【熱海発の映画「温泉シャーク」、北米200館で上映】 熱海ロケのインディペンデント「サメ映画」が世界中で上映。続編「温泉シャーク2」も製作中

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は熱海市の製作会社によるサメ映画「温泉シャーク」が北米の約200館で上映されることになったというニュースを題材に。(文=論説委員・橋爪充、写真は全て(C)2024 PLAN A inc.)

熱海市ならぬ「暑海市」を舞台に、温泉街の湯船に突如現れる人食いサメの恐怖を描いた「温泉シャーク」が北米の映画館で上映される。6月23日の米コロラド州ウェストミンスター、ワシントンD.C.は終了し、7月5日は米ミズーリ州セントルイスやオハイオ州アクロンが控える。9日はニューヨーク、ボストンなど米国の主要都市を含む約170館のスクリーンに、熱海市でロケ撮影した異色のサメ映画が映し出される。

製作会社「PLAN A」(熱海市)の代表で、本作の企画・原案・製作を務めた永田雅之さんに話を聞いた。

-米国、カナダの各地で上映されることになりました。

永田:本作を立ち上げる時点で海外発信を目指していました。「日本から発信するサメ映画」が目標だった。だから「うまくいって良かった」というのが率直な気持ちです。

-上映に至ったいきさつを教えてください。

永田:製作時に英語字幕も準備をしていたんです。2024年9月のフランス「パリ・シャーク・ウィーク」、10月のスペイン「サン・セバスティアン ホラー&ファンタジー映画祭」といった各地のフェスティバルで上映するなど、海外セールスに力を入れた結果、各国の映画関係者に見ていただけた。今年5月にはドイツやノルウェーでも上映がありました。北米は何社かオファーがあったのですが、アート系映画が得意な配給会社にお願いすることになりました。

-上映が決まった理由についてどう考えていますか。

永田:興行的な勝算があると思ってもらえたのだと思います。今年は、(スティーブン・)スピルバーグの映画「ジョーズ」公開50周年のメモリアルイヤー。米国では6~8月、サメ映画が盛り上がっています。「温泉シャーク」でこのお祭り騒ぎに乗っかろうという思惑もあったのでしょう。

-サメ映画は全世界にファンがいますからね。

永田:ニッチだけど、各国にコアなファンが明確に存在していて、視覚化されやすい。「温泉シャーク」については低予算であることも、逆に面白みの一つとして捉えてもらっているようです。

-クオリティーも確保されていたからではないですか。

永田:製作側の熱量がちゃんと伝わったのだとしたらうれしい。予算は少なくても気持ちは抜いていませんから。

-「温泉シャーク2」の製作が始まっています。

永田:今回もクラウドファンディングで資金を集めました。2023年の前回は支援者1278人から1140万6000円をいただきましたが、今回は支援者2879人から3080万8489円が集まりました。「前作以上のものが見たい」という期待を感じます。

-監督は前作に続いて井上森人さん。撮影の進捗はいかがですか。

永田:6月上旬に熊本県小国町でロケ撮影し、熱海と都内での撮影も終了しました。9月に福島県須賀川市で特撮場面の撮影を行い、年内には完成予定です。公開は来年です。前作からストーリーがつながっていて、同じキャストが出演しています。ただ、スケールはかなりアップしています。

-国内外から「聖地巡礼」のお客さんが熱海市にたくさん来てくれたらいいですね。

永田:すでに国内の「温泉シャーク」のファンが、熱海を訪れているという話を耳にします。海外からのお客さんも来てくれることを期待します。このプロジェクトの当初からの目標の一つですから。

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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