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なぜ増える児童虐待 気付いたらダイヤル「189」へ

今回は、児童虐待について、認定NPO法人児童虐待防止協会理事長の津崎哲郎さんに、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※2023年6月12日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

児童虐待は毎年増加

牧野:児童虐待防止協会は、どんな組織ですか?

津崎:大阪市に事務局があり、1990年にできた全国初の児童虐待に特化した民間団体です。電話でのホットラインからはじめ、現在は市民や関係者に向けた研修やグループワーク、行政と連携した支援・防止活動を展開しています。

牧野:児童虐待は、毎年増えているそうですね。

津崎:厚生労働省の統計では、前年度を下回ることは一度もなく、毎年増えています。背景にはふたつの側面があります。ひとつは、社会の虐待問題に対する認識が高まり、通報意識が高くなっているということです。もうひとつは、家族の機能が弱くなり、生活の苦労のとばっちりが子どもにいくということです。

子どもから見て「しつけ」はプラス、「虐待」はマイナス

牧野:しつけと虐待の違いは、どんなところですか?

津崎:しつけと虐待は全く違います。しつけは、子どもが成長し将来自立するために役立つものです。一方、虐待は、萎縮したり問題行動が出てきたりして、子どもにとってマイナスです。親に「なぜ体罰をしたのか」と聞くと「しつけのため」と言いますが、子どもが納得できていないとしつけとは言えないと思います。

牧野:虐待にはどんなものがありますか?

津崎:児童虐待防止法では4つのタイプが定められています。体罰など身体的虐待、養育を放棄するネグレクト、子どもに性的な行為をする性的虐待、言葉で脅したり夫婦げんかを見せたりする心理的虐待です。

虐待のサイン

牧野:子どもたちが発する虐待のサインには、どういうものがありますか?

津崎:虐待を受けている子どもには被虐待症状が出ます。親から愛情を受けていない子どもは、愛情の代償として物に執着します。それが他人の物を勝手に持っていくとか、万引きとか、そういう行動につながることがあります。親にされていることの「再現」も起こります。自分より弱い人を見つけた時に、暴力や暴言など親にされていることをします。

そのほか、大人がいつどんな形で自分に危害を加えるのかが常に気になって、顔色をうかがったり、安心して自分を表現することができなかったり、また家が楽しくないから帰りたがらなかったりすることもあります。虐待されている子は、子どもらしい表情が見られなくなりますね。

牧野:虐待のサインに気付いた場合、大人はどう対応すればよいでしょうか。

津崎:他人の物を持っていくとか、他の子に乱暴な言動をするといったマイナスの行動をした時に、親と同じ言動をするのはあまり良くないです。怒鳴りつけるとか叩くとかですね。その子どもを励ますような言葉をかけてあげるほうが良いです。

厚生労働省の全国共通の通報先である児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」は、24時間体制で受けています。状況が複雑そうであれば電話すると救済につながるのかなと思います。

困難を抱えた家族を孤立させない

牧野:児童虐待をなくしていくために必要なことは何でしょうか。

津崎:家族を孤立させない、つながりを作るというのが重要になります。以前は地域社会の中に助け合う仕組みがありました。孤立化が進むと、課題や困難を抱えている家族は対処ができなくて、イライラして、身近にいる子どもにとばっちりがいくという形で虐待につながります。民間では「子ども食堂」や子どもの居場所づくり、学習支援などいろいろ活動が出てきているので、うまく活用してください。

牧野:静岡県内にも「子ども食堂」など、地域でコツコツ頑張ってくださっている方がいらっしゃいます。そうした動きが広がっていくことを願っています。
今回お話をうかがったのは……津崎哲郎さん
認定NPO法人児童虐待防止協会理事長、認定NPO法人子どもセンターぬっく理事。大阪市中央児童相談所に35年間勤務した経験を持つ(退職時所長)。その後大学教授などを勤める。これまで厚生労働省社会保障審議会児童部会委員、日本子ども虐待防止学会副会長などを歴任。現在 京都府及び大阪市の児童福祉審議会委員などを務める。

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