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『ざんねんないきもの事典』監修者が選ぶ、印象に残った「ざんねんないきもの」たち!

今泉先生が選ぶ、印象に残った「ざんねんないきもの」ベスト3!

今回は、まさに厳しい世界をサバイバルしている生き物の話題です!『ざんねんないきもの事典』シリーズ第1弾からずっと監修をされている動物学者の今泉忠明先生に、「鉄崎幹人のWASABI」パーソナリティの鉄崎幹人、SBSアナウンサーの山﨑加奈がお話をうかがいました。
※8月25日にSBSラジオ「鉄崎幹人のWASABI」で放送したものを編集しています。 

山﨑:まずは『ざんねんないきもの事典』について紹介します。『ざんねんないきもの事典』とは、あえて「ざんねん」という言葉を使って、これまでの本ではあまり語られてこなかった、生き物の「意外な一面」を紹介し、2016年に第1弾を発売以来累計480万部突破の大人気シリーズです。16万人の小学生が選ぶ第3回“こどもの本総選挙”では2位に選ばれました。

今年4月に、最新刊のシリーズ第7弾となる『おもしろい!進化のふしぎ やっぱりざんねんないきもの事典』が高橋書店より出版されました。

今泉先生は、これまでに環境庁(現:環境省)のイリオモテヤマネコの生態調査に参加されたり、富士山の動物相や小型哺乳類の生態や行動を調査するなど50年以上にわたって生き物にかかわり研究されています。現在は伊東市の「ねこの博物館」館長も務めていらっしゃいます。

鉄崎:最新刊、読ませていただきましたが相変わらず面白かったです! まずは、「ざんねんないきもの」の「ざんねん」の定義を教えてください。

今泉:動物の進化の過程で特徴的な形や姿、鳴き方など……くすっと笑えるようなところを、親しみをこめて人間目線で「ざんねん」と呼んでいます。

鉄崎:確かに面白い生態がたくさんありますからね。そのシリーズ第1弾からずっと監修をされている今泉先生ですが、これまでのシリーズすべてを通して今泉先生が「面白い」「愛おしい」「ざんねん!」と、印象に残った「ざんねんないきもの」ベスト3を選んでいただきました!

第3位 カバは泳げない

今泉:カバというのは水の中に住んでいますよね。ところが、実際は泳げないんです。泳いでいるように見えるのですが、床や底に足をついてジャンプしながら歩いているんです。だから、ズル泳ぎというものですね。

山﨑:じゃあ、何で水の中にいるのですか?

今泉:皮膚が弱いんです。すぐ乾いてしまうので水から離れられないんです。

鉄崎:ただ、ほとんどの動物は泳げると思うのですが、なぜカバは泳げないのでしょうか?

今泉:足の構造が、ほとんど水かきになっていないんです。ですので、水をかいてもあの巨体が進まないということです。

鉄崎:ゾウは足が後ろに折れるじゃないですか。あのような感じであれば、もしかしたらカバも泳げると。

今泉:そうですね。ああやって水をかけばかなり進むはずです。

鉄崎:ただ、カバの足の構造はそうなっていないのですね。

山﨑:呼吸はどうしているのですか?

今泉:1回1回顔をだして呼吸をしていますが、最長5分くらいは息を止めていられます。

第2位 ノドジロオマキザルは相手の鼻の穴に指を入れて友情を確かめあう

鉄崎:何でそんなことをするのですか?

今泉:鼻の穴に指を入れられても嫌がらない。つまり、それだけ友情があるということでやっているのではないかと思います。

鉄崎:理論的ではありますよね。嫌なことをされても嫌がらない、じゃあコイツとは友だちになれると(笑)。

今泉:中南米に住んでいるサルで、鼻の穴の位置が人間と違って左右に広く離れたところについていて、広鼻猿類になります。

鉄崎:たぶん、サル同士も見ていたら指が入れやすそうな穴の位置だなと思ったんでしょうね(笑)。そして、今泉先生が選ぶ、全7シリーズを通して最も「ざんねん」だと思う「いきもの」は!?

