「アニメ×特撮」で考える、特撮の強みVSアニメの魅力
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は「アニメと特撮」についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
アニメと特撮、両方のタイトルをもつ作品たち
現在公開中の映画に『グリッドマンユニバース』というアニメがありますが、これは『電光超人グリッドマン』(1993年)という、円谷プロが作った特撮番組がベースになって『SSSS.GRIDMAN』というアニメが作られ、その劇場版という位置づけの作品です。このシリーズ以外にも、アニメと特撮を行ったり来たりしているタイトルはあるので、今日はそのあたりを紹介したいと思います。
例えば最近だと、『仮面ライダーW』発でU-NEXTで配信された『風都探偵』というアニメがあります。
それから『ウルトラマン』に対し、ちょっとパラレルワールド的解釈をした『ULTRAMAN』がNetflix配信のCGアニメになっています。この2つはどちらも、特撮番組のスピンオフ的な漫画が原作で、そのアニメ化という位置づけです。
日本を代表する怪獣のゴジラもアニメになっています。アメリカでアニメ化されたのはおいておいても、ポリゴン・ピクチュアズが作ったCGアニメの『GODZILLA』、ボンズとOrangeの共同制作の『ゴジラ S.P』というアニメもあります。もう一方の雄、『ガメラ』も『GAMERA -Rebirth-』として全6話のアニメ化が発表されました。
そういった作品のなかでも、歴史的に大きなインパクトがあったのは、『ザ☆ウルトラマン』(1979年)ですね。これはウルトラシリーズを100%アニメで作った作品で、設定的には『ウルトラマン』のフォーマットをなぞる形になっています。
特撮のシリーズと違うのは、出身地です。昭和の『ウルトラ』シリーズでは、基本的にM78星雲の出身というのが主流でした。ですが『ザ☆ウルトラマン』の場合は、U40という星。この星の人たちがあるエネルギーゲームの力を借りてウルトラマンに変身するという設定でした。宇宙を舞台にしたアクションもの―いわゆるスペースオペラ―の要素が強く入ってるのが特徴でしたね。
面白いところもいろいろあるんですが、怪獣に関してはやはりアニメだと情報量が足りなかったなぁという印象も強いです。
これはアニメ・特撮研究家の氷川竜介さんも、なぜ1960年代半ばにアニメではなく特撮番組が大ヒットしたのか、ということについて「特撮はアニメでは不得手な、怪獣の生物感・生命感がしっかり表現できていて、そのリアリティが子どもの心を捉えた」と分析しています。
昔のアニメはセルをセルで塗るという表現が基本なので、今みたいに皮膚や毛並みなどの質感を細かく盛りつけるということができなかったんですね。だから生命感みたいなものは、やっぱり造形された実物を撮る特撮の方が勝っていたんです。
特撮がアニメよりすぐれている点は
一方、アニメのいいところはアクションのときにいろんなカメラアングルが選べたり、アクションの派手さが人間や気ぐるみの物理的限界に縛られないところ。そういう自由度が高い部分を合体させて活かせばいいじゃないかという特撮タイトルもありました。『プロレスの星 アステカイザー』(1976年)という作品です。悪のレスラー軍団ブラック・ミストに対抗する若手プロレスラーの鷹羽俊が、アステカイザーに変身して戦うっていう内容なんですが、額のアステカの星が輝いて、「カイザーイン!」と叫ぶと、そこからアクションシーンがアニメになる。ずっと実写で進行しているんですが、アクションの途中からアニメになるんです。これがやりたいことはわかるけれど、めっちゃ違和感がありました(笑)。
それまでは普通にリングの中とか岩場とか、実際の空間でバトルしているわけですが、アニメになるとその辺も融通無碍になっちゃいます。背景もイメージ中心になっちゃって、空間的なリアリティはなくなるんで、本来の肉体を使ったアクションとは違ったものになっちゃってて、不思議な感じがしましたね。
アニメと特撮を融合させるアプローチとしては、円谷主導で『恐竜探険隊ボーンフリー』(1977年)や『恐竜大戦争アイゼンボーグ』(1977年)、サンライズ主導で『科学冒険隊タンサー5』(1979年)という試みもありました。この3つは、特撮カットとアニメのキャラクターを組み合わせるというアイデアでしたが、このパターンのものは3本くらいしかなくあまり定着しませんでした。
現在は『グリッドマンユニバース』などを見てもわかる通り、3DのCGの活用で、アニメの絵の中に特撮っぽさを入れられるようになっています。『グリッドマンユニバース』では、バトルの足下から真上を仰ぎ見るようなアングルを採用していたのも印象的でした。
3DCGというのは、結局モニターの中にミニチュアなどの造形物を作っている表現ですから、そういう意味では特撮ものっぽい、箱庭の中でバトルさせる表現と親しい部分があります。
こうして3DCGの登場で、アニメと特撮は性質の異なる表現ながら、同じ地平で徐々に繋がるようになってきたのかなと思います。(2023年4月17日放送)
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