テーマ : 医療・健康

免疫抑制剤の不使用2%未満 肝移植後、欧米より少なく

 国内で肝移植を受けた人のうち、拒絶反応を抑える免疫抑制剤を使わずに1年以上過ごしている「免疫寛容」と呼ばれる状態の人は2%未満だったとの調査結果を、日本移植学会と日本肝移植学会がまとめたことが10日、分かった。日本移植学会によると、国内の実態調査は初。欧米では16~17%との研究結果があり、それより少なかった。

肝移植後に免疫寛容となった人の割合
肝移植後に免疫寛容となった人の割合

 調査に関わった順天堂大の内田浩一郎准教授(肝胆膵外科学)は「実際には免疫抑制剤を減らせる人が一定数いるだろう。ただ日本は欧米と比べ移植の機会が少なく、免疫抑制剤を減らしたことで(移植された)臓器がダメージを受けると次の移植が難しい。減らしにくい背景がある」と分析する。
 一般に臓器移植をすると、免疫抑制剤を生涯投与する必要がある。感染症のリスクが高まるため、食事や外出など生活に制約が生じる。内田氏らは学会と共同で2019年10~11月、肝移植の経験がある65施設を対象に免疫寛容の実態を調査。45施設が回答した。
 肝移植を受けた約8400人のうち、免疫寛容だったのは158人(1・9%)だった。全て生体肝移植を受けた人で、うち83%に当たる131人は15歳以下で移植を受けていた。免疫抑制剤をゼロにできた時期は移植後5年以内が54人、10年以上が40人。10年ほど免疫寛容が続いている人もいるという。
 医師と相談し意図的に減らした人の他、感染症などで減らさざるを得なかった人もいるとみる。
 肝臓には元々、攻撃的な免疫の反応を抑える働きがあり、肝移植では免疫寛容になることがある。免疫の型が近い親やきょうだいから臓器提供を受けることも多い生体肝移植や、子どもの頃に移植を受けたケースで、免疫寛容になりやすい可能性がある。

 免疫抑制剤 移植された臓器が、移植を受けた人の免疫に異物と認識され攻撃される「拒絶反応」を防ぐために使われる薬。複数種類を併用することが多い。服用する量は移植後の期間やその人の状態によって変わるが、基本的に生涯服用し続ける必要がある。副作用として腎機能や肝機能の障害などの他、免疫の働きを抑えるため、さまざまな感染症にかかりやすくなる。そのため日頃から手洗い、うがい、マスクの着用などが必要となる上、食事では生ものを避けるといった制約がある。発がんリスクが高まるとの指摘もある。

いい茶0

医療・健康の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