最後まで落語界のことを考えていた
菊池:衝撃的なニュースが入ってきましたよね。落語家の三遊亭円楽さんがお亡くなりになられたと。牧野:まさか円楽さんが亡くなるとは思っていませんでした。
菊池:72歳と若いですよね。10月3日にお通夜が営まれて、家族や親族のみ約25人が参加したということです。「笑点」のメンバーカラーだった紫色の着物を着用されていて、眠るような穏やかな表情だったと参列した方が言っていました。4日に葬儀・告別式が行われ、12月にはお別れの会も開かれる予定です。いつも「笑点」では腹黒キャラで言いたいことを言っているイメージがありますよね。
牧野:歌丸さんとのコンビも最高でしたよね。
菊池:連日「笑点」のVTRなどが流れていますが、時代を超えても誰でも笑えて、その軽妙なやり取りが面白かったですよね。ただ、晩年は病との闘いだったんです。2018年に初期の肺がんですぐに入院・手術して、高座に復帰したんです。その後、脳腫瘍で放射線治療をしたり、肺がんが再発していると告白されて驚きました。今年の1月には脳梗塞で倒れて治療とリハビリをされて、8月に高座に復帰されたんです。だから、大病しても何度も高座に復帰されてきたので、今回も必ず復帰してくださると思っていたのですが、そのまま天に行ってしまったのが衝撃で本当に驚きました。
8月の高座復帰の時も、かなり痩せられていて言葉も出しにくい状態が見受けられたんです。インタビューの時も、途中でゼーゼーハーハーすることもあって吸引器で薬を入れながら、マスコミの前に立っていろいろな話をされていました。その時に「みっともなくてもいいから、死ぬまでやります」と生涯現役宣言されたんです。みっともない姿も全部見せて、これが落語のためになるのであればなんでもやりますと。体調が悪くてやめようと思ったこともあったそうです。脳梗塞になって高次脳機能障害で記憶に影響が出たそうなんです。
牧野:それは落語家にとっては相当つらいですよね。
菊池:でも、昔覚えた落語は出てくると。なので、みっともない形でも出てくるまでやれるなら、しがみついてみたいとおっしゃっていました。あの状態でまだやるぞという気持ちで奮い立たせているのは、すごい強さだなと本当に驚きました。
牧野:菊池さんも取材する機会が多かったんじゃないですか?
菊池:そうですね。一番覚えているのが、2016年の不倫報道の会見です。FRIDAYで不倫報道あって、発売日当日に会見を開くということで私も行ったんです。不倫会見は本当に難しいじゃないですか。対応ひとつでこの先の仕事がなくなってしまうかもしれないということで、会場に来た円楽さんも初高座に上がる時のような気分だというくらい緊張されていました。お手柔らかに頼みますと言っていたんです。浮気も認めて時代錯誤だったと反省されて、奥様への思いも話していたのですが、だんだん調子が出てきて毒舌やシャレを挟んでくるわけですよ。そうすると報道陣もおもわず笑ってしまう。不倫会見で笑いが出るというのはあまりないことなので、私たちも笑っていいのかなという部分もどこかにあったと思います。
牧野:笑いが出てもいい雰囲気になるというのがすごいですよね。
菊池:そのような場の空気を円楽さんが作っているんですよね。もちろんちゃんと反省していますし、認めてますし奥様からのお許しも出ているのが前提なんですが、最後になぞかけをしてもらえませんか?とムチャブリしたんです。「僕は専門外なんですよ」と言われて、「でも落語家ですから」とさらにムチャブリをしたら、すぐに「この騒動とかけまして、東京湾に出ていく船と解く(その心は)後悔(航海)の真っ最中です」と。専門外といいながら瞬時になぞかけができるということで拍手喝采が起こったんです。
その当時の写真がネットで出ているのですが、私は隣で爆笑しているんです。その写真を見るだけでも不倫会見だとは思わないという感じです。最後にはマスコミを全部送り出して、私の所にも来て握手をしてくださって、「いろいろ厳しい質問をしてくれてありがとう」とおっしゃっていました。
牧野:そういうとき、芸能人は厳しい質問をしてくれと思っているようですね。
菊池:下手に中途半端にやられても生ぬるい感じが印象付けられてしまうので、マスコミが厳しい方がご本人のためになる部分がどこかにあると思います。
円楽さんはお亡くなりになるまで、落語界を統一したいとおっしゃっていたんです。落語界には東西にわかれて5つの団体があるんです。大阪には上方落語協会、東京には4つの団体があるんですが、協会が違うから一緒に出れないとか寄席に出られないという垣根があったんです。それをとっぱらって落語界のためにやろうよと、落語まつりをプロデュースしていたんです。それが2007年くらいから始まっているんです。
博多や札幌で行われていて、その場所を選んだのも東京でやると大阪の落語家が気を遣うし、大阪でやれば東京の落語家が気を遣うということで、博多や札幌がちょうどいいんだよと場所にも気を遣っていたんです。そうやっていたら桂文枝師匠や桂文珍師匠、「笑点」メンバーなど錚々たるメンバーが集まるわけです。あれは円楽さんの人脈というか円楽プロデュースだから出来た落語会だったと思います。その想いはなくならないようにしていきますと関係者も言っていましたが、これからもやっていただきたいですよね。
牧野:まさにこれから背負っていく人だっただけに残念ですが、周囲の人が奮起して欲しいですね。今回もありがとうございました。
今回、お話をうかがったのは……菊池真由子さん
東京都生まれ、東京アナウンスアカデミー卒業。卒業後、ケーブルテレビ局のグルメ・旅番組のリポーターに。日本テレビ『レッツ!』でワイドショーリポーターとなり、その後も同局『ザ!情報ツウ』『スッキリ!!』などにレギュラー出演した。取材現場での積極的な姿勢と鋭い質問で、“現場の爆弾娘”の異名をとる。現在は1児の母として育児をしながら、取材や番組出演をこなしている。