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【ミニシアターの役割と意義】独立系映画館は宝の山!世界各国の幅広い映画が楽しめる。新しい才能を発掘する側面も

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「ミニシアターの役割と意義」。先生役は静岡新聞教育文化部長の橋爪充が務めます。 (SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」2023年12月6日放送)

(山田)今日はミニシアターの話題ですね。

(橋爪)大資本によらない独立系映画館「ミニシアター」の閉館が全国で相次いでいます。2022年に東京の岩波ホールや大阪のテアトル梅田が閉館し、今年は「名古屋シネマテーク」が40年の歴史に幕を下ろしました。本県は静岡市、浜松市にミニシアターが存在し、根強いファンに支えられていますが、運営は決して楽ではない。ミニシアターの役割を改めて考えたいと思います。

(山田)びっくりしたんですけど、テアトル梅田も閉館したんですね。

(橋爪)行ったことありますか?

(山田)大阪の大学に通っていたので行った覚えはありますよ。

(橋爪)岩波ホールは1968年、大阪のテアトル梅田は1990年、名古屋シネマテークは1982年にそれぞれオープンしました。

全国のミニシアターを扱った「そして映画館はつづく」という本によると、テアトル梅田はスクリーンが2つ。96席と60席となっているので、ミニシアターにしては大きい方でしたよね。東京、名古屋、大阪の話をしましたが、ミニシアターは地方都市も含めて全国各地にあります。

(山田)最初からミニシアターにしようと思って造られているんですか?

(橋爪)いろいろなパターンがあるようです。映画が好きな有志の方が地元で立ち上げることもあるし、劇場などを改装して結果的にミニシアターになったというところもあります。
私は休みで遠出するときに、各地のミニシアターに足を運ぶこともあります。

(山田)そうなんですか。

(橋爪)昨年は遅い夏休みに新潟県上越市の高田世界館に行きました。ここは日本最古級の映画館で、建物は明治44年築。元は劇場だったのでステージが広いんですが、登録有形文化財に認定されています。

(山田)僕は映画の作品だけを見に行く感覚しかなかったんですが、映画館の雰囲気も楽しんでいるということですね。

(橋爪)ミニシアターは新型コロナウイルス禍後も客足がそれ以前と比較して完全には回復していません。配信サービスの普及が追い打ちをかけているとも言われています。

ここでミニシアターの現況を数字で見てみようと思います。コミュニティシネマセンターの「映画上映活動年鑑2022」によると、2022年の国内映画館の数は前年比6減の590館。スクリーン数は3672です。

(山田)結構あるんですね。

(橋爪)多くはいわゆるシネコンですね。ミニシアターは241スクリーンで、全体の約7%にすぎない。一方で、劇場で公開された作品の約半分はミニシアターでしか上映されていません。

米アカデミー賞受賞監督もミニシアター出身だった

(橋爪)ミニシアターは、シネコンでは上映しにくい、あるいは上映できない、世界各国の幅広いテーマの映画を紹介する場所として機能しています。これがミニシアターの大きな役割だと思っています。

私は昨年の夏に静岡市のシネ・ギャラリーでスロバキアのドキュメンタリー映画を見ました。

(山田)スロバキアですか。

(橋爪)「ウクライナから平和を叫ぶ」というタイトルで、いまロシアが侵攻しているドネツク、ルガンスク地区の過去10年を追ったものです。こういう映画は、ミニシアターでしか見られません。

もう一つ、ミニシアターは国内の新しい才能を発掘し育ててきた文化施設という側面があります。日本映画として初めて米アカデミー賞作品賞に選ばれた「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督は、ミニシアターの作品上映が世に出るきっかけとなりました。今年のカンヌ国際映画祭脚本賞に選ばれた「怪物」の是枝裕和監督、欧州で高い評価を得ている深田晃司監督もミニシアター出身です。

さらに言うと、アニメの「君の名は。」や「すずめの戸締まり」を手掛けた新海誠さんも、もともとはミニシアターで作品を上映していた監督です。仮にミニシアターがなかったら、世界に知られる日本の優れた監督は世に出ていなかったかもしれません。

(山田)駆け出しの監督はいきなり大きなスクリーンには出せないから、小さな映画館からということなんですね。

静岡、浜松にも。足を運んで魅力を知って


(橋爪)そうだと思います。静岡県は政令市2市にミニシアターがあります。このありがたみをもっと多くの方に知ってほしいなと思っています。ということで、今日は応援の意味を込めて両館の近々の取り組みをご紹介します。

まず、浜松市中区のシネマイーラ。ここは2008年12月5日にオープンしました。開館15周年を記念したイベントが今度の土曜日、12月9日にあります。会場は浜松市中区の木下惠介記念館で、浜松出身の映画ジャーナリスト大高宏雄さんとシネマイーラ館主の榎本雅之さんのトーク。「ミニシアターは生き残れるか」がテーマだというので、なかなかガチンコの話が聴けそうです。

(山田)まさに今日のお話ですね。

(橋爪)これを木下惠介記念館でやるということにも意味があります。木下惠介監督といえば、先日亡くなった脚本家の山田太一さんの師匠です。

(山田)そうなんですね!

(橋爪)静岡市葵区の静岡シネ・ギャラリーでは12月14日まで、「熱風!!南インド映画の世界」という企画をやっています。こちらも2003年12月23日オープンなので、まもなく20周年です。

(山田)おめでとうございます。

(橋爪)南インド映画といえば…昨年大ヒットした「RRR」を思い起こす人も多いのではないでしょうか。その「RRR」 のS.S. ラージャマウリ監督作も2本鑑賞できます。

(橋爪)1本はVFX冥界ファンタジー・アクションと銘打った2007年の作品「ヤマドンガ」。もう1本は2009年の作品で「マガディーラ 勇者転生完全版」。こちらは異世界転生もののようです。

(山田)ちょっと面白そうですね。

(橋爪)私が見たお薦めの1本は「プシュパ 覚醒」です。南印度の山奥に高級木材の「紅木(こうぼく)」というものがあって、これを密輸する人たちの物語です。一介の労働者だったプシュパという人が組織の中で成り上がるさまを描いていて、日本のヤクザ映画と構図がそっくりなんです。ところどころ恋物語が挟まれていて、すごく面白かったです。

(山田)なんか、何でも許されるのがいいですね。

(橋爪)いろんな娯楽の要素を全て詰め込んだ感じになっていると思います。12月14日まで毎日、今名前を上げた3本を含む4つの作品が順次上映されていますので、ぜひ足を運んでほしいですね。

(山田)ミニシアターの良さを知っていただきたいですね。

(橋爪)ミニシアターは宝の山だということで締めたいと思います。

(山田)ありがとうございました。今日の勉強はこれでおしまい!

静岡シネ・ギャラリー

シネマイーラ

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