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新生児希少疾患検査 静岡県内35施設で導入へ 「発症前の確知」が鍵、普及目指す

 静岡県立こども病院(静岡市葵区)が、新生児の血液から21疾患の先天異常を検査する従来の公費検査に、自己負担で7疾患を追加対象とする「拡大新生児スクリーニング」の普及を目指している。昨年同病院で先行導入後、分娩(ぶんべん)取り扱い施設へ働きかけていて、2月以降に35カ所で導入される見通しとなった。

静岡希少疾患ネットワークが作成したパンフレット
静岡希少疾患ネットワークが作成したパンフレット

 7疾患は、免疫細胞がうまく働かず感染症への抵抗力が低くなる「重症複合免疫不全症(SCID)」、筋萎縮と筋力低下が進行する「脊髄性筋萎縮症(SMA)」などで、治療をしないと乳児のうちに命を落とすことがある。SCIDは感染症の合併がない状態で、早い時期に造血細胞移植を行うことが重要だ。ほかの対象疾患も治療法があるだけに、子どもの救命率を高めるには「発症前に確知できるか」が鍵を握る。昨年は同病院など静岡市内の2カ所で計34件の検査を行い、陽性は1件だった(その後の再検査で疑いなしと判明)。
 検査事業はこども病院が主体となり、開業医や総合病院など導入予定の35施設中、16施設と契約を完了した。原則全ての新生児が受けている公費検査は実施施設が90カ所あり、同規模を目指して実施施設を募っている。陽性が分かった子どもには浜松医科大、聖隷浜松病院と連携して治療を行う。3機関は昨年、静岡希少疾患ネットワークを設立した。代表に就任した渡辺健一郎こども病院副院長(血液腫瘍科)は「異常が見つからないまま重篤化するケースをなくすため、全ての保護者にとって検査を身近にしていく必要がある」と語る。
 公費検査の検体を用いることができるため、新生児の追加の採血は不要。検査は県予防医学協会で行い、2週間ほどで結果が分かる。ただ、保護者の自己負担額は1万円ほどかかる。渡辺医師は「参加施設や家族から『分娩費用もかかるのに、追加で1万円の検査を提示しづらい』という声は寄せられている」と明かした上で「公費助成されれば検査を受ける方は確実に増え、適切な診断、治療につながるはず」と力を込める。
 拡大検査を巡っては、熊本、栃木県など公費負担をしたり、本県のように自己負担での検査体制を整えたりする自治体がある一方、検査を受けられない県も一定数みられ、地域差が生じている。

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