり女性バディものの歩みを振り返ってみました。(2023年2月13日放送)

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