第1位 チンパンジーは自分で自分をくすぐって笑う

今泉:人間は自分で自分をくすぐっても、くすぐったくないんです。チンパンジーはひとりで遊んでいる時に、あまりに退屈になると、暇つぶしに自分で自分をくすぐって笑うんです。特に子どものチンパンジーはそうです。人間は、触る前に脳がここを触るぞと予測しているんだそうです。だから自分でやってもくすぐったくない。ところが、チンパンジーはまだそこまで脳がつながっていないのでくすぐったいのでしょう。最初はウソだろうと思って論文を調べたら、霊長類学者などの先生方が実験に参加していて恐らく本当のことだろうと思います。

鉄崎:その機能、欲しいです(笑)。他にもたくさんの面白い生態がありますが、詳しくは本をぜひ読んでほしいと思います!

山﨑:そして、8月11日は山の日でしたが、今泉先生は富士山の生き物調査もされているんですよね?これまでの調査でおもしろいと思った生き物は富士山にいましたか?

今泉:面白いというより、可哀そうだなというのが多かったです。例えば、私は調査でクマを追いかけているのですが、足先などに傷を受けているクマがけっこういるんです。たぶん、密猟者が罠を仕掛けているのではないかと。それに挟まって、自分で抜いて逃げてきているのが結構いるなという感じになってきて、これはマズいことだなと思っています。

鉄崎:富士山をそういう視点で見たことはなかったです。今泉先生は、いつも動物を観察するときにどんなところに注目していますか?

今泉:1頭現れたら、2頭でいるのかな?オスやメスはいるのかな?子連れかな?といったことに注目しています。

鉄崎:それはなぜですか?

今泉:家族でいれば増えるのでまだまだ安心していられます。1頭で寂しそうにいたら、これはマズいかなと判断しています。

鉄崎:それは、自然保護にもつながっていくことですからね。それでは、いま気になっている生き物や、今後研究したい生き物がいたら教えてください。

今泉:特に動物が食べている時に落としたものを見つけようと思っています。つまり、食べた残骸ですね。そうすると、今度はその動物がいなくても残骸を見ただけで、ここにはムササビがいるな、リスがいるな、などがわかりますよね。ですから、もっともっといろんな種類に広げていって、歩いているだけでここにはこういう動物がいるなと理解できるようにしたいです。

鉄崎:いわゆる食痕探しですね。実は僕も自然教室の講師などをしているのですが、やはり動物や植物の名前を教えるのではなく、いかに生き物が面白い生き方をしているかが子どもたちの興味につながるのではないでしょうか?

今泉:そうです。名前はやっているうちに自然に覚えるんです。理屈を教えた方が楽しいです。

鉄崎:何でこの名前なんだろうねとか。そこから子どもたちが自然に興味を持ってくれて、自然を守る心が生まれるといいと思います。最後に、子どもたちにメッセージをお願いします!

今泉:歩いていて、おや?と思ったものは、図鑑で調べてみるといいと思います。そうすると、意外な生き物が身近にいることがわかってきます。いつも見過ごしている生き物も、その中に珍しいのがいるんです。それを心がけると、自然のことが、自然にわかってくると思います。

鉄崎:やはり、目を向けることですね。今回は、子どもたちにそのメッセージが伝わったと思います。

鉄崎&山﨑:ありがとうございました!
今回、お話をうかがったのは……今泉忠明先生
1944年東京都生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業。国立科学博物館で哺乳類の生態学、分類学を学ぶ。その後、文部省(現・文部科学省)の国際生物学事業計画(IBP)調査、日本列島総合調査、環境省のイリオモテヤマネコ生態調査などに参加。上野動物園動物解説員、(社)富士市自然動物園協会研究員、伊豆高原ねこの博物館館長、日本動物科学研究所所長などを歴任。主な著書に『動物たちのウンコロジー』(明治書院)、監修書に『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)ほか多数。子どもたちのためのフィールドワークをはじめとした体験型イベントを主催する「けもの塾」を2020年に設立。現在、日本各地にてフィールドワークや講演会を精力的に行っている。

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