
【熱海怪獣映画祭】熱海を怪獣特撮の聖地に! 映画祭が街の活性化に一役 世界中のファン誘致へ高まる期待感

(橋爪)「熱海を怪獣の聖地に」を合言葉に、熱海市で10月7日から9日までの3日間、第6回熱海怪獣映画祭が開催されました。これまで観に行けていなかったので、今回は休みを利用して3日目の9日に客として参加してきました。
(山田)熱海は怪獣の聖地だということを僕は知りませんでしたよ。
熱海怪獣映画祭については先日、代表の水野希世さんにスタジオにお越しいただいてPRをしていただきました。過去の怪獣映画では、いろんな怪獣に熱海城が壊されたりとか、海から怪獣が上がってきたりとかしてて、実はたくさんの怪獣が訪れてる町なんだという話をされてました。
(橋爪)そうなんですよ。きょうは9日の様子をお伝えしつつ、この映画祭の意義とか価値について考えてみようと思います。
(山田)ぜひ、教えてください。
(橋爪)10月9日の会場は、老舗ホテルの大野屋でした。大広間を1つ貸し切り、スクリーンや音響機器を持ち込んで開催していました。その前の2日間は熱海芸妓見番で映画「キングコング対ゴジラ」の上映やトークなどを行っていたんですが、水野さんに伺ったら両日とも120席がほぼ満席だったそうです。
(山田)すごいですね。
(橋爪)4部構成の9日も、ものすごく盛況でした。この日の売り物は55周年を迎えたウルトラセブンの記念上映会。この特撮を担当した鈴木清さんと、ウルトラマンや怪獣の中に入って演じるスーツアクターの俳優3人がトークを繰り広げました。それから落語家の柳家喬之助さんによるウルトラ怪獣落語もありました。私は1部と2部だけしか見られなかったんですけど、それだけでもこんなにてんこ盛りでした。
(山田)すごいですね。スーツアクターさんのトークはどうでしたか。
(橋爪)めったに聞けないような話ばかりでした。鈴木さんとの信頼関係がうかがえましたね。アクション俳優としての能力を見定めていろいろと頼んでいるところもあったようです。「帰ってきたウルトラマン」「スーパーロボット レッドバロン」「アイアンキング」など70年代の作品の上映とともに、ここに出演された俳優さんが来場されましたが、最も目立っていたのは「帰ってきたウルトラマン」の中に入っていたきくち英一さん。ウルトラマンポーズを元気に連発していました。
(山田)ファンからしたらたまらないですね。
“中の人”は大学の先輩後輩だった!「奢るから勘弁」と真剣格闘

(橋爪)ドッカンドッカン受けてました(笑)。印象に残ったのは、このきくちさんと怪獣の「中の人」を務めることが多かった俳優の遠矢孝信さんが日大芸術学部の先輩・後輩の関係だったという話です。気心が知れた関係だったので、撮影のときも格闘シーンで結構思いっきり殴ったり蹴ったりしてたらしいんですよ。
(山田)その関係性だからできたということですね。
(橋爪)そうなんですよ。生身の人間同士だと手応えがありすぎたというようなことが分かると思うんですけど、スーツを着ていると分からないそうです。撮影が終わってスーツの中から出てくると、怪獣役の遠矢さんが鼻血まみれになっているというようなこともあったらしいです。
(山田)怪獣は本当にウルトラマンにやられてたわけですね(笑)。
(橋爪)そのときには「今晩奢るから勘弁して」というような会話をしたそうです。
(山田)すごく面白い。そんな話を生で聞けるなんて特別な空間だったんでしょうね。
(橋爪)それぐらい真剣な格闘だったということを知りました。鈴木さんは「ウルトラマンには何のお手本もなかった」とおっしゃっていました。独創性が高い作品でしたからね。
(山田)何かをモデルにしてるわけじゃないってことですね。
(橋爪)試行錯誤を繰り返し、毎日戦いだったとおっしゃってました。10日間で2話分を一気に撮っていたそうなんです。その間は家に帰れないし寝る時間もないと。30分の番組のさまざまなシーンを5日間で撮っちゃうわけですよ。
(山田)すごいですね。
(橋爪)スタジオやさまざまなロケ地での場面を含めて、期間中に全て撮り上げなければならない。ただ、「それでも苦労とは感じなかった。なぜなら好きなことをやっていたから。まさに青春だった」と50年前のことを振り返ってました。この辺、ぐっときましたね。
(山田)いやすごいですね。作る方も皆さん楽しんで作っていたから、われわれも少年時代に楽しめたという。
(橋爪)作り手が無我夢中で楽しんでいたということが、今作品を見ても伝わってくるんですよね。例えば、今だったらCGやVFXなど技術が発達してるじゃないですか。それに比べたら技術は稚拙かもしれないけど、1970年代の作品にもやっぱり胸打たれるんですよね。
映画祭の後に「シン・ウルトラマン」を見たんですが、「鈴木さんたちの作品、全然遜色ないな」という思いでした。楽しんで無我夢中になってやっていた作り手の思いが表れているからこそ、現代でも通用する作品になっているんだなということを感じましたね。
(山田)来年は怪獣映画祭に行きたいな。
(橋爪)熱海怪獣映画祭の活動は日本の文化活動の最新のありようだと思います。
(山田)というのは。
文化芸術基本法のまさに模範
(橋爪)2017年に文化芸術基本法という法律ができたんですよ。この新法の理念は、文化芸術の本質的な価値についてだけではなくて、いかに社会や経済の強化、発展に寄与できるかということが盛り込まれています。これはまさに熱海怪獣映画際がやろうとしていることだと思ったんですね。映画祭には、今年はまだ正確な数字は出てないんですが、昨年の倍ぐらいのお客さんが来てるらしいんです。その上で、そこら中で飲食店がコラボメニューを展開していたり、宿泊施設に対してのアピールをしていたりして、熱海の街全体を巻き込んでいました。街のブランドを高めているということについて言えば、まさにこの法律の模範解答みたいなところがあると思います。
(山田)なるほどね。街の活性化に直接繋がってるんですもんね。
(橋爪)本当にそうだと思います。6回やっていることもすごく大きいです。最初は誰も知らなかったそうですが、さすがに回を重ねて6回目となると、街の中からも外からも大きな人の流れが生まれています。来年、再来年とまたさらに大きくなっていくんじゃないかという印象があって、期待しています。
(山田)もしかしたらもっと全国的に熱海は怪獣の聖地だということが浸透して、モニュメントなんかができる日が来たりするかもしれないですね。
(橋爪)怪獣や特撮が好きな人は全国、世界中に点在しているので、そこに横串を刺すという非常に画期的な試みなんですよね。
(山田)なるほど。
(橋爪)映画祭の情報がそういう人たちにさらに広まって、この期間に熱海に行こうということになれば大変な数になるし、大きなムーブメントになる気がします。
(山田)本当に楽しみですね。今日の勉強はこれでおしまい!
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