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1982年放送開始『超時空要塞マクロス』から最新『マクロスΔ』まで。マクロスの歴史を振り返る


SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は「マクロスシリーズ」についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

若手が大勢活躍した初代マクロス

『超時空要塞マクロス』の放送開始は1982年10月3日。このアニメが画期的だったのは、メインスタッフに20代前半の人たちが大勢登用されたことです。この時、メカデザインや設定監修という立場で参加し、演出なども手掛けた河森正治さんは、84年の劇場版『マクロス』で正式に監督になり、それ以降、演出家とメカデザイナーの二足のわらじでキャリアを積んでいきます。このほかキャラクターデザインの美樹本晴彦さん、脚本家のひとりだった大野木寛さんもこのときまだ20代前半でした。

一方で、アニメ業界でキャリアを積んできたメカアニメーターの板野一郎さんがメカ作画監督という形で参加し、手描きでは信じられないような空中アクションをいっぱい描きました。監督は『宇宙戦艦ヤマト』などに参加した大ベテランの石黒昇さんでしたが、石黒監督の采配の下、この作品では若手がすごく活躍したんですね。そういう若さの力が溢れてこぼれるような作品が『超時空要塞マクロス』でした。

『マクロス』はそもそも、スタジオぬえというSFアートスタジオが企画をたてた作品です。しかし企画の段階で『マクロス』は本命ではありませんでした。当時、広告代理店に『ジェノサイダス』というハードなメカものが本命で、その当て馬として考えられた『メガロード』という作品が『マクロス』の原型です。『メガロード』は当時のマニアに好まれたようなSFっぽいドタバタでラブコメ要素もあるような内容でした。

ところがスポンサーには『ジェノサイダス』よりも『メガロード』のほうがウケがよかった。そもそも当て馬のつもりの『メガロード』はお遊び要素が強かったので、もう少し真面目に自分たちのやりたいことを込めて、装いを新たにしたのが『超時空要塞マクロス』という企画でした。

マクロスは「巨大なもの」のマクロと「マクベス」という語感を合わせてできたといわれています。タイトルは『超時空要塞マクロス』ですが、当初の発表時は「超弩級要塞」でした。しかし弩の字が、常用漢字に入ってなくて難しい。いろいろあって超時空という言葉が生まれ、『マクロス』の後番組は『超時空世紀オーガス』『超時空騎団サザンクロス』と命名されて、シリーズ化していきます。

初代マクロスの特徴が、後のアニメ作品に影響を与えた

そんな形でスタートした初代『マクロス』ですが、1つ目の注目ポイントは「可変戦闘機バルキリー」です。『機動戦士ガンダム』の登場で、「変形や合体はオモチャっぽいよね」という空気が生まれていたときに、現用の戦闘機そっくりの形から人型ロボットになるというアイデアを出し、「変形って結構リアルじゃない?」という形でトレンドを変えたメカです。戦闘機形態(ファイターモード)と人間型形態(バトロイドモード)の中間形態として、足が戦闘機に逆関節の足がついたようなガウォークモードがあり、これが非常に斬新でインパクトがありました。

また、当時は80年代アイドルの時代で、ポスト松田聖子を狙えと様々なアイドルが競っていた時代だったのですが、初代『マクロス』はヒロインの1人にリン・ミンメイというキャラクターを登場させました。彼女は、若干クセのある性格で、嫌味な性格ではないものの、自分がかわいいということに対して無邪気なコという感じで描かれていたのも新鮮でした。そんな思わせぶりな態度に、片思いをした主人公・一条輝が振り回されるというラブコメ要素が入ってくるわけです。

リン・ミンメイは最終的には歌に生きるキャラクターとして成長していきます。歌は初期段階では大きくフィーチャーする予定ではなかったようなのですが、ラストのオチを考えたときに、異星人との交流で歌がキーワードになる、それが「文化」だとして話をまとめることを思いついたようです。

こうして可変戦闘機、アイドルと歌、ラブコメというマクロスらしい要素が揃ったわけです。これがいろんな形で変奏されながら最新シリーズ『マクロスΔ』まで続くんですね。メカと美少女という取り合わせをバチッと出して、それがしっかりヒットしたという意味で後々のアニメ作品への影響度合いはかなり大きかったのが初代『マクロス』という作品です。(2023年6月5日放送)

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