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『BLEACH』は色使いがすばらしかった!知られざる“アニメの色”の演出について


SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回はアニメの色の演出についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

すばらしかった『BLEACH』の色使い

最近のアニメの色使いで印象に残っているのは、2022年12月まで放映されていた『BLEACH 千年血戦篇』での卯ノ花八千流と更木剣八のバトルシーン。剣の技で相手を倒すことに命をかけている者同士の魂の結びつきがあるというエピソードで、かなり渋い作りのバトルがありました。暗い空間で2人が戦うシーンは、色が抑えられ、所々血だけに少し色がついてるというモノクローム的な表現が美しかったです。

今はコンピュータで最終的に絵を作っている時代ですが、この戦闘シーンはデジタルでないとできない「ローコントラスト」な画面でした。ローコントラストとは、明るいところと暗いところの差が少ないこと。ローコントラストで色数を抑えたこのバトルの画面は、色を細かくコントロールできるアニメならではの画面ということができます。

アニメの色の作り方とは

そもそもアニメでは、どうやって色を決めているのかというと、まず背景の色を決めます。本番の背景の前に、美術ボードと呼ばれるお手本を作って、このシーンはこういうトーンでいきましょう、このくらいの明るさ、こんな色味でいきましょうという大きな方針を監督と美術監督で決めます。その上に色を付けたキャラクターの絵をのせてみて、背景に馴染むような色を選ぶ。この時のキャラクターの配色は、原作などのカラーイラストを参考にするときもあります。

ただこれだけだと、アニメのセル画はペラペラの均一な塗りだから、背景に重ねた時に浮いて見えてしまい、同じ空間にあるように見えない。それをAfterEffectsというソフトを使い、フィルターを重ねることで、光がにじんでいる感じとか、空気がある感じを加え、全体が1枚の絵に見えるようにしていきます。

先ほどの『BLEACH』のような、ローコントラストの画面は微妙なグラデーションが増えるので、テレビ放送としては結構挑戦的なことだと思います。微妙なグラデーションは、様々な条件で色の変わり具合がなめらかでなく、階段状に見えてしまうこと(これを「マッハバンドが出る」といいます)もあったりするんです。

基本的にキャラクターの色は、事前に昼の色や夜の色を決めておくものなんですが、お話した八千流と剣八の戦いのような特殊な画面のときは、そのカットのためだけに色を作ります。

そういう特殊な色使いは、昔の、セルに絵の具で色を塗っていたころは、手間がかかって難しかったんですよね。例えば、1980年前後のTVアニメだとおよそ100色前後の色数で塗っていました。

1988年の『となりのトトロ』で約300色。これは当時としてはかなり色数が多いほうです。こうした条件の中で、繊細な色使いはとても難しい。現在はコンピュータで色を塗れるようになったので、色数が圧倒的に増えて、カットごとに色を調整することができるようになりました。

アニメの色使いの工夫

今回の『BLEACH』のアニメならではの色使いは、今のアニメの作り方のいいところをいっぱい活かしていると思うので、そのあたりも注目すると面白いんじゃないかと思います。オープニングもそうです。基本モノクロで塗られたキャラクターにピンク色がハイライトみたいな形で入っている作りになっています。

モノクロって、最初からモノクロの色で設計するんですよ。カラーで塗ってからモノクロに変換すればいいんじゃないかと考える人もいるかもしれないですが、例えば赤と黄色はカラーだと見分けがつきますが、これが同じ明るさだと、赤と黄色が同じグレーになっちゃうことがあるんです。

だからモノクロにしたときには、違う色だとわかってほしいところは、明るさを変えないといけない。アニメの色の工夫というのは、実はいろいろあるというお話でした。(2023年3月20日放送)

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