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なぜパンダは中国に帰るの?パンダ中国返還について

ジャイアントパンダの中国への返還についてパンダライターの二木繁美さんに、SBSアナウンサー近江由佳がお話をうかがいました。
※1月25日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。
  楓浜(ふうひん)/ 画像提供:二木繁美さん

愛らしいパンダの個性が1冊の本に


近江:二木さんはパンダに関する本を最近出版されたとのことですが、どんな内容なのか教えてください。

二木:「このパンダ、だぁ〜れだ?」(講談社ビーシー/ 講談社)というタイトルの本です。日本には2023年1月現在、13頭のパンダがいて、中国に次ぐ多さなんです。パンダたちの愛らしいチャームポイントを使った見分けクイズを展開し、顔の比較はもちろん、目や頭のとんがり、手、おしりなど、パンダごとの個性をクイズ形式で紹介しています。ファンなら簡単なものや、飼育員さんでも難しいものまで幅広く入っていますよ。

近江:この2月に中国に返還されるのが決まっているのは、どのパンダになりますか。

二木:4頭います。1頭は恩賜上野動物園のシャンシャンです。同園で1988年に生まれたユウユウ以来、久しぶりに上野動物園で生まれて無事に育った5歳のメスのジャイアントパンダです。ものすごい人気でパンダ舎前はいつも行列ができ、私も最高180分ほど並んだことがあります。5歳の誕生日と返還前の自由観覧の最終日は待ち時間240分を叩き出し、ファンの間では上野のカリスマと呼ばれています。

残りの3頭は和歌山県のアドベンチャーワールドから旅立ちます。1頭は、現在30歳の国内最高齢のオスのジャイアントパンダの永明(えいめい)です。1994年にジャイアントパンダとしては世界初のブリーディングローンで、パートナーの蓉浜(ようひん)と一緒に来日しました。アドベンチャーワールドで16頭の子どもをもうけ、ファンからはグレートファーザーと呼ばれています。飼育下での自然交配による繁殖で最高齢記録を更新し続け、日中の共同繁殖研究にも多大なる功績をもたらしたお父さんパンダです。

永明の娘である8歳の桜浜(おうひん)と桃浜(とうひん)のふたごのパンダも一緒に旅立ちます。マイペースな桜浜とクールな桃浜は、整った顔立ちと仕草が可愛らしいと人気の高い姉妹です。

なぜパンダは中国に返還されるのか

  桜浜(おうひん)/ 画像提供:二木繁美さん
近江:なんだか寂しいですが、なぜ中国に返還されるのか教えてください。

二木:1972年に日本に初めてやってきたカンカンとランランは日中国交正常化を記念して贈与されたパンダですが、現在日本にいるパンダは贈与ではなくすべて貸与なんです。そのため日本で生まれたパンダでも所有権は中国にあり、いずれは返還しなければなりません。

なぜ貸与になるのかというと、絶滅の恐れが高いパンダは、ワシントン条約で商業目的の国際取引が禁止されています。中国はこの条約に加盟したことによって、これまでのような贈与という形ではなく、繁殖や研究を目的としての貸与という形になりました。このレンタル料はパンダの共同研究や野生復帰への取り組み、生息地保全のための資金として使われています。

高いと言われているレンタル料ですが、その分の経済効果もあるんです。シャンシャンの誕生がもたらした経済効果は約267億円。上野動物園にいるふたごパンダのシャオシャオとレイレイのお披露目から1年間の東京都内の経済効果は、約308億円と言われています。(関西大学 宮本勝浩名誉教授による試算)

返還されるパンダの基準

  永明(えいめい)/ 画像提供:二木繁美さん
近江:アドベンチャーワールドの永明はかなりの高齢ですが、返還されるパンダの基準はあるんですか。

二木:日本で生まれたパンダはだいたい2歳くらいまでに返還することになっています。桜浜と桃浜の場合は、コロナ禍で直行便がなくなるなどの理由で延期され、今回8歳で返還という形になりました。こちらの方はファンもある程度覚悟はしていたのですが、永明の方は高齢なのでもしかしたらこのまま日本にいてくれるのではないかと期待していたんです。そのため故郷に帰ることになったことで、みなさん少なからずショックを受けています。

中国で生まれ世界に旅立ったパンダが帰国するケースはまだ少ないですが、中国には高齢パンダのための施設が充実しています。医療設備が揃っていたり、静かに余生を過ごす場所もあったりします。アメリカのサンディエゴ動物園にいたガオガオというオスのパンダは、2018年に28歳で中国に渡っています。こうした実績もあるので“高齢だから帰ることがない”ということではないのです。

近江:アドベンチャーワールドのパンダの繁殖を支えてきた永明がいなくなったら今後の繁殖活動は大丈夫でしょうか。

二木:アドベンチャーワールドでは新たなオスを貸し出してもらうことを前向きに検討しているそうです。同パークには、お母さんパンダの良浜(らうひん)のほかに、永明と良浜の子どもの2〜6歳の若いメスが3頭いるので、お婿さんが来てくれれば、この3頭とのペアリングがあるのではとファンは期待しています。

近江:まだ返還前に会える機会はありますか。

二木:上野動物園のシャンシャンの観覧は抽選方式で2月19日まで(抽選受付は2月6日の13時まで)。アドベンチャーワールドは2月21日まで、永明と桜浜、桃浜のうち1〜2頭に屋内の運動場で会えます。こちらは抽選ではなく、並んだ順でグループごとに約3分の観覧になります。

近江:観覧方法などは、今後変わる可能性もあるので、お出かけ前に公式ホームページなどで確認してくださいね。
今回お話をうかがったのは……二木繁美さん
パンダのうんこを嗅ぎ、パンダ団子を食べた、変態と呼ばれるほどのパンダ好き。和歌山アドベンチャーワールドのパンダ「明浜(めいひん)」と「優浜(ゆうひん)」の名付け親。デザイナーを経て、ライター・イラストレーターとしてフリーで活動。現代ビジネスで、パンダのタンタンの日常を伝える「水曜日のお嬢様」を連載中。

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